アブナイ積荷
アブナイ積荷
海賊放送船イービル・トゥルース号あらため、キャプテン・パンダと愉快な仲間達号に改装された船の格納庫にデーンと居座る、イカツイ超巨大メカ。
「おー」
サディが思わず声をもらす。
「みためはスゲエが、この銀河ではポンコツレベルの型落ちどころじゃねえ、それこそいにしえのブツと言っていい反応炉だ。こーゆー時代遅れのポンコツが、シンセティック・ストリームのアホウタロウどもは大好きだからな」
ジャンクパーツ屋的なギャラクシー廃品業者から超絶格安で仕入れてきた、いにしえ方式反応炉をアークがみあげて言う。
「ぽ、ポンコツが売れるの?」
サディが、えー、これポンコツなの? という表情でアークをみつめる。
「そうなんよ。シンセティック・ストリームのド偉い頭がアスホールタロウどもは、ブツが古けりゃ古いほど、ブツがポンコツであればあるほど、なんか大喜びで大金だして買うんだよなぁ」
アークはそう言う。
「な、なんで、ポンコツが大好きなの?」
サディが?マークを頭上に点灯させて問う。
「さあ? 認知の歪んだアホウタロウどもの集団だから、ポンコツであればポンコツであるほど、真逆の最新鋭これさえあればなんでも解決マシーンにみえるんじゃね?」
アークはそう言って、お手上げです、というポーズをとる。
「にゃるほど」
サディはぽんっと手にひらに拳を落として納得。
「だが、こいつをあなどるなよ? こいつの中身が漏れたら、この船はおしまいレベルのヤヴァイブツだからな」
表情をキリリと引き締めて言うアークに
「えええええ!?」
サディは真っ赤なリンゴみたいに赤い瞳のお目々をまんまるにして驚く。
「まあ、もしかしたら、そういうヤヴァさが、シンセティック・ストリームのアホウタロウどもの心を、アツく硬くビンビンに刺激するのかもしれねえけどな……」
アークはそう言って、格納庫の隅に置いてあるメタル・プレートを取りに行く。
「そのプレートは?」
サディの問いに
「シンセティック・ストリームのアホウタロウどもは、こういう看板が大好きだからな」
とアークは答え、中身が漏れたら激ヤヴァイポンコツ反応炉に、バチーンとメタル・プレートを取り付ける。
ガチン! ガチン! ガチン! ガチン!
轟音をあげるリベッターが、メタル・リベットをいにしえ反応炉に叩き込んで、メタル・プレートを固定する!
こうしてガッチリバッチリ取り付けられた金属板には
「United Skinhead of All・USA」
と書かれ、最後に怪しいツボの刻印がされていた。
「あー、これはわかるわ。シンセティック・ストリーム圏内にいくと、とにかくやたらとよくみるよねー」
サディはもはや手のひらにぽんっと拳を落とすこともなく、わかるわーという顔でイカツイ超巨大メカに取り付けられたプレートをみつめた。
「アークもなかなかやるじゃないですか」
ほくほく顔のタッヤが計器をみつめる。
「はっはっはっはっ。時代遅れのイカれたポンコツマシーンをシンセティック・ストリームにつかませてゼニーが入るとなれば、俺も最高に気分がいいからな。そりゃ銀河の果ての廃品業者のガラクタ置き場にだって喜んで飛んで行くぜ」
めいいっぱい倒したイカツイシートに寝転んで、アークが笑いながらタッヤに返す。
「あとはイカれたポンコツマシーンを、シンセティック・ストリーム圏内の星に運んで売りつければいいわけですけど……。ついこの間、軍団規模のSS艦隊に追っかけられたのにダイジョブなんです?」
AXEがレーダー盤に視線を落としながら言う。
「ダイジョブじゃない? イービル・トゥルース号壱番艦及び弐番艦は完全に撃沈。乗組員は海中と宇宙で爆沈爆散全員死亡の大惨劇。不死鳥のように現れた三番艦は、タダ・サバイバー銀河行きのグラジ・ゲートに突っ込んでから一切の消息不明。そのうえ、この船はいまはキャプテン・パンダと愉快な仲間達号に看板も変わっているし。シンセティック・ストリームのやつら、この船がイービル・トゥルース号だったなんて、気づきもしないんじゃない?」
キャプテン・パンダと愉快な仲間達号に乗船して気が抜けているのか、イカツイシートの上で足をぶらぶらさせながら、超絶適当にミーマが状況を分析。
「ヤヴァイポンコツを高く売りつけるとなると、ビジネスパーソンとしての魂が燃えるなぁ」
とは今日は艦橋にきているコタヌーン。
「あの反応炉……。冗談じゃなくヤヴァイのが詰まっているんで……。くれぐれも管理だけはしっかりしてくださいね」
オクタヌーンが技術者として青ざめた顔で言う。
「ダイジョブよ。ヤヴァくなったら、格納庫からシンセティック・ストリーム圏内にむけて蹴っとばしゃあいいんだよ」
はっはっはっはっ。と笑いながらアークが言う。
「カンバンガカワッテ、モットテキトウニナリヤガッタ」
とは、イクト・ジュウゾウ。
そして、銀河的な規模で迫ってくるという財務破綻から全力で逃走するため、イカれた速度で銀河中を前向きに翔け回るハメになった、銀河一逃げ足の早い操縦士であるネガは
「くそが!」
と言った。




