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生徒会長のジツリョク3

「やったか!?」


 だが、急所への一撃も巨獣に致命傷を与えるまでにはいたらなかったらしい。地獄の番犬は牙を剥いて、小さな襲撃者を食いちぎらんと襲い掛かってきた。


 女剣士は華麗なバックステップでケルベロスの突進をかわしながら、更に魔獣の顔面を切り裂く。一撃、もう一撃とクダリ刀の攻撃は続いた。その度に血が噴き出して、校庭は真紅に染まっていく。


「すごい、会長が地獄の番犬を圧倒してる」


 その勇姿に見蕩れながら、でも同時に驚きも禁じえなかった。いくら御神刀を持っているからって生身の人間が巨大モンスターを倒すなんて。目の前で繰り広げられているのは、まるで大人気モンスター狩猟ゲームそのまんまの光景だ。


「これでおしまいよ、ケルベロス。あなたには何の恨みもないけど、この辺で大人しく魔界に還ってちょうだい!」


 会長はクダリ刀を大上段に振り上げ、ケルベロスにとどめを刺そうとした、


 ――その時だ。


 何かが飛んできて、ガラ空きになっていた会長の背中を襲った。


 バランスを崩した彼女はケルベロスの爪の攻撃を受け、校庭の端までふき飛ばされてフェンスに叩きつけられた。


「会長!」


 慌てて駆け寄ろうとするオレの行く手を、何者かが遮る。


「姫雪クン、チャオ」


「チャオって、あんた……」


 白神一子だった。金髪にツケマツゲにミニスカートの不良娘がニッコリ微笑んでいた。その右手は肘から先がプッツリ無くなっている。


 そうだ。彼女の腕は、ロケットパンチみたいに切り離して攻撃に使われるんだ。ってことは、さっき会長の背中を襲ったのはきっと白神一子の右腕なんだろう。


「何するんですか!」


「何するって、この間あの暴力女にずいぶんな目に合わされたんだもん。ちょっとリベンジしちゃった。てへペロ」


「てへペロじゃないでしょう。そこをどいてください、会長を助けないと!」


 けれど先輩はオレの前に前に立ちふさがったまま、道を開けようとしない。


「えー、姫雪クンはあの暴力女の味方なのぉ?」


 ふくれっつらで右腕を掲げると、飛んできた腕の先が彼女の肘にくっついた。その姿を見て、オレはいまさらながらに目の前の美少女が人間じゃないことを痛感した。


「あの暴力女なら大丈夫、死にまではしないわよ。それより、封印帳を渡してチョーダイな。こんだけの大立ち回りを繰り広げれば、見事七十七個、完全制覇してるはずだしぃ」


 つながった腕の感覚を確かめるように肩を回しながら、白神先輩は舌なめずりをする。


 封印帳に目を落とした。


 先輩の言う通り、残された最後のページが朱色に変わっている。


「フフン、どうせ姫雪クンは、封印帳をコンプリートしたら自分が聖玉と契約して、その力であの子を取り返そうなんて思ってるんでしょ」


(……ちっ、バレてるのか)


 オレは内心の動揺をできるだけ顔に出ないように先輩の顔色をうかがった。


「まあ、あたしはそれでもいいんだけどね。だってそうしたら、鬼神様が復活してこの世はあたしたち魑魅魍魎の世界になるんだもん」


 鬼神を復活させて、この世を魑魅魍魎たちの世界にする。先輩はやっぱりそれが狙いだったのか。


「でも、残念でした。キミは封印帳から聖玉を復活させる呪文って知ってる? 聖玉と契約を交わす場所だって知らないよね。つまり、あたしに封印帳を返す以外、姫雪クンにはどうしようもないんだよ」


 白神一子は、封印帳をこっちへよこせと言わんばかりにチョイチョイと手招きをした。


 悔しいけど、彼女の言う通り何も知らないオレには打つ手がない。


 でもここで、「はい、そうですか」と封印帳を渡す訳にはいかなかった。人間が相手ならともかく、魑魅魍魎がおとなしく封印帳と透を引き換えてくれるなんて思えないからだ。


 手にした封印帳を、隠すように背後に回した。


「透はどこにいるんです? 彼女と交換でなきゃ、コイツは渡せない」


「フフフ、姫雪クンはホントにあの子が大切なんだ。人間の男の子にはさ、ときどきそういう一途な目をした子がいるんだよねえ。でもちょっとズレてるんじゃない? 鬼の王が復活して人間の世界が終わろうって時に、彼女の心配?」


「ごまかさないでください。あいつは無事なんでしょうね。もし、あいつに傷一つでもついていたら、オレにも考えがあります」


「へぇー、どうするつもりなの?」


「こうします」

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