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第三十話 ウンディーネの過去とは?

ゲルダが両手でバツの字を作って前に突き出ている。

 彼女の能力、パーソナル・ジーザスは相手を凍らせる力を持つ。動物ならあっという間に氷像に早変わりだ。神に抱きしめられたまま、天国へ旅立つように死ぬのである。


 まさに優しく殺す効果キルミーテンダーエフェクトだ。


「わっ、何をしているんだお前たち!!」


 そこに数人の男たちが現れた。騒ぎを聞いて駆けつけてきたのだろう。全員辮髪に青い法衣を着ていた。


「あなたたち!! 今は緊急事態レベルAです!! 今すぐ行動なさい!!」


 そこにモンロースナックが声を上げた。すると男たちは瞬時に反応する。


「スナック様だ!! ご帰国されていたんだ!!」


「いいや、今はプランAだ!! すぐにローマ中に緊急放送を流せ!!」


 男たちはすぐに行動に移した。スナックはあらかじめ彼等に教育していたのだ。スナックから詳しい話を聞かなくても、行動を起こせるよう躾けられたのだろう。


 男たちは辮髪をヘリコプターのプロペラのように回し始めた。すると彼等は地面に風を巻き起こしながら、飛んでいくのだ。人造人間でもないのにすごいや!!


神応石スピリットストーンを額に埋め込んで、訓練させたのです。普通の人間でも普通に使えるようになりますよ」


 スナックが説明してくれた。確か元中華帝国にある龍京ロンキンではノヤギの亜人が身体中に熱を発したり、カピバラの亜人が前歯を伸ばしたり、白馬の亜人が鼻毛を伸ばして攻撃したりしていたな。

 

「行かせないわ」


 ゲルダがカエルのように高く飛ぶと、空飛ぶ男に抱きついた。そして両手で男の頬をなでなですると、男の顔は恐怖に歪む。

 次に頭から氷柱が飛び出し、左胸からも氷柱が生えてきた。そして男の動きは止まり、地面に落下して砕け散った。

 ゲルダはその前に別の男に飛び移ると、同じことを繰り返す。


 彼女に撫でられたことで全身の血液が氷結し、膨張したのだ。雪国では冬の間アスファルトに水がしみ込み、その水が凍って膨張することで春にはアスファルトがぼこぼこ穴が開くという。

 それと同じだ。ゲルダは相手の血液を凍らせて、膨張させることで身体を滅茶苦茶に切り裂くのだ。


 二人目を殺して、三人目に飛び移ろうとしたが、突如水の柱がゲルダを襲った。

 やったのはウンディーネだ。彼女は海に入って、水鉄砲を作ったのだ。日本人はお風呂で両手をすぼめることで水を飛ばすという。ウンディーネの両手には水かきがあるから、威力は抜群だ!!


 男たちは無事逃げ切ることが出来た。ローマに危機を伝えることが出来るだろう。しかし二人も犠牲者を出してしまった。ゲルダの奴、許せないよ!!


「どうして彼等を殺したの? 何も悪いことはしていないのに」


「何を言っているの? あいつらは町へ危機を伝えに行ったのよ。あんたらを殺したら住民を殺しまくってやるわ。そして全部ヒュー・キッドが来たから不幸が起きたんだと伝えてやるのよ。そうすれば私ではなくあんたたちだけが恨まれるって寸法なわけね」


 僕の問いに対してなんとも邪悪な発言をするゲルダ。僕は怒りより憐憫の情が湧いた。人の不幸を願うなんて人間の屑だ。

モンローセンプは相手を殺して、自分の細胞を移植し、キョンシーを生み出した。

 モンローエクストラは亜人たちの脳をいじり、動物へと変えていった。でも人を殺していない。そりゃあ僕も人が殺されるところを目撃したし、放置したこともある。

 でもゲルダは人殺しを楽しんでいる。しかも僕らに責任転嫁するつもりだ。


 なんで彼女がここまで邪悪になったのかはわからない。でも彼女は僕らの仲間だった。僕は彼女を止めなくてはならない。でも彼女の息子であるハッピープリンスはどう思うだろうか。


『どうもこうもない。殺して構わないぞ』


 プリンスからの念話を感知した。なんとも冷静な口調だ。母親なのにいいのだろうか。


『そもそも俺の知っている母、雪花シュエファは真面目で頑固な性格だが、人の死を望んじゃいない。それにゲルダの記憶は18歳の頃のままだ。もしかしたらその当時からその思考だった可能性がある。人造人間メタニカルアニマルだから精神が成長していないのかもしれない』


 なるほどそういうことか。ゲルダは74年前にモンロークラウトのオリジナルである龍英雄ロン インシオンと結ばれ、子宝を授かった。それ以前の彼女の性格は誰も知らない。もしかしたら今のゲルダが本性なのかもしれないな。


『アヒャヒャヒャ!! オマエラヲ、ハヤクコロシテ、マチヘイクゾ!! ソシテ、ヒトヲオモウゾンブン、コロシマクルンダ!! ダガ、オレノセイデハナイゾ、アドニスノセイナンダ!! オマエガ、イキテイルカラ、コノセカイノニンゲンハ、フコウナメニ、アウンダ!! オマエナンカ、イキテイルダケデ、ヒトヲフコウニ、スルンダヨ!! ダカラ、オマエヲトジコメテ、ゼンブ、オマエノセイニ、シテヤルンダ!!』


 キュニラスが叫んだ。吐き気のする発言だな。恐らく自分の悪事を僕に責任転嫁することで、正当性を主張するつもりのようだ。

 人間の心は弱い。自分が責任を取るなんて認めたくない。人のせいにしないと気が済まない者がいる。

 過去にグランパがどういう生まれで、アメリカに渡ったかはわからない。

 だけど自分に責任を持たず、常に相手のせいにするのは見過ごせないぞ。


「気をつけなさい!! 敵はこいつらだけではないわ!!」


 スナックが叫んだ。ゲルダとキュニラス以外、誰がいるというんだ?

 そう思ったら海から何かがやってきた。それは水死体だ。数百体以上いてしかも動いている。

 

「グォォォォ……」


「ナンデオレガ、コンナメニィィィィィ……」


「ゼンブ、モンローノセイダァァァァァ……」


 全員僕に対して恨み言を言っている。アメリカのゾンビ映画のようだ。某歌手のプロモーションビデオ並である。


「彼等もマウスピースに取り込まれたスプーキー・キッズです!! 精神が全く成長せず、自己愛に溺れた怪物です!!」


 スナックが説明してくれた。彼女は両手をバツの字に交差すると、足元から髪の毛が地面に伸びていく。そしてゾンビたちの足に絡まり、次から次へと倒していった。

 だが相手は足を強引に引っ張ると、足首がぼろっと抜けた。なんかぐろい。


 相手はゾンビだ、痛覚はない。ただ僕を非難し、僕を否定することで自己を保っている哀れな存在だ。


「ここは私が何とかします!! あなたはキュニラスを相手にしてください!! ウンディーネさんはゲルダの足止めをお願いします!!」


「心得たわ!!」


 スナックが叫ぶと、ウンディーネも承知した。僕はキュニラスを見据える。僕より身長が倍もある。あまりにも威圧感がすごい。巨大化したアライグマやヌートリア、原始人並みに知恵を得たアカゲザルやカニクイザルですらここまで迫力はなかった。


「やめるんだキュニラス!! 無意味に人を傷つけるのはよくないことだぞ!!」


『ウルセェェェェ!! オレハエラインダァァァァァ!! オレハイダイナソンザイナノダァァァァァ!! オレニメイレイスルナァァァァ!! オマエガオレノメイレイヲキケェェェェ!!』


 もう話にならない。グランパは頭がおかしい。多分アメリカに来たのはいいが、アメリカの空気が合わなかったのだろう。

 法律に縛られ、法律に叩きのめされた。その鬱憤を家族に向けたのも、相手が反撃しないとわかっているからだ。

 ママは父親の遺伝を恐れたのだ。だから神応石を使い、僕が一人でも生き延びれるように育ててくれたのだ。


 僕はママの愛を感じ取った。そして目を見開き、キュニラスの腹部を殴る。

 するとキュニラスの巨体は車に跳ね飛ばされた鹿のように吹き飛んだ。


 ぐえっとうめき声を上げると、地面に叩き付けられる。

 すぐに起き上がると、キュニラスは怒りに震えていた。ヤギの眼はぎろぎろとしており、口から涎を垂らしている。


「ヨォ、ヨクモオレヲナグッタナァァァァ!! オマエハ、ダマッテ、オレニナグラレロヨォォォォォォ!! ソレガオレノホウリツナンダヨォォォォォ!!」


 キュニラスは子供のように地団太を踏んだ。僕より年上なのに、子供じみている。なんか可哀そうだ。


 するとキュニラスは僕から背を向けて、町に向かって走り出した。

 なんで僕から逃げるんだ?


「いけない! あいつはあなたが手ごわいから、別の弱いものを探しに行ったのです!!」


 なんだって!? あいつはどうしようもないクズだ!! そんなことはさせないぞ!!


 僕は空を飛んで追いかけようとした。だが突如ゲルダが僕の前に立ちふさがる。

 彼女は僕の顔の前に手を振るった。一瞬、僕の顔に結露が生まれる。視界を防がれて僕は地面に叩き付けられた。


「ヒョヒョヒョ。邪魔はさせませんよ。キュニラスが町にって無差別に殺してもらわないと困るんです。だってみんながあなたを憎まないから」


 この女どこまで腐っているんだ!!


「すべてあなたが悪いのですよ。チャールズ・ヒュー・モンロー。あなたが生まれてこなければこんなことにはならなかったんですから。あなたが生き残ったのは永遠に世界に謝罪することです。人類が滅んでもずっと土下座して謝罪してくださいね。ひょひょひょ」


 ゲルダが嗤っていると、ウンディーネの水柱がゲルダに直撃した。


「ふざけたことを抜かすんじゃないわよ!! この腐れ外道が!!」


 ウンディーネは水柱を泳いでゲルダの顔に下半身を叩きつける。魚のしっぽは筋肉の塊りだ。サメやマグロのような巨大な魚の尾びれは人間の首を簡単にへし折る。


「ひょひょひょ。ウンディーネ、いいえ、毬林魅羅まりばやし みら。あなたこそ生前どれだけの悪事を行ったのですか? 法律に触れずに何人の命を奪ったのですか? それを知らない私だと思っているのですかね?」


 ゲルダがニヤニヤ笑っている、ように見えた。ウンディーネの顔が険しくなる。


「……あなたの言う通りですよ。ですが私は謝りません。だって反省とは学習であり、間違いを正すことですから」

吐き気のする悪とは自分で責任を取らず、常に他人のせいにすることだと思う。

そう北斗の拳のシンのように。ケンシロウをいたぶってユリアに自分を好きと言わせて「女の心変わりはおそろしいのう」と責任転嫁するような感じですね。

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