第105話 変化。
中学はあっという間に過ぎて高校、今回も京成学院にする。
前と違うのは会田くんや梅子達も来た事。
そして、私と昇、茂くんに春香まで推薦で合格していた事だろう。
そして昇と話して決めていた事、大久保先生にも戻って来てもらう。
戻ってきてすぐは驚いた顔の大久保先生だったが、全てを話すと、「そうだったんだね。不思議な事もあるものだ。だがまた君達と過ごせる事は幸せな事だよ」と言ってくれて、春香を見て顔をしかめたが、春香は前の春香ではなく、なんとか昇に振り向いてもらおうと思っているようで、今回は3年間A組に居続けた。
2年の春に、こっそりと大久保先生から、「桜さん、申し訳ないが山野はあのままにさせてくれないかな?どの生徒も平穏無事が一番なんだ」と言われて苦笑してしまう。
まあ私と昇は巌さんの好意で、あの部屋で暮らしているので、学校で春香が何かを言ってきても関係ない。
「私は平気です。大久保先生、また今回もスピーチをお願いしていいですか?」
「結婚式のだね?あの時は呼んでもらえて嬉しかったよ。また頑張らせてもらうよ」
私に油断はない。
今回もアンテナを張っていると、東の京高校に行った上田優雅は、懲りずにパパになるし、今回は一木との付き合いが希薄で、良い面で引っ掻き回す存在がなく、今まで以上に無茶苦茶なので、被害に遭う女の子は少ないのに、外でナンパまでした優雅はパパにプラスして高校一年で性病になる。
結局3年間懲りずに女性関係で揉めたゴタゴタにより、決まった大学進学の道は途絶えて、高卒で働くことになっていて、初めてそれを聞いた春香が、真っ青な顔で「助かった。ありがとう昇、ありがとうかなた」と言ってきた。
感謝はいいから昇に付き纏わないで欲しい。
春香のアプローチは年々過激になってくるし、単純に昇狙いで諸々の誘惑に唆されない春香なのに、春香のお父さんは生まれ変わった春香だと思い始めて、懲りずにまたまた信じて「本気なら思うままに頑張れ」と無責任な事を口走ってくれて、私の忍耐力を試してくれた。
まあそんな春香は大躍進で、昇と私の行く大学にまで着いてきたが、大学でさっさと年上で優しそうな人を見つけると、その人と付き合った。
この展開に昇は呆れ笑顔、私と茂くんと真由さんはこめかみを抑えて、「やると思った」、「春香ぁ…」、「あはは、幸せになれたらいいんじゃない?」と言い、美咲と明日香は「本当に自己中」、「不器用の世渡り上手はムカつきます」と言っていた。
そんな春香は彼氏をキチンと紹介してくる。
小菅大樹。
まあ名前に大樹があるからか、良さげに思えてしまう。
小菅さんは、春香の集まりに連れ出されることに少し微妙な顔をしたが、春香に甘えられると優しく受け入れて、私たちの成人式にもついてきてくれて、その後のお祝いにも参加してくれた。
昇はようやく春香の着物姿をキチンと見られたし、そこの横にいるのは女性にだらしない優雅でもない事に、「肩の荷が降りた」と言っていた。
その後は良いものはなぞらえて、更に良いものを昇と増やし続けた。
日本各地を回って春香と優雅の思い出を上書きしていく。
21歳の曽房さんの結婚式。
今回もキューピッドとして幹事を引き受けて色々とサプライズを仕込む。
この頃、美咲はようやく素直になって堀切くんと付き合った。
皆、新しく良い変化をしていて、その中で本人達は前向きで、笑顔で幸せいっぱいなので良しとしたが、大きな変化としては明日香と関谷くんが子供を授かった。
学生結婚
出来ちゃった婚
そんなものだが周りの落胆や邪推なんか通用しない。
明日香の両親は、せっかく京成学院を出て、いい大学にも入ったし、このままいい会社にも行けるのにと残念がったが、関谷くんと明日香は理想の自分像、2人に言わせると、2人から見える私と昇を意識して「僕が明日香さんの分まで働きます。必ず幸せにします」とハッキリと言い、「私は優斗くんを支えて、お腹の子と3人で幸せになる!」と言い切って、周りの反対なんかは全て封殺して押し切った。
巌さんは関谷くん達に対しても、「君もウチで飯を食べたうちの子だ。助けるから幸せになるんだよ」と言って、住むところの援助なんかをしてくれる。
本当に毎回毎回ありがたい。
春香も小菅さんと一緒に曽房さんの結婚式に参列できて泣いて喜ぶ。
お花畑満開なのは、春香と春香のお父さんで、もうこの段階で気を抜いていて、春香のお母さんのお願いもあったが、私と春香のお母さんで、小菅さんに春香の性格なんかを説明して、強引な男に引きずられるから気をつけて欲しいと念押しをしたら、やはり既に怪しい箇所はあったらしく、気を引き締めてくれる事になった。
まあデリカシーが足りない自己中だという事は控えておいた。
24歳で迎える私達の結婚式。
手慣れたものだが、曽房さん達が手を回してくれて、日本各地の昇と仕事をしてくれた人達からお祝いメッセージが届く。
これは初めてで私は感動して泣いてしまう。
比較してはいけないが、春香と上田優雅の結婚式とは違う、誰一人嫌な顔をしていない。結婚式で、今までの結婚式でも十分だったのにさらに上があって感動してしまう。
大久保先生はメッセージを少し変えてくれていて、それでいて私達が戻ってきた存在である事を隠すようにメッセージをくれた。
「年不相応に落ち着き、完成されていると思えた2人の師として、この場に呼んでもらえた事、共に3年間を過ごし、君たちの夢への手伝いができたことは一生の宝物です。もう示せる道も、手伝える事も少ないですが、縁を途切らせる事なく、これからも師として2人を支えられたら幸いです。おめでとう」
今までも感動して泣いてしまったが、それ以上に嬉しかった。
泣きじゃくってしまう私に、「今日は沢山泣いてください。お祝いの席の涙です。沢山感動してください」と大久保先生は言ってくれて、「次は小岩と中野かな?それとも会田と町屋かな?」と軽口を叩いて着席してくれた。