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フォトリベレーション~一寸のシャドウにも五分の魂~  作者: 幻想桃瑠
◆+◆第三章◆+◆因縁のライバル出現!? フォトリベのシャドウで悩むので章◆+◆
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第十二話 正体

 ファミレスの中に入っていくと、炎が燃え立っていた。

 その奥で炎の中で右往左往している父と母の姿があった。


「お父さん! お母さん!」

「写影子!」

「写影子、来るな!」


 我輩が駆け寄ろうとすると、炎が燃え広がっていく。

 燃え盛る炎が勢いを増し、あっという間に我輩も火に包まれた。


「えっ!?」


 炎は熱かった。けれども、やけどするというほどではない。


「これは、本物の炎じゃない?」


 けれど、父と母はこの炎で苦しんでいる。

 これは、どういうことなのだろう?


「そうだな、これは炎のシャドウだ」

「えっ! あ、彩島君!?」


 クラスメイトの彩島騎得あやしまきえるだ。


「彩島君もファミレスに来ていたのか」

「ああ。俺が今から渾身の力を込めて炎を消去する!」

「えっ!?」


 我輩は驚いた。

 炎を消去するということは、水で消すのだろうか。いや、この炎はシャドウだから――。

 我輩はとっさに耳を押えた。


消去(イレイス)!」


 彩島騎得の唇がそう動いた。

 我輩はそっと耳から手を放した。

 炎は手品のように消えて、ファミレスの真新しい外装と料理の良い匂いを元通りにした。

 我輩は両手の手のひらを見下ろして、スカートを見て、靴のつま先を確かめた。


「よ、良かった……!」


 後ろを振り返ると、彩島騎得が店主に感謝されていた。

 ほっと安堵して、両親を振り返る。


「えっ!?」


 しかし、父と母は半透明になっていた。

 まさか、消えかかっているのか。

 我輩は動揺の限りを尽くして、駆け寄った。


「写影子、今まで楽しかったわ」


 両親の姿は蜃気楼のように揺らめいている。


「何言って……」

「写影子、シャドウはシャドウらしく生きなさい」

「ッ!」


 我輩のトラウマに父が言い及ぼした。

 我輩の目の前で、父と母が消えたことが一度あった。

 父と母がシャドウなら、我輩もシャドウだと思っていた。

 だから、我輩は消去(イレイス)が怖い。


「じゃあね、写影子」

「元気で暮らしなさい、写影子」


 両親は空気に溶け込んで消えてしまった。

 両親の声が膨張したように耳に残る。

 我輩は、呆然と立ち尽くしていた。

 手に何かを握っていることを思い出して、我輩はそっとそれを目の前に持ってきた。

 詩口写実にもらったレイフォトだった。

 真っ黒だったレイフォトは、ミディアムボブの我輩が浮かび上がっていた。

 我輩は震える手で、それをフォトリベした。

 それは、人形のような上半身だけの我輩の姿を作り出した。

 感情のないレイフォトのシャドウ。

 それが、浮かんで我輩を見下ろしている。


『このレイフォトの人物はシャドウである』


 我輩は、その事実に衝撃を受けて、その場に倒れ込んでしまった。


「月野原ァ!」

「写影子!」


 露世と鑑が駆けて来る足音が遠のいて行った。

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