160_妹は膝枕されたい
「お兄ちゃん、お休みですし部屋でまったりイチャイチャでもしませんか?」
「言葉の始めにお兄ちゃんと言っておいてよく後半が言えたな。普通は兄妹でイチャイチャしないんだよ」
今日は少々冷たいことを言ったかと思う。その日は少々機嫌が悪かった、妹にキツいこと言うのもなんだかなとは思うんだが、つい言ってしまった。
「いいですか? お兄ちゃんは理解していないようですが先駆者は大抵理解されないものなんですよ」
幸い全然ダメージになっていないようだ。というか先駆者と呼んでいいのか? 兄妹での恋愛の先駆者ってなんだよ、自由すぎやしませんかねえ……
「そうか、俺はそんなリスクをとりたくはないんだよ。先駆者が絶対に理解されるわけじゃないのも分かるだろう?」
「理解されないのは仕方ないことですよ。今では億単位の値が付く画家だって死後評価されたでしょう? つまり私は遠い未来で正しい人間として評価されると確信を持っているんです!」
死後評価される画家はいるけどさあ……お前言ってる内容分かってんのかよ? そんな評価される内容と評価されないであろう内容くらい知らんのかね。
しかし妹は一枚のカードを取り出した。
「さて、お兄ちゃん、膝枕をしてくれればこれをあげますよ? ソレでも断りますかね?」
妹が出してきたのは四桁後半の数字が書かれた一枚のカード。通販で使えてしまう魅力的なモノだ。
「さて、お兄ちゃん、今どんな気持ちですか? あー、私のスマホでバーコードを読んじゃいましょうかねえ、あーカメラが起動しそうですねー……」
俺はそっとカードを手に取った。どっから金が出たのか知らないが、四桁後半は大金なんだよ。
「それじゃ、お兄ちゃんはそこのソファに座ってくださいね、膝はちゃんと頭を乗せられるようにしておいてくださいよ」
その通りに座ると、阿地はソファの隣に座って俺の方に倒れ込み、膝の上に頭を乗せていた。まあそのくらいはいいかな。
俺はそっと受け取ったカードをスマホで読み込んでクレジットが増えたのを見て複雑な気分になった。金のためにそんなことをしていいのかとは少々疑問だった。
それからしばらく寝てしまった阿地を膝の上に載せたまま動けなかったのだが、よく寝るなと思いながらふと気が付いたことがあった。
吐息が規則的だった。安定しているなんて言葉じゃない。完全に規則的なリズムで息を立てていた。
俺はそっと『起きてるか?』と小さな声で言うと『バレましたか?』と返ってきた。俺はしばし考えた末に『まあいいよ』と答えてしばし妹を膝枕していた。
結局足がしびれて耐えられなくなるまでそのままだったが、俺にとっては四桁後半の値段をもらった価値はあったんじゃないかと思う。いろいろ問題なのかは知ったこっちゃないが、俺が納得しているのだからそれでいいだろう。




