コベツ的選挙活動4
それから、オレとベイカーさんは彼女が行ってみたかったという100円ショップに行って、新生活に必要な(不必要なものもずいぶんありそうだったけど)もろもろのグッズを買った。
店を出たところで、午後7時。
選挙活動を取り仕切る水天宮玲子先生の一存で、選挙活動は午後7時までと決められている。なんでも、高校生らしい健全な選挙活動を行うためなんだそうだ。
「今日はありがとうございましたデス。コートは明日お返しします」
「うん、そうして。でも、本当に送って行かなくて大丈夫?」
「ダイジョウブダイジョウブ、ウチすぐそこデス。あ、でも、もし姫雪クンが送り狼したいなら、ウェルカムデスけど」
「送り狼って……日本語ペラペラかよ。じゃあ、また明日学校で」
「はい、明後日の選挙活動もお願いします。あと、さっきの話デスけど」
「さっきの?」
「姫雪クンは次郎丸派だって話デス。もちろん、わかってマス。でもレイコ先生に教えてもらったんデス。負けるのはそんなに悪いことじゃない。学校なんだから、負けても成長していけばいいんだって」
「負けるのは悪くない、か」
ふと、白神先輩と初めて会った時のことを思い出した。
あの頃の先輩は、剝き出しのナイフ(というより、棘付きの鞭?)みたいだった。目的を達成するためには、周りや自分が傷つくことを恐れない。
その先輩がそんなことを言うなんて……やっぱり、少し変わったのかな。
そしてそれは、先輩にって悪くないことのような気がした。
「それに、今日はワタシ、ちょっぴり手ごたえアリデス。センパイ、今日楽しかったデスよね」
「うーん、まあそれは否定しない」
「やったぁデス! 明後日も頑張りマス!」
去って行くクインティーの姿を見送りながら、オレはフゥと息を吐いた。たしかに、今日は楽しかったな。
(そりゃあの子みたいな美少女と一緒にいて楽しくない男がいるわけがないだろ。別に、これは裏切りとか浮気とかっていう話じゃないからな。それに明日はちゃんと真紅さんと選挙活動するんだし……)
そんな風に心の中で言い訳がましくつぶやいたところで、ふと気がついた。
今日はクインティーの選挙活動の日だった。それは、昨日彼女が真紅会長とジャンケンして勝ったからだ。
(会長が、ジャンケンに負けた?)
そりゃ、青嵐学園の理事長兼生徒会長兼剣道部主将を務め、三年連続ミス青嵐に選ばれているという文武両道、才色兼備の次郎丸真紅様だって、ジャンケンに負けることくらいあるかもしれない。
でもそれは、シローを飼っていなければの話だ。
今現在、学園七十七不思議その49「幸運の白い蛇」を飼い馴らしている真紅さんには普段の100倍のラッキーが降り注いでいるはず。そんな彼女が、ジャンケンに負けるなんて……
思わずクインティーが歩いて行った方向に目をやった。けれど、彼女の姿はすでにない。
金髪美少女が消えた街を、冷たい木枯らしが通り過ぎて行った。




