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灯りを運ぶ人ー山から海ー  作者: 堺大和
続・灯りを運ぶ人
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未来を歩く二日目

二日目の朝

雨実村は住み切った青空に包まれていた

移住体験施設では五つの家族が地元食材を

使った朝食を囲み

ゆったりとした時間を過ごしていた

朝食を終えると 新田が参加者の前に立つ

「皆さん 本日は雨実村での暮らしを

具体的にイメージしていただくため

生活環境をご案内します」

「学校や空き家など 

実際にご覧いただきますので

気になることは何でも質問してください」

五家族は村のワゴン車へ乗り込み

最初の目的地へ向かった


最初に訪れたのは 小中学校だった

校庭では子供たちが元気よく遊び

校舎には子供たちの笑い声が響いている

校長が笑顔で迎えた

「ようこそ雨実村へ」

教室を見学した参加者の一人が尋ねる

「一学年は何人ぐらいですか?」

新田が答える

「現在は十名前後ですが 一人一人に目が

届く教育を大切にしています」

続いて中学校も案内する

少人数ならではの授業や部活動について

説明を受け 

保護者達は熱心に耳を傾けていた


午後になると 新田は空き家バンクへ

登録されている住宅を数軒案内した

古民家を改修した住宅

庭つきの平屋

比較的新しい木造住宅

参加者たちは間取りを見ながら

其々の暮らしを創造していた

「ここなら家庭菜園もできますね」

「子供が走りまわれそう」

そんな会話が自然と聞こえてくる


一方その頃

阪神地域と京都地域から参加していた

二人の男性は古川村長と菫に同行していた

「少しだけ こちらもご案内したい場所が

あります」

村長はそう言って車を走らせた


最初に案内したのは 村を流れる清流の

取水予定地点だった

透明な水が岩の間を流れ

木漏れ日が水面を照らしている

菫が資料を広げる

「こちらが先月 

水質調査を行った地点です」

「年間を通じた調査は継続中ですが

現在まで結果は良好です」

二人は静かに川を見つめる

「本当にきれいな水ですね」

村長は頷いた

「この水を守りながら活かすことができれば

それが村の未来につながると思っています」


続いて訪れたのは 

工場候補地として検討している村有地だった

道路に面し 大型車両の出入りもしやすい

場所である

近くには十分な用地が広がっていた

村長は説明する

「まだ正式に決まった場所ではありません」

「今後の調査結果や企業の皆さんのご意見も

参考にしながら検討していく予定です」

阪神からの男性が周囲を見渡す

「物流面も考えられていますね」

京都からの男性も頷く

「周辺環境との調和も大切にできそうです」


さらに一行は 道の駅にも立ち寄った

山々が広がっている

休日の駐車場には県外ナンバーも多く並び

直売所には買い物客が行きかっている

レストランからは昼食を楽しむ家族連れの

笑い声が聞こえてきた

村長は建物を見ながら静かに話した

「この道の駅も最初は本当に人が

来てくれるか 不安でした」

「でも三年たった今では

村の玄関口になってくれています」

阪神からの男性は店内を見渡しながら言う

「平日でも 

これだけお客様が来られるんですね」

「ええ」

「ここへ名水を使った飲料水やビールが

並ぶ日が来れば さらに村の魅力を

発信できると思っています」

京都地域の担当者は静かに頷いた

「道の駅という販売拠点がすでにあることは

大きな弾みですね」

「村長さん」

「先日は会社でお話を伺いましたが

今日は実際に村を歩いて

その意味がよく分かりました」

菫は其の言葉を聞き静かに胸をなでおろした

村長が毎週末 京阪神へ通い続けた努力は

確かに人の心へ届き始めていた


夕方

五つの家族は温泉旅館へ戻り

其々の感想を語り合っていた

子供たちは村で遊んだ思い出を嬉しそうに

話し大人たちは生活や仕事について

意見を交わした

その輪の中で阪神の男性が静かに口を開いた

「今日は家族と一緒に村を見て回りましたが

仕事の面でも大変参考になりました」

京都からの男性も続ける

「まだ何も決まっていません

しかし もう一度会社へ持ち帰り

社内でも話をしてみたいと思います」

古川村長は深く一礼した

「ありがとうございます」

「その気持ちだけで十分です」

「これからも 

雨実村をよろしくお願いいたします」

初夏の風が 温泉旅館の窓を静かに吹き抜け

その風は 村に新しい緑が少しずつ

芽吹き始めていることを知らせて

いるようだった


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