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八年前④

短いです

 強力な魔力がドアの向こうから溢れてくる。

 場内の異常な程の静けさがその強さを一層際立たせる。

 隠しきれていないにおいが鼻孔をつく。

 ヴァイアスは意を決してドアを開け放った。

 黒い光、赤い床、倒れる人々。

 黒い光はある一点に集まっていた。

 背中を向ける、黒く輝く魔装らしき何か。

 だがヴァイアスにはその何かから放たれる魔力の波動がその人物の正体を教えてくれた。

「ミリア・・・。」

 その声で、ミリアはこちらに振り向く。

 赤く濡れた鎧と大剣、メガネが外れ、兜の隙間から覗く光のない赤い目。

 振り向きざまに解けた銀色の長髪が揺れる。

 どこか美しい、というよりも可愛いととれる彼女の顔たちも、その不気味さの前では毛ほども感じられない。

「みんな・・・消す・・・。」

 ミリアがそのこと一言を放ち、右腕を伸ばす。

 その瞬間、ヴァイアスの目の前がまるでガラスのように割れる。

 目の前が割れる直前、危機感を感じ取ったヴァイアスは直ぐ様後ろに飛び退く。

 直後、ヴァイアスが先ほどまで立っていた地面を、黒く燃える腕が焦がした。

 だがそれは焦がすだけでは終わらなかった。

 腕から放たれる魔力と熱量にヴァイアスは焦った。

 そして、そこから更に腕がこちらに迫ってきたのだ。

 幸か不幸か、ヴァイアスが飛び退いた先には壁がある。

 一見追い詰められてようにも見えるが、ヴァイアスは壁に着地、右腕を壁につきたて、指の力で無理やり飛んだ。

 腕はそのまま壁に激突し、壁に大きな穴を開ける。

「おっかねえなあ。お前ってこんなに強かったかあ?」

 驚きと称賛が篭ったようにも聞こえる言葉。

 だがヴァイアスが冷や汗を掻いているのに誰かが気づいていれば、それは焦りだと気付くはずだった。

「それに、おめえがこんな事するやつだとはもっと思えねえな。」

 ヴァイアスは吐き気を覚えると同時に、怒りを覚えた。

 ヴァイアスにとっては、自己主張をしないおとなしい妹みたいな存在だと自負していた。

 現在の状況では年齢や実務経験をふまえ、幹部クラスに据えることはできなくても、ミリアの性格を少しでも直し、いずれは幹部の一人として据えるつもりだった。

 何度もミリアに話しかけたり、叱ったりするのはそのためだ。

「グレちゃったかなあ。」

 ヴァイアスは悲惨な状況にも関わらず、苦笑する。

 身がもたないのだ。人の死体を見たことがないわけではない。

 だがこれだけ並べばさすがに苦しくなる。

 案の定、眼は笑っていないのだから。

 ミリアはただ黙ってこちらを見ている。

 一体何を考えているのか、その顔からは伺えない。

 ただ、悲しい目をしていると、そう思った。

 

 

 

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