心配
主人公は居眠り中zzz...
表通り、ミアと離れたセシリア達三人は先ほどの路地でミアが帰ってくるのを待っていた。
「むう、遅いですな。」
離れてから十五分。子供一人捕まえるには時間がかかり過ぎでである。
その時、ミアが消えていった方向から、ドゴォーンという音が聞こえた。
「何だ?」
通りを歩いていた人々が一斉に振り向く。
セシリア達は通りの方へ出て音がした方向を見る。
その方向では、もくもくと煙が上がっていた。
「大尉に何かあったのでしょうか。」
「なら行ってみるべきじゃ。
行くぞ、アーデルベルト。」
「はっ。」
アーデルベルトはバルトルトの言葉に頷くと、一緒に歩き出す。
「道がわからないままでは迷ってしまいますよ。」
そしてセシリアも、その後に続いた。
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アリアがその場所にたどり着くと、地面は抉れ、壁はほとんどが黒で塗りつぶされていた。
「うっ、なんだこの匂い・・・。」
強烈な匂いが充満するなか、アリアは更に近づいていく。
煙が当たりを覆っているため、前が全く見えない。
「うっ・・・。」
すると、煙の中からうめき声のようなものが聞こえた。
もう少し先に進むと、人影のようなものが見える。
「誰?」
アリアは問いけかる。しかし返事はない。
更に近づくと、その姿があらわになる。
「姉ちゃん!」
そこには、血だまりに伏しているミアの姿があった。
服(軍服〉のあちこちが破れて肌が露出している。その肌のあちこちに傷がある。
火傷や爆発で発生したであろう壁の破片による擦り傷、破片そのものが刺さっているものまである。
「大丈夫か!?」
アリアその姿のミアを見て大声で問いかけた。
しかし、気を失っているらしく、やはり返事はなかった。
「おい、さっきからうるせえぞ!
静かにしやがっ・・・、なんじゃこりゃ?」
その時、路地の向こう側から男の声が聞こえる。
煙が晴れてきているが、相手の顔はよく見えない。
「もしかして、ヴァイアスか?」
アリアは聞いたことのある声に言葉を投げかける。
「その声は、アリアか?」
赤い髪、そして碧眼の男、ヴァイアスは返事をすると、こちらの方へと近づいてくる。
「何だよ、こりゃあ。
まるで戦争じゃねぇ、っておい、何だその嬢ちゃんは。
傷だらけじゃねぇか!」
ヴァイアスもミアの姿を見るとすぐに駆けつけてくる。
「おい、嬢ちゃん、返事しろ。」
「うっ・・・。」
ヴァイアスは言葉を投げかけながら、ミアのほっぺをぴしぴし叩く。
だが唸るだけでやはり返事はない。
「どうやら息はしてる見てぇだな。」
「う、うん。」
アリアはこの状況に少し動揺しているため、何もできず戸惑っている。
「おい、アリア。他の奴らが来る前にこの娘運ぶぞ。」
「え!?」
「分かったら行くぞ。」
「う、うん。」
ヴァイアスはミアを運ぶためにアリアを強引にうなずかせる。
と言っても、ヴァイアス一人が方に担いだのだが。
「こっちだ。」
アリアはヴァイアスの促す方向へとついて行った。
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「これは。」
「一体何があったのじゃ。」
三人が現場に辿り着いた頃、そこには既に人だかりができていた。
アルテア軍人達がその現場を取り囲み、野次馬を入れまいとしている。
「ほら、いったいった。
ここは立入禁止だぞ!」
兵士の一人が野次馬に大声あげている。
それに呼応するように、周りの野次馬がおとなしく退散していく。
その中、三人は逆に現場に近づく。
「セシリア・オールストン少尉です。こちらは連れです。
一体何があったんですか?」
セシリアは軍人手帳を見せながら兵士に尋ねる。
「これは少尉殿。
お努めご苦労様であります。
ですが、我々にもなにが起きたのか全く分からず。
我々が来た時には既に跡形もなかったのです。」
「なにも、ですか?」
「はい。」
セシリアはその言葉を疑問に思う。
「大尉は一体どこへ言ってしまわれたのでしょうな。」
まさに今セシリアが疑問に思っていたことをアーデルベルトが口に出す。
「関係ないかもしれんぞ。」
「その可能性もありますね。」
一方のバルトルトの言葉にセシリアは肯定する。
「とりあえず、一度戻りましょう。もしかしたら戻ってきているかもしれません。」
「そうですな。」
「なんじゃ?これは?」
セシリアとアーデルベルトが戻る算段をしている中、バルトルトが金色に輝く何かの欠片を拾う。
「どうやら何かの欠片のようですな。」
「今はそんなことはどうでもいいでしょう。」
セシリアは二人に戻るよう促す。
それに答え、三人とも元きた道を引き返していった。
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日もくれる頃。
通りの外れにある一軒家の一室。
寝台にはミアが乗せられている。
「嬢ちゃんには悪いが、全部脱がすぞ?
手伝え。」
「ええ!?
こりゃ絶対怒るよ・・・。」
「何か言ったか?」
「ううん、なにも。」
アリアが答えると、ヴァイアスは脱がせにかかる。
アリアもそれを手伝う。
「こりゃひでぇ。」
脇腹の刺傷は貫通、壁の破片があちこちに点在し、重度ではないものの、火傷もある。
「とりあえず応急処置だな。
アリア、エヴァンスを呼んで来い。」
至急だ。
「うん、分かった。」
アリアはそれを聞くと駆け足で部屋を出て行った。
アリアがエヴァンスを連れて返ってきた頃には既に日が落ち、当たりは暗くなっていた。
「あの人です。」
「なかなかひどいですねえ。」
シワのある白衣にぐるぐるメガネ、そして極めつけはボサボサの頭。衛生的にはとても良くなさそうだが、医者だ。
「どうだ。」
「縫わないとダメですね。時間はかかりますが、なんとかなりそうです。」
「ああ、まかせた。」
ヴァイアスは自分で用意した椅子に座る。
「アリアさんはここにいないほうがいいですよ。顔色がわるいですし。
一応女の子ですからね。」
「一応は余計だろ。」
アリアは強気な口調で答えるが、あまり元気はない。
傷口を見て気持ち悪く感じているのだ。
アリアはエヴァンスの言うとおり、部屋を出て行った。
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「やはりここにも戻っていませんか。」
セシリア達は通りの所まで戻ったものの、ミアには会えなかったため、宿まで戻った。
しかし、宿にも戻っていなかったのでかなり心配していた。
「明日になれば戻ってくるでしょう。
心配しても仕様がありますまい。」
アーデルベルトはまるで心配している様子を見せず、冷静に答える。
「じゃが、やはり心配じゃ。」
「では私が探してまいりましょう。少尉殿、護衛はお任せしましたぞ。」
アーデルベルトは先程の言葉とは裏腹に、今度はミアの捜索へと向かう。
それを残った二人は当、然引き止めるような事はせず見送る。
「私達は部屋に戻りましょう。」
「うむ。じゃが、やはり心配じゃのう。」
バルトルトは先程から大尉のことをしきりに気にする。
「アーデルベルトさんが見つけてくれることを願いましょう。
大丈夫です。大尉はお強いですから。」
セシリアはまるで、ミアの戦いを見たような口ぶりで答える。
だがセシリアが知っているのは入軍試験の成績だけである。
「行きましょう。殿下。」
「うむ。」
セシリアがもう一度部屋へと促すと、二人は同時に歩き出した。




