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はるかかなた。  作者: さんまぐ
【初恋解呪。編】
104/107

第104話 無敵の人を作らない。

そんなレモンの悪魔の効果は絶大だった。

サッカー部の子に聞いたら、東中には悪魔がいるから近付くなって噂になったらしく、一木は大会の時に優雅と話す事すら出来なくなっていた。


だがまあ悪い効果も出た。

あのムービーにいた山吹と呼ばれていた女子マネが、昇にバレンタインチョコを持って東中までやって来た。


バレンタイン前に渡したいからと言い、前の週に持ってこられたので、山吹チョコが今年の初チョコ扱いになる。


真由さんから、許婚までいて、その仲は学校公認、友達公認と言われても、気持ちだけは伝えたいと言ってチョコを渡してきた。


頑張って作った手作りチョコ。

見た目も悪くない。


昇は食材と気持ちに感謝をしてから、「ありがとう。折角だから紹介させてね。俺の奥さんになってくれるかなた。で、こっちがこの前は怒ってて近寄りがたかったけど、真由さんの結婚相手の茂」と言って紹介してから、キチンと食べて「これ手作りなの?凄いね。ありがとう」と言って帰り、2人きりになると「かなたー…待つから生チョコ作ってー」と言う。


「昇?」

「キチンと作られてたけど、好みの味じゃない。砂糖とカカオが強すぎた…。かなたチョコが食べたくなる」


口直しと言えば聞こえは悪いが、150年以上の月日で完成された昇の好みは変えられない。


「いいよー。冷やしてる間はウチで宿題やろうねー」と言ってチョコを作った。


今回も茂くんの家でやったバレンタインは楽しかった。


ホワイトデーも楽しくて、帰りに真由さんに頼んで、山吹さんの所にホワイトデーを渡すのは一瞬ヤキモチを妬いたが、昇は「俺の好みとかなたの好みだから、口に合わなかったらごめんね」と言っていてヤキモチは吹き飛んだ。



何度も口にしていたが、昇の中で毛が生え揃うまでは子供として生きるとルールがあったらしく、結ばれたのは中2の夏休み。

中学生が華子さんに「そろそろ避妊具ちょうだい」と言う絵面はどうかと思ったが、華子さんは私に「やっとだね」と言って渡してくれた。

昇の方は曽房さんがくれていて、結局二箱は確約されてしまう。

お父さん達は言い訳じゃないけど2人で旅行に行ってくれて、私と昇の夫婦の日を用意してくれた。


かつて辛く傷ついた時間とは違う。

昇を励ましたくて尽くした高校3年の8月16日の夜とも、東の京高校を選び、春香よりも先に付き合って結ばれた高校1年の春の日や夏の日とも違う。


高校3年の時は、行為の中から春香を連想させない為に必死だった。

2人の秘め事なのに、いない春香を意識しながらの行為は心から集中出来なかった。


高校1年の時は、初恋の呪いから逃げられない昇が、最後の最後まで春香を思い意識していて、心ここに在らずはすぐにわかって傷付いた。


だが今回はそれがない。


そもそも、最初に昇と結ばれた日。

あの24歳のクリスマスの日に近い。

あの日は昇がリードしてくれた。


私は右も左もわからずに困惑ばかりだった。

優しくリードしてくれた昇も良かったが、やっぱり自分も一緒に昇と楽しくしたかった。


思いが通じたのか、昇は何度も私の名を呼んで、何回も「やっとだ」、「嬉しい」と言ってくれて、「ありがとう」と言ってくれた。

私も「ありがとう」と言って何度も昇の名を呼んだ。


本当に呪いが解けて、私だけの昇になってくれたと思ったら嬉しくて堪らなかった。


肌の触れ合いが気持ちよくて、昇の時間を独り占めしたくて、痛みを堪えて夜通ししてしまい、朝日の中で「お父さん達、帰って来なければいいのに」と漏らしたら、昇は「高校生になったらバイトするから、沢山旅行にも行こう」、「沢山2人でいよう」と言ってくれた。



中3の鎌倉は大樹珈琲に顔を出す。


昇の顔を見た瞬間に、お婆さんはまた神様の顔になると「【やめなさい】」と、ひと言だけ言った。


昇が目を丸くして、「あれま。ダメかな?」と聞くと、お婆さんは「【ダメよ。中学に乗り込んだのは見たけど、あれくらいにしないと、仕返しなんてされたくないでしょ】」と言う。


「昇?お婆さん?」

「【まったく、彼ってば記憶回帰の力を限定的に使って、記憶の任意回帰を考えてるのよ】」

「お婆さん…てか神様はお見通しとかすげぇや」


「任意回帰?」

「【今までって、可能な限りで呼び戻してたわよね?それをこの子は、あの敵対する男の子2人に対しては、限定で呼び戻そうとしているの。風を吹かせていた方の子は30歳を過ぎて、夢叶わずに半生を後悔したところで、これまでの150年分の後悔を叩きつけようとしていて、寝取り男の方は18歳の父親になるタイミングなんかで、これまでの浮気や不倫まみれで取り返しがつかなくなって、絶望する記憶だけを呼び覚まそうとしたのよ】」


「えぇ?昇?」

「ほら、最後だし。散々な目に遭ってきたから良いかなって思ってさ」


前回は春香と堀切くんだったが、今回は美咲と堀切くんになっていて、美咲が「やめなよ。関わると後が面倒だよ」と言うと、堀切くんが「放置一択。その優雅って奴は記憶が戻って楠木の事とか、春香の事とか思い出したら拗れるって」と言ってくれて「むぅ」と言った昇は「かなた?」と聞いてくる。


「うん。放置でいいよ。ありがとう昇」と言った私の言葉にあわせて、お婆さんが「【最悪のタイミングでそれをしたら、無敵の人になって襲いかかってくるわよ。物理で人生を台無しにされたい?】」と言う。


確かに、優雅は春香を襲いそうだし、一木は薫と香に何をするかわからない。


もう一度「放置しよう」と言うと、「わかった」と言った昇だったが、一個だけと言ってお婆さんに「神様に聞いてくれないかな?」と聞くと、お婆さんは「【皆褒めてるし喜んでる。これまで奉納した反省文も感謝してたわよ】」と言った。



それこそ意味がわからずに「昇?」と聞くと、「にひひ、神様が居るなら食材の神様も居てくれるかと思ってさ、いつも美味しい食事が食べられるのは神様のお陰で、あとは生産者さんと、料理を作ってくれる人のお陰だからさ、感謝をしたかったんだよね」と昇が答える。


美咲が「えぇ、もしかして楠木ってそれのためにここにきたの?」と突っ込むと、お婆さんが「【ふふ。後は縁結びよね?】」と笑って美咲を見る。


真っ赤になって後ずさる美咲に、「【良縁よ。大切にしなさい】」とお婆さんは言うと、お婆さんの顔に戻って、珈琲をご馳走してくれて「またいらしてね」と言ってくれた。


後で昇は「縁結びは神様のアドリブ」と教えてくれた。

だがまあ私の発言と神様のアドリブがあれば美咲は素直になるだろう。


現に「堀切、お土産とか買うの?」と聞いて、「んー、お守り買おうかなって」と返されると、「どれ?」、「これ」と言われたお守りの色違いを買っていた。

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