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どうぞのはなし〜カッパ男からその先へ〜  作者: のっぽ童子


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1/4

カッパ男

※この物語には恐怖表現が含まれます!

苦手な方は------次の話へ『スキップ』してください!

キーンコーンカーンコーン。

チャイムが網目から漏れて流れてくる。

クラスの皆は学校が終わりだと、音を楽しんでいるようだったが、俺はそれをただ、清聴していた。


「なぁ。今日さ。ここで肝試ししない?」


唐突に顔を覗かせたのは、冬だと言うのに、半袖の制服を着た栗原。

栗色の髪を指先でくるくると巻いている。


「この学校にそんなの無いだろ」


俺は呆れた手つきで追い払おうとしたが、逆に栗原が食いつくように机を叩いた。


「それがな、あるんだよ。知ってるか? カッパ男の噂」


俺が知らないのを知ってて、栗原は訊いてくる。

意地悪め。


「きゅうりでも渡す気か? 馬鹿馬鹿しい」


俺はバッグに教科書を詰めて、背負った。

今日は猛烈に寝たいんだ。


「本当にやらねぇの?」

「もちろんだ。中口、こいつ置いて帰ろうぜ」

「いや、俺はやるけど」

「なんでだよ」


猫背で背の高い中口がおとぼけ顔で俺を見る。


「ものは試しに......」

「終わったら、新作のバーガー、奢るからさ」


2人は俺の肩を掴む。


「はぁぁぁぁ......いいよ」


俺は結論を出した。


「まじか!」


自分で言い出したことなのに、栗原はとんでもなく喜んだ。


「ただ、ポテトも付けてくれ」

「そっちかよ」

「逆になにがあるんだ」


肝試し......ジャンクフードのために俺達は普段誰も来ない音楽室の倉庫の中に隠れた。

遠くの寂しい車の音が窓ガラスを反射する。


「よし、先生はいなくなった」


栗原は埃で鼻がむずむずしている。


「で、そのカッパ男はどこにいるんだ」


中口から当然の疑問が飛びかかる。


「A棟3階にある......ロッカーだ」

「ふざけてんのか」


俺がぴしゃりと栗原の頭を叩く。


「なにすんだよ」

「居るわけ無いよ。居たら、ミイラでしょ」


中口も同じ意見のようだ。


「まぁ、一旦行ってみよーぜ......」


栗原はゆっくりと向かう。

2人に責められて、億劫なのだ。

道化のように鼻を赤くして、渡り廊下を通る。

階段を登り、あったのは掃除用具入れのロッカー。


「本当に居るんかなぁ」

「居るわけ無いだろ」

「開けてみよーぜ」



栗原が公園で遊ぶ子供みたく、ロッカーの窪みに手を入れる。

キィィィィィ......と、錆びついた響音がする。


少し、奥の影が揺らいだ気がした。


一番楽しいタイミングだろうが、俺は不意に瞬きをしてしまった。

ぐしゃり。

妙な音で目蓋を上げた時......栗原が地面に仰向きで倒れ込んでいた。

額は凹み、赤い液体があふれている。


「えっ......くり......」


その言葉は名を呼ぶには儚く、静かにこぼれ落ちた。


冗談だよな?


小さな願望を握って、上へ視線をやる。

快晴の空のような合羽(かっぱ)が一つ。

奥は暗かったが、限界までかっぴらき、充血している眼がこちらを覗いていたのだけは分かった。


怖い。

怖い、でも、慌てたら、ダメだ。

怖い、それでも、中口と一緒に逃げなきゃ。


一周回って冷静になった。


「中口、逃げるぞ!」


俺は急いで、左へ駆けようとする。


くっ、中口の奴め。


「えっ?」


反応の遅い中口を見て、俺は袖をがしっと掴んで、廊下まで体を引っ張る。


「すまん」

「良いから走れ!」


俺達は死に物狂いで走る。

後ろからぴちゃりぴちゃりと水を含んだ足音が反響する。

渡り廊下まで着いて、膝に掌を乗せた。


「っぁはぁっ......どっかに隠れて、警察呼ぼう!」

「中っ口っぃ。それなら、体育館の倉庫だ! あそこなら、鍵を掛けれる!」


先生に、家族に、バレたって良い。

誰でも良いから、助けに来て欲しい。


ほんの僅かな小憩で俺達はまた、駆け出す。

視線は自然に下を向いている。


今すぐにでも、体を休めたいんだ。

だけど、それをする暇はない。


ここはもう半分で渡り切れる。

が、


「っ嘘だろ......」


中口が足を止め、意図せず、顔を上げる......

そこには、見覚えのある合羽かっぱがあった。

突如、血走った眼が駆け寄ってくる。

足が竦む。


「お前だけでも!」


声が俺の胸を叩く。


「逃げろ!」


すまん、中口。

俺は中口を背に後ろを向く。


一、二、三。

と、何かが破裂するような音がした後、辺りが自分の息で一杯になる。

階段を降りて、体育館に入る。

闇が広がるばかり。


電気を付けたら、怪物が分かってしまう。

だから、俺は電気を付けずに月の光を頼りに探し出す。

やっとのことで見つけ、鍵を閉める。


俺は隠しにあるスマホのロックを外して、電話に110と入れた。

すると、ぴちゃりぴちゃり。

あいつの足音が聞こえる。

どくん......どくん......


幸い、電話の音は小さい。

大丈夫だ、鍵も掛けてる。

どくんっ。どくんっ。


心臓な鼓動がみるみる大きくなる。

どくん! どくん!


ぴちゃり......ぴちゃ......ぴち......


通り過ぎた......?

この数秒の間に、通話は繋がらないが、俺は安堵で胸を撫で下ろす。

きぃ......ききききききき......きぃぃぃぃぃぃぃ!


少しの隙間から手が出てきて、それが甲高く閉扉を剥がす。

眼前に合羽男。

俺は座したまま、下がろうと手足を地に擦る。

しかし、跳び箱やマットが邪魔をする。

最期の俺の視界には手だけが映されていた。


ぽたっ......ぽた。

赤い何かがマットから滴り落ちる。


〈事件ですか? 事故ですか?〉


先には電源の入ったスマホが。


〈......大丈夫ですか? 話せますか......?〉


その声に、ぽたっ、と返す。


〈......〉


学校はいつもの静寂よるになる。

聞こえるのは鳥と虫の鳴き声......そして、水の音だけである。











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