第八話 犬猿の仲の二人
レイフォトによると夜桜鑑は死んだとあった。
でも、夜桜鑑は生きている……?
喜ばしいことだ。一応は、不安から解放されたわけだ。
しかし、我輩は首をかしげる。
けれど、数日前から不可解なのだ。
夜桜鑑の屋敷の方角で、きな臭い動きがあった。しかし、ニュースにはなっていない。
鑑もいたって普通だ。
しかし、今回の感情のないレイフォトには、鑑が死んだと出た。
本当に鑑は大丈夫なのか?
もしかして、あの鑑はニセモノ……?
いや、でもあれはいつもの鑑だった。
いやいや、本当にあれは本物の鑑なのか?
不可解に思った我輩は、翌日から鑑のレイフォト――つまり、ピンクの光のポイントを探し回った。鑑の屋敷のほうにまで行って、レイフォトを二枚撮った。
他にも露世のことが気がかりだったので、我輩は露世のレイフォトを探そうとした。しかし、露世のレイフォト――つまり、白の光のポイントはどこにもなかった。
代わりに、川の土手に紫の光のポイントが二つあったので、我輩は代わりにそれを撮った。どれも、まだ真っ黒なレイフォトだ。四枚の真っ黒なレイフォトをポケットにしまって、我輩はいつも通りに登校した。
「おはよー」
「あー、おはよー、月野原」
気を付けろと言っていた露世は、まだ眠そうだが至って普通だ。
あの警告はいったい何だったのだろうか。
まあ、いいか。我輩はいつも通り席に着いた。
ドアが開いて、誰かが登校してきた。
我輩の席にまっすぐ歩いてくる。
「おはよう、写影子」
その声にやっと気づいて、我輩は顔を上げた。
鮮烈に我輩の目に鑑の笑顔が焼き付いた。
「お、おはよう……!」
夜桜鑑だった。やはり、生きていた。
これでも、我輩は眠れないぐらいに心配していたのだ。
鑑の平穏な顔を目の当たりにして、やっと我輩は安心できた。
鑑の無事を喜ぶ我輩を、隣の席で見ているものがいた。
「なあ」
「えっ?」
振り返ると、隣の席の露世は半眼でじと~っとこちらへ視線を送っていた。
「ろ、露世。な、なんなのだ?」
「朝から何見つめあってんだ? なんかあっただろ、お前ら!」
「えっ!」
もしかして、露世が嫉妬してくれているのだろうか……!
我輩が喜んでいると、鑑が余計なことを言った。
「……最近、写影子が僕のことをもっと知りたいっていうから困っちゃって」
「……!?」
な、なに言ってくれちゃってるのだ!?
「はぁ?」
露世が半眼でこちらを睨んでいる。
「そんなこと言ってないのだ!」
「なんだか知らないけど、僕のことを滅茶苦茶心配してくれてね~?」
「……!?」
鑑が煽る煽る。
我輩は、青筋立てている露世に気付いて、冷汗をかいていた。
「ところで、写影子。今日は、フォトリベ部ってあるの? 最近、二階堂は登校してないみたいだけど?」
「今日はやるのだ! 連辞は来てないけどレイフォトがたくさん撮れたから!」
「そう、安心したよ。じゃあ、後でね」
振り返ってびっくりした。
露世が仁王のようなオーラを出していた。
「月野原……? 夜桜とできてるのか……?」
「ッッッ!? 違うのだ!」
我輩は、それから鑑のことを説明した。
誤解がとけたのは、それから数分後のことだった。
「ふーん、夜桜が狙われていると出たり、挙句の果てには夜桜が死んだ?」
「う、うん。しかも、感情のないレイフォトがそう言っていたのだ」
「ということは、アイツは偽物ってことなのかァ? ふ~ん?」
ろ、露世が楽しそうなのだ……。
露世と鑑は普段から仲が悪いからなぁ。
我輩は、犬猿の仲の二人を遠巻きに傍観するのだった。




