第百四話 今
家に着くと、ばぁちゃんが出迎えてくれた。
「彩葉ちゃん、こんにちは。大祐さんも。」
「ばぁちゃん、僕は?」
「何言ってるの。悠太はいつもいるでしょ。」
聞いた僕が馬鹿だったのか。
「これから、よろしくお願いします。」
「はい。よろしく。大祐さんも明日までだけどゆっくりしていって。」
「どうも。」
夜は、ばぁちゃんが作った、ご飯をみんなで食べる。
「美味そうだな。」
「あんた、つまみ食いしないでよ。」
「ばぁちゃん、僕、もう高二になるぞ。」
そんな会話を聞いてる、彩葉はニコニコしてる。こうやってみんなで家でご飯を食べるのは、新鮮な感じだ。ばぁちゃんの家に来てから、ほとんど無かった。
「はい。お待たせ。」
「「いただきます!」」
「う〜ん!美味しい!」
彩葉が美味しそうに食べる。父さんは、いつも通り落ち着いた様子で、しっかり噛みながら食べていた。
「ゆうにいは、料理するの?」
「たまにかな。」
自信満々に言うとばぁちゃんが見てきた。
「あの程度で、出来る感じ出さないでくれる?」
「ばぁちゃん……厳しくないか?」
「最初は何も出来なかったじゃない。」
「最初は誰でもそうだろ。」
「手伝ってたらある程度は、分かるわよね。彩葉ちゃん。」
彩葉は、馬鹿にするような笑いを浮かべて言った。
「そ、そうですね。」
「二人して僕の味方は居ないのかよ。」
今日の、食卓はいつもの何倍も楽しくて、温かかった。
その夜。父さんと二人で話した。
「ありがとうな悠太。」
その言葉には多分たくさんの意味があると思う。僕は、噛み締めて頷いた。
「僕はここに来て良かったよ。父さん。」
「そうか。それは良かった。」
父さんは、安心した表情だった。
「ばぁちゃんから話を聞いてたが、最初はそうでも無かったんだろ。」
「知ってたんだ。」
「まあな。話したくないなら良いぞ。今、楽しいならそれが一番だからな。だけど一つだけ謝らせてくれ。あの時……」
「大丈夫。」
父さんの言葉を遮って僕はそう言った。父さんが謝る必要は無いと思ったからだ。多分、と言うか絶対、あの日、僕をここに行くことを勧めたことを謝ろうとしたのだろう。
今は違う。ここに来て良かったと心の底から思える。たくさんではないけど僕の周りは賑やかだ。
「今、楽しいから良いよ!」
「悠太がそう言うならそうだな。」
「父さん。海外でも頑張って。」
「おう。」
「僕と彩葉は、大丈夫だから。ばぁちゃんとも上手くやっていくから。安心して行ってきて。」
「俺も上手くやるよ。」
父さんとグータッチを交わした。
別れの日。空港で見送りをした。
「お父さん、連絡こまめにね。」
彩葉……お母さんかよ……
「分かってるよ。三人で仲良くな。」
「うん。」
「はい。」
「休みあったら海外来ても良いぞ。」
「ほんと!?やった〜!」
「父さん、そろそろだろ。」
「本当だ。行ってくるよ。」
「お父さん、バイバイ!」
「父さん。またね。」
ばぁちゃんは、手を振って見つめるだけだった。
僕らは、父さんの背中が見えなくなってもしばらく遠くを見つめていた。




