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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
モッキンバード侵攻作戦

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パンダ船長の交渉能力

パンダ船長の交渉能力



 純白と鮮烈な赤で彩られた、ドブラックな壺鉤十字のガース・ヒーデ戦闘指揮所に沈黙が流れた。

「……言語、検出できません……」

 通信士、同志スガガスキー3421が、敵大将の言っていることはまったくもって意味不明でありますと報告する。

 ヘル・オトス親衛隊大将オーバーグルッペン・フューラーの脳は揺れた。揺れに揺れた。まるでガチでアークにアッパーカットをアゴに打ち込まれたかのように揺れた。さっきまでチンチンに熱かった頭が、今はとろけるように熱く、しかもグラグラ揺れていた。

 熱くとろけてグラグラしている脳に、真っ直ぐにみつめてくるパンダのつぶらな瞳が突き刺さってくる。

 船長!? コイツが船長!?

 ……広い銀河だ……。パンダの姿をした知的生命体もいるだろうよ。それはわかる。だが……

 なんだ!? コイツ!? 知的生命体以前にそもそも生きているのか!!? 視線は微動だにせず、真っ黒いプラスチックみたいな瞳に、呼吸している感じすらないぞ!!!?

 その証拠に、イカツイ艦長服の胸はぴくりとも動きやしない!!

 これが船長!? あの意味不明理解不能の所属不明の宇宙戦艦の最高責任者!? こいつの代行をあのアーホ・まあ♡快楽とか言うヤツは、真面目の正気の本気でやっているつもりなのか!?

 ナニコレ?ナニコレ?ナニコレ?ナニコレ? 何なのこれ?

 わかんないわかんないわかんないわかんない イカレテルヨ

 どうすればどうすればどうすればどうすれば どうすれば?

 マジキチだマジキチだマジキチだマジキチだ 話が通じない 

 もうダメだ。ナニカもがダメだ。こいつらは完全にイカれてる。話が通じるとかどうとか、こちらの気持ちを推しはかれとか、こちらの都合を考慮しりょとか、こちらは権力者様なんだぞとか、おまえは下級銀河民でこっちは上級銀河神民なんだぞとか、こっちは支配する側でおまえは支配される側なんだぞとか、そういう常識とか良識とか正常な判断が通じない、マジモンの正真正銘のくるくるぱーのキチガイだ。

 ……ああ……あの野郎……。きっと学校に行っていないんだろう。だから、話が通じるとかどうとか、こちらの気持ちを推しはかれとか、こちらの都合を考慮しりょとか、権力者様には絶対服従とか、おまえは下級銀河民でこっちは上級銀河神民なんだぞとか、こっちは支配する側でおまえは支配される側なんだとか、そういう常識とか良識とか正常な判断を、一切教わってきていないんだ……。

 かわいそうだな……。アーホ・まあ♡快楽よ……。

 俺はどうしてこんな奴らと関わってしまった? 俺はどうして、こんな奴らを撃ってしまった? 俺はどうして、こんなマジキチからケツの穴に突っ込まれて頭まで直通して折り返し、お金玉まで氷りそうな威嚇射撃をうけている? そして、どうして俺はこんなマジキチとお話なんかしているんだ?

 一度冷静になって考えろ。オトスよ。一回冷静になって考えろ。

 冷静になるためには? そう。深呼吸だ。

 スーハースーハー、ヒッヒッフー! スーハースーハー、ヒッヒッフー!

 スーハースーハー、ヒッヒッフー! スーハースーハー、ヒッヒッフー!

 よし、少しだけ落ち着いてきた。念の為もう一度。

 スーハースーハー、ヒッヒッフー! スーハースーハー、ヒッヒッフー!

 スーハースーハー、ヒッヒッフー! スーハースーハー、ヒッヒッフー!

 二回やってしまった。だが、だいぶ落ち着いてきた。考えろ。ヘル・オトス親衛隊大将オーバーグルッペンヒューラーよ。おまえは閣下と呼ばれるほどの高い高い地位のある偉い偉い人間だ。閣下と呼ばれる人間は優秀に違いない。ということはつまり、オトスよ、私はとってもとっても優秀な人間だということだ。落ち着いて、今一度、冷静になぜこうなったかを、その優秀な頭で考えろ。

 ……命令だからだ。

 そうだ。命令だからだ。任務で奴らを一方的にぶっ殺す。これが命令だった。

 それがなぜ? こんな状況に?

 ナニコレ?ナニコレ?ナニコレ?ナニコレ? 何なのこれ?

 わかんないわかんないわかんないわかんない イカレテルヨ

 どうすればどうすればどうすればどうすれば どうすれば?

 ままりん!ままりん!ままりん!ままりん! 助けてママ!

 いかんぞ!いかんぞ!いかんぞ!いかんぞ! これはいかん

 疑問を持っちゃダメだ!

 疑問を持っちゃダメだ!!

 疑問を持っちゃダメだ!!!

 疑問を持っちゃダメなんだッ!!!

 ……。よし落ち着いてきた。疑問を持つな。心が頭が混乱する。冷静にわかることだけを考えろ……

 ……今の検出不能の言語は、ナニカの間違いなのかもしれない。あの船長殿が、ま・っ・た・く・い・き・て・い・な・い・かのように見えるのも、私が冷静ではなかったからなのかもしれない。

 では、こんな時どうするか? 幼少期より通った、アベンシゾー記念小学校で叩き込まれたではないか?

 あのゴミカスが埋まっているという伝説の地に建てられた、嘘みたいな価格のすんばらしい学校で叩き込まれたではないか?

 あのどうしても食べきれない給食のことを思い出す。本当にこんなことがあっていいんですか? というゴミカスクソの上に建てられた格安校舎の中で、腐敗の臭いが漂いまくりのモリカケサクラダッピ定食を、夕日が沈んで国が斜陽になる放課後まで残されて、残らず胃袋の底に全部ぶち込まれたではないか? 

 こんな時どうすれば? そう、あのゴミカスクソの山の上に建つ、驚異の格安アベンシゾー記念小学校は教えてくれた。

 もう一度聞けと。

「もう一度言ってみろ……」

 オトスが言ったのはそれだけだった。

「ぱふぉっ」

 モニターに映し出されたイカツイ艦長服姿のパンダは、もう一度そう言った。

「……言語、やはり検出できません……」

 通信士、同志スガガスキー3421の報告に、ヘル・オトス親衛隊大将オーバーグルッペンヒューラー閣下の脳は、しっちゃかぱーのパンパカパーンの境地へと飛んで行く。

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