049_妹と詐欺電話
「ねーお兄ちゃん、最近詐欺電話がかかってきたんですが……」
「なんだよ急に?」
「いえ、男の人の慌てた声がしたので『お兄ちゃん?』と聞いたらそうだって答えたんです。そしたら私にお金を要求してきたんですよ」
「分かりやすいありがちな詐欺だな」
「そういう問題じゃ無いんです! ヤツは私を怒らせたんです! そりゃあ兄ちゃん金に困っているなら貸すのはやぶさではありませんが、アレはあからさまな解釈違いですよ! 私のお兄ちゃんに対する観察眼を舐めているとしか思えません」
詐欺師もそんな理由で断られるとは思ってないんだろうな。つーかそもそも阿地の俺に対する認識も大分ゆがんでいるような気もする。それでいいのか本当にと問いかけたいところだ。
「で、どうしたんだ?」
「平たく言えばできるか義理情報を掘ってから通報しましたね。情報提供は全部しておきました。お兄ちゃんを騙って私を騙そうなんで万死に値する罪状です」
断言する妹に心配を覚える。正気なんだろうかなと思う。いや、やってることは確かに正しいと思うよ。でもさ、動機に余りにも私怨が混じってないかなと思うんだよな、もし相手が俺以外を名乗っていたら無視して終わりだったろうに……
「やったことは正しいが、あまり私情を挟まない方が良いかと思うぞ」
「いいじゃないですか、愚かな詐欺師は私の触れてはいけない一線を踏み越えて来やがったんですよ。こんな事が許されるはずが無いじゃあないですか」
まっすぐな目でそう言っているが、それは正しいことなのだろうか? いや、自分の矜持みたいなものがあるんだろうけどさ。
「細かいことを気にしますね。私がそれほどお兄ちゃんのことを愛しているってことですよ。それの一体何が悪いんでしょうかねえ?」
「最低限、俺とお前が兄妹だって事は忘れないようにな?」
そう言って胸を張る妹が心配になる。兄妹の関係は恋人と違って一生続くものなのだからもう少し距離感というものを考えてほしい。
「ま、お兄ちゃんの名を騙る邪悪を粛清して少しスッキリしたので朝食にしましょうか」
「粛清とかいう物騒なワードはやめような。まあなんだ、朝飯は作るから座って落ち着け」
俺はミルクをマグカップに注いでレンジで温め阿地の前に置いた。
「それ飲んで落ち着け。血の気が多いと損をするぞ」
我が妹はため息をついてからミルクをゆっくり飲んでいった。これで落ち着いてほしいものだと思う。
その日の朝食は阿地のごきげんを取るのに苦労した。詐欺師の方も騙そうとする相手は選んでほしいものだとずれているのは分かっているのだがどうしてもそんな考えが浮かんだ。




