八年前③
城門に鳴り響く金属音。
弾ける火花。
戦い始めてから五分。
どちらも披露の色は見えない。
「さすがは元使徒。強さは本物だな。」
「そういうお前も、伊達に使徒を名乗っていないな。」
互いの顔に笑みが浮かぶ。
だが不思議な事に、その笑みを眺めるものは一人もいない。
この白銀の世界には、ただただ、二人だけの音が響きわたっていた。
「人払いか、それともこの結界が界離結界だったのか、どちらでもいいが、人がいないなら都合がいいなあ。」
ヴァイアスの笑みが黒いものに変わる。
真面目な時以外は基本的に馴れ馴れしく、いい加減な人間な彼だが、この時の瞳には、見たことがないほどの鋭さがあった。
「魔装の理論は知ってだろう?」
ヴァイアスは唐突にそう言った。
その言葉を聞き、ダダイは不思議そうな顔をする。
「魔装は魔法機が発動する空間魔法と召喚魔法の複合で成り立っているって言われてる。
これに関する問題がほぼ毎年、騎士団の入団試験の問題に出るんだよ。」
「何が言いたい。」
突然の世間話に、ダダイの顔に不機嫌な色が浮かぶ。
ヴァイアスは笑みを浮かべたままだ。
「つまりな、今の魔装の理論は間違っている。そう言いたいんだよ。」
ダダイはその言葉で目を丸くする。
驚きよりも呆れと言ったほうが強そうだが。
「ふん。馬鹿げたことを。我々が知らないことをお前が知っているはずはない。
組織のことはお前もよく知っているだろう。」
「組織、か。
確かにお前たちの力には称賛するさ。
明らかに現代の力を超えたテクノロジー。禁書とされる古文書の原本の所持。
並外れた戦闘力を持った構成員。
どれも一級品なのは間違いねえさ。」
呆れた表情で答えるヴァイアス。
だが、それでもどこか楽しそうな雰囲気が伺えた。
「魔法機だけは別さ。」
「何故だ。」
「気になるようだが、敵に塩を送るつもりはねえ。」
「そうか。だがそれが決定的な差になることはあるまい。」
ダダイは武器を構え直す。
「俺が何故、使徒の中で最強だったか。
それは俺がそのことを理解していたからだ。」
ヴァイアスも武器を構え直す。
その直後、ヴァイアスの魔装がほんのりと光を放ち始める。
そして、ヴァイアスのハルバードと鎧が少しずつ変化し始めた。
少し大きくなったようにも見える、金属光沢がより増えたハルバード。
鎧が落ち、頭以外の全身にピッタリと張り付いたボディースーツ。
機械的な雰囲気を醸し出すその姿は、どこか近代的なイメージを彷彿とさせる。
「何だその姿は?」
ダダイはヴァイアスの変化を見て疑問の色を浮かべるのと同時に、その防具の薄さを見てなめているのかと言わんばかりの顔をする。
それに対し、ヴァイアスの顔は至って真剣だ。むしろ先程よりももっと視線が鋭くなった気さえするほどだ。
「さあな。言ったろ?
教える気はない。
それに、どうやらここでのんびりもしていられなさそうだからな。
そろそろマジで行くぜ。」
「結界があるのに何故分かる?」
ダダイはもう一度問いを投げかける。
だが、その答えが帰ってくることはなかった。
ヴァイアスは地を蹴り、ダダイに切迫する。
それに眼を丸くしたダダイは迫ってきたハルバードをはろうじて大槌で防ぐ。
ヴァイアスの体はダダイの体に比べれば明らかに小柄と言える。
普通ならば、力勝負では間違いなくダダイ勝つだろう。
だがヴァイアスの振ったハルバードは、軽々とその巨体を吹き飛ばした。
地面に二本の白い線が引かれ、ダダイは見えない壁にたたきつけられる。
その白い線を掻き消すように、もう一度ヴァイアスが突進。
ダダイはガードするが、下から振り上げられたハルバードが大槌を弾き飛ばす。
ヴァイアスはそのまま回転し、ダダイを左に蹴り飛ばした。
地面に一本の線が引かれ、ダダイは仰向けに倒れる。
直後、ダダイの口から鮮血が溢れた。
「・・・どうやら気絶しちまったみたいだな。」
ダダイの魔装が解け、元の姿に戻る。
先程叩きつけた壁を見ると、透明な壁に白いヒビが入っていた。
「どうやら、ここが境界らしいな。」
そう言って、ヴァイアスがハルバードで壁に一突きすると、壁に穴が空き、だが先程まで写っていた景色が再び広がっていた。
「ミリア?」
その結界の穴から流れこんできた異様な空気に、ヴァイアスは眼をしかめる。
ミリアの強大な魔力が伝わってきていた。
その大きさに不穏の色感じたヴァイアスは直ぐ様会場の方へと走っていった。
ダダイ完全無視(笑




