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はるかかなた。  作者: さんまぐ
【初恋解呪。編】
101/107

第101話 懲りない優雅とレモンの怒り。

秋口、街がクリスマスイルミネーション一色になる頃、真由さんから聞いていたイベントが起きた。


優雅が真由さんに「先輩、綺麗っすね。やらせてくださいよ」と言った。


今回も言っていた。


真由さんは大人から戻っていたので、前以上に魅力的な女の人でモテモテなのに、「私。将来を約束した彼氏持ちなんだよねぇ〜」と公言していて、更にこっちに来た時なんかに茂くんと腕を組む所とかを目撃されていて、牽制ではない事は証明されていた。

それなのに優雅はブレる事なく真由さんに軽い気持ちで迫る。


まあ、優雅の性格ならダメ元で、やれたらラッキーくらいだ。

だから前回なんかはパパルートに入り、その前は性病ルートにも入る。


よく言えば少子化に全力で刃向かう男。

悪く言えばシモの緩いダメ男になる。


夜、電話で「かなちゃん。どうする?優雅に言われたけど、黙っとく?」と聞かれた私は、「んー…、優等生で未来の生徒会長が彼女の為に隣町まで怒鳴り込みに行くとか見たくない?」と返す。


真由さんは「うわっ」という声と共に「見たい」と言い、私からひとつ頼むと「したい」と言ってくれた。

なので私は昇に根回しを済ませておく。


翌日、久しぶりに輩な顔をした茂くんが「昇ぅぅっ!遂に真由にクソ虫が寄りつきやがった!俺は放課後に乗り込んでくる!」と言う。


「俺も行く」

「バカヤロウ!お前は推薦があんだろ?」


昇が「実力で受かるから平気。茂、この前の試験はどっちが上だっけ?」と聞くと、順位が下だった茂くんは「…クソが。行くぞ」と言った。


優雅の事なので、私や春香は留守番と言われて、昇が房子さんから借りたスマホを録画用として持って、真由さんのいる中学まで乗り込む。


「やべぇ気持ちいい。9月にやられた時の仕返しじゃん」と喜ぶ昇に、「確かに、だがはしゃぐんじゃねえよ」と言っていて、校門前で優雅を呼ぶ。


優雅はサッカー部なので学校に居て、昇と茂くんを見て「なんだお前ら?」と言う。


「俺の名前は小岩茂。お前がクソみたいな事をぬかした、中野真由の彼氏だよ。何がやらせろだコラ?クソくだらねえ事を言ったら、二度と勃たねえようにすんぞコラ?」


「中野?ああ…先輩の」と言った優雅は、愚かにも「独り占めなんてダセェこと言わないでシェアしようぜ?そんで俺のが良くて取られても、格好悪い事言うなよな?」と言う。


殴りかかる茂くんを昇が止めていると、一触即発な空気に教師がすっ飛んでくる。

それこそ私と昇が狙った展開で、キチンと身元を明かして、公然と優雅の女たらし、シモの緩さを露呈する話にできる。



「東中の楠木昇です。家族ぐるみの付き合いをしていて、許婚のようになっている、小岩茂と中野真由さんの間に、彼が割り込んできたと聞いたので、話をしにきました。キチンと証拠でムービーも撮ってますから、証拠提出も可能です。とりあえず俺達は女性をモノみたいに扱う男が嫌なんです」


喧嘩をしにきたように見えない優等生の昇と茂くんの見た目と態度、そして教師のウケがあまりよろしくない優雅では話は見えている。


教師は「上田、またか?」と注意すると、上田は茂くんを「ケツの小せえ男」と挑発し、教師が更に注意して、「こちらからも注意をするから、君たちは帰ってくれ」と言って話がまとまりかけた時、優雅の取り巻きの一人が、愚かにも昇に向けて部活のマネージャーが作ったであろう、レモンのシロップ漬けを顔に投げて「レモンアターック&レモンパーック」とやった。


直後、愚かな中学生の笑い声が聞こえる中、房子さんのスマホは校庭に落とされて綺麗な青空が見える中、昇の「テメェ!今何しやがった!?レモン農家の前でやれんのか!?ハチミツは養蜂農家だバカヤロウ!丹精込めて作ってくださったマネージャーさんの前で、よくもやったな!謝れ!全ての食材と人達に謝れぇぇぇっ!!」と言う怒号と共に悲鳴が聞こえてくる。


茂くんが「昇!止まれ!」と言っても、昇は「止めんな 茂!レモンは気候に左右される大変なモノだし!安い輸入品ばかりで、品質のいいレモンを作ってくださる、国産農家さんは資金繰りも大変なんだ!それもわからねぇでコイツは無駄にしやがったんだ!わからせてやる!」と怒鳴る。


教師が「君!顔に投げつけられただけで怒るなんて」と言えば、「はぁぁぁ!?アンタは何を見てんだ!?顔?顔なんて洗えば済むだろうが!落ちたレモンを投げつけてきたバカに、土下座させながら食わすんだよ!これはレモンとハチミツの怒りを代弁!いや!レモンだけじゃねぇ!全ての農家さん達の怒り、作ってくださったマネージャーさんの怒りだ!」と聞こえてくる。


その直後、優雅の「レモンくらいで頭おかしい」が聞こえてきた時、昇は「お前はいつもいつもそんな考えだから、女の人達を無茶苦茶にするんだろうが!親御さんがどんな気持ちで大事に育てたと思ってんだ!恋人達がどんな気持ちで大切に扱ってると思ってんだ!それを無責任に横から手を出して、弄んでぐちゃぐちゃにして!それで責任ひとつ取らずにヘラヘラと笑いながら逃げるだろうが!このレモンと一緒だろうが!大切に育ててくださった人、大切に扱ってくれた人、そんな人達の想いを台無しにして笑ってんじゃねぇよ!」と怒鳴った。


私には約170年分の魂の叫びに聞こえた。


ムービーの中もスマホが壊れたようにシンとなってしまうが、青空をぷかぷかと泳ぐ白い雲も見えるし、遠くからは車の音なんかも聞こえてくる。


「おい、取り巻きA、マネージャーさんを呼んでこい。お前はレモンの前で土下座して待ってろ」


聞こえてくる「えぇ」という声と足音、暫くすると真由さんの「茂!昇くん!」という声。

少しして、「房子さんのスマホが落ちてるって」と言われながらスマホが拾われると、鬼の形相で腕組みをする昇、レモンアタックをしかけたサッカー部員は、地面に落ちたレモンの前で正座をさせられている。


そこに来た6人のマネージャー女子達の中には、恐怖で足が震えてしまっている子達もいた。

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