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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
モッキンバード侵攻作戦

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さらばドデカイミスター宇宙戦艦〜自由気ままな無法者達〜

さらばドデカイミスター宇宙戦艦〜自由気ままな無法者達〜



 System Schutzstaffelシステム・シュッツシュタッフェル SSS主力森羅万象しんらばんしょう宇宙戦艦アベンシゾー級弐番艦、ガース・ヒーデはモッキンバード星の領宙域りょうちゅういきへと後退し撤退てったい。イービル・トゥルース号艦橋のメインモニタからはとっくの昔に消え、AXEのレーダー管制盤上からも数日前からもういない。

 イービル・トゥルース号は、まだ誰のも物でもない銀河に船首のドクロを向けて、思うがままの速度で航行し、モッキンバード星を背後へと追いやっていく。

「モッキンバード星はなかなか面白い星だった。さあて、次はどんな星に行こうか?」

 アークがめいいっぱい倒したシートから、ぶ厚い硬化テクタイト製窓にうつる、あまたの星々が作り出す宇宙という大海原をみあげて言う。

「もっちろん、生魚と貝がいっぱい食べれる星がいい!」

 サディがアークの左隣で、目をらんらんと輝かせて言う。

「そうだな……。次は船を海に浮かばせて、総員総出で釣り竿持って、未知の魚でも釣りまくるか?」

 アークがそう言って、はっはっはっはっと笑う。

「未知の星で未知の魚をぴちぴちのナマで食べたら、未知の病気にかかっちゃいますよぉ」

 タッヤが酷く現実的なことを言う。

「未知の世界は魅力的だけど、未知の病気はまったく魅力的じゃありません」

 AXEがレーダー盤をみつめてため息をつく。

「ツッタサカナニ、リョウシュウショハヤラネエゾ」

 とにかくのんびりし続ける生身の肉体を持つ乗組員達を尻目しりめに、あらゆる雑事と庶務しょむ操船そうせんをただいま行っているロボット乗組員のイクトが、まったくロボットらしくないことを、いかにもロボットらしく言う。

 synthetic streamからの逃走に成功し、その神業的かみわざな銀河一の逃走能力を発揮はっきする必要がなくなったネガは、倒したシートに寝っ転がって夢をみている。

 いったいどんな夢なのか、ガスマスクをかぶったままむにゃむにゃ眠りながら

「くそがぁぁぁ……」

 とネガは言う。

「シンセティック・ストリームの奴らが禁止した、ブラック・レーベル(通称BL)作品を、地下組織兄冥土ちかそしき・あにめいどから山程仕入れたことだし、こいつをさばきに行くのはどうかしら?」

 ミーマがイービル・トゥルース号の格納庫かくのうこにばっちり収めた、シンセティック・ストリームご禁制きんせいのヤヴァイブツ達のことをアークに思い出させる。

「そうだな。そいつはいい。シンセティック・ストリームどもが禁止するヤヴァイブツを、この銀河中に運んでバラくってのは、海賊放送船にぴったりなシノギじゃねえか」

 はっはっはっはっとアークは笑って言う。

「どうしても地味じみ〜なカードラジオに続く、新たな収入源しゅうにゅうげんができるのは大助かりですよぉ」

 タッヤが羽毛をふくらませて、ほくほく顔で言う。

「この銀河をうるおい満たす。ブラック・レーベル(通称BL)作品を禁止したことを、私は絶対に許さない」

 ミーマが緑の瞳に涙を浮かべて、歯を食いしばる。

「わかるぜ。ミーマ。この銀河をひとつにかたまらせようとする、Space Synthesis Systemとか言うデカいクソ。クソ不気味な正体不明のクソ潮流ちょうりゅう、シンセティック・ストリームのクソどもが。俺達はそのクソの濁流だくりゅうみてえな巨大なクソミソに逆らって、より生き生きとペッカペカに輝いて、誰かの自由を侵さない範囲において、この銀河を好き勝手に自由気ままに行くのが流儀りゅうぎだからな。45口径48銀河標準センチメートル砲三連装四基十二門をたずさえて、首都上空にダイブし主砲から花火をぶちかます、マジモンの戦争屋みてえな俺達は、筋金入すじかがねいりの消極的戦争主義者でもある。だからこそ、圧倒的な平和力にあぐらをかいて、積極的に平和力をドッカンドッカンぶちかまし、平和を先制するとのたまい、一方的に平定平和統一してくる積極的平和主義者とは、どうにもこうにも相容あいいれねえ」

 アークはそう言うと、めいいっぱい倒したシートから立ち上がり、アイアンブルーとガンメタルグレイに満ちた艦橋の最後部、艦長席に座るいかつい艦長服を着込んだパンダ船長にむきなおる。

「ねえ、船長?」

 そう言って同意を求めるアークに、艦長席に座るパンダ船長は微動びどうだにすることもなく……

「ぱふぉっ」

 と言った。

「ねえ、アーク。船長はなんて?」

 サディがアークを横目にみつめてたずねる。

「とにかく勝手に、自由きままに、誰かの自由を侵さない範囲において、好きにやれ。船長はそう言った」

 アークだけがわかるパンダ船長の言葉に、寝ているネガ以外の乗組員が笑ってうなづく。

「さてそろそろ、未開の銀河の先へと、海賊放送船らしくいこうじゃねえか」

 アークはヘッドセットのスイッチをいれて、機関室に通信を開始。

「機関長、コタヌーン殿。うるわしの本船のご機嫌やいかが?」

「バッチリですわぁ。シンセティック・ストリームのカスヒデェでしたっけ? そいつにケツを追っかけ回されても、この子はピンピンしてますぜ」

「そいつはなにより。麗しの本船はおいておいて、奥様であられるオクタヌーンのご機嫌やいかに?」

「それは毎度のことながら、この船のエンジンは、どうにもこうにもいろんな収支しゅうしがあわないと頭をひねりっぱなしで……」

「この船は俺にとっても謎だらけだ。だが、この宇宙が謎だらけのくせに、バッチリしっかり存在しているように、この船が事実、いまここに存在していることには変わりがない。と伝えてくれるか?」

「わかりましたわぁ。絶対に納得なっとくしないと思いますけど」

「論より証拠しょうこ。この船があって、俺たちが生きていることだけが、何者も否定することのできない邪悪なる真実だ」

「ですな」

 コタヌーンの短い返事に、アークはヘッドセットを操作し通信を切ると、艦橋前面、ぶ厚い硬化テクタイト製窓の先に広がる星の海の前に立つ。

「モッキンバードの領宙域から離れてずいぶんたつしな。モッキンバードタウンまで俺たちの電波は、聴取ちょうしゅできる強さではもう届かない。さようなら、モッキンバード星。また会う日を楽しみにしているぜ! ってやつだ。ヒデェカスのヘル・オチタだったか? 海賊放送をおっぱじめても、あいつの捏造改ねつぞうかいざんはあばかれず、クソ野郎の面目めんもくたもたれる。ということで……」

「好き勝手にいきますか!」

 ミーマが操作盤上のドクロが描かれた赤いボタンのうえに、拳をふりあげる!

「おうよ!」

 アークがヘッドセットマイクのスイッチをONにする。

「ナイン・シックス・ポイント・ナイン! 96.9銀河標準メガヘルツ。RADIO・EVIL TRUTH NOW ON AIR!!」

 ミーマが海賊放送の開始を宣言せんげんし、赤いボタンのドクロを拳を振りおろして叩く!

 アイアンブルーとガンメタルグレイの艦橋のモニターに、濃密のうみつなブルーを背にしたドクロと交差する大腿骨だいたいこつが現れ、

 RADIO・EVIL TRUTH NOW ON AIR!!

 赤い文字列がモニターにおどる。

「よう。こちらは未開の宇宙からやってきた、野蛮人が満載の海賊放送船。イービル・トゥルース号だ。どこまでも続くこの大海原おおううなばらのどこかにいる君へ。今日はついこの間あった、銀河のどこかの星で起きた話をしようと思う。その星には魚焼きという名前で、魚の形をしているくせに、全然魚が入っていないという不思議な魚料理があってだな……」

 誰が返事をくれるわけでもないのに、こいつはいったいいつまで話続けられるのだろうと思える、アークの嘘みたいな本当の話がSpace Synthesis Systemの無理と権力とご都合主義つごうしゅぎをぶっちぎった違法電波にのって、銀河の果てへと飛んでいく。

 どうにもいろんな収支があわない、嘘みたいなのに本当に実在しているエニグマエンジンをぶん回し、パンダ船長と愉快ゆかいで無法な仲間達をのせて、海賊放送船イービル・トゥルース号は、まだおとずれたことのない未知の銀河に向かって、宇宙の果てへと飛んでいく。

長い間ご愛読ありがとうございました。

めでたく第一部を完とすることができました。

最新話までリアルタイムで追いついていただき、誠に感謝いたします。

第二部開幕まで、今しばらくお待ちください。

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