第136話 神は魔法神と邂逅する
ゼロですわ。
皆さんはW杯はご覧になりましたか?
クロアチアには敗れたもののあのドイツとスペインに勝つって凄いですよね。
次の米墨加W杯では是非ベスト8に進んでほしいですね。
あ、ちなみにウチの絶対神が試合に出たら、キックオフ直後センターラインからゴールを決められますよ(笑)。
アリアは俺が『浄化』した後も、涙を流しながらガタガタと震えていた。
その姿を余所目にイーゼルに掛かっている魔法を解除すると、イーゼルは呆れた顔をしながら俺の所へやってきた。
「あの、グロ過ぎるんですけど」
イーゼルはあの光景を見てしまったのか、苦言を呈する。
今も足元に気絶した兵士達が転がっているが、あの光景を見て無事でいるのは素直に凄いと思う、うん。
「え゛、そ、そんなにグロかったのですか?み、見なくて良かった…」
ライムは終始目を瞑っていたからな、見なくて正解だろう。
多分そこで震えているアリアみたいになる。
ライムは「私、回復してただけなのに」と呟きながら、俺の顔をじっーと見る。
「殺してないだけマシだろ。下に転がっているのが死体じゃないから問題ナシ!」
「いや、結果より過程が問題なんですけど。それよりこの人どうします?心壊れてませんか?」
ライムがそう心配し、俺達がアリアの方へ向くと、アリアは「ひっ」と小さく怯えた声を上げる。
「全く、仕方ないな」
俺はアリアに『鎮静』を掛けると、少し落ち着いたのか――しかし涙を流し震えていたままだが――怯えた声で俺達に尋ねてきた。
「ど、どうして第7位が、それに、だ、第1位様まで」
なぜライムといいアリアといい、第1位の後に様を付けるのだろうか。
そんなことはさておき、アリアの問いに対して首相だからと答えておいた。
「答えになって・・・いますね。ゼロ様はグランツ王国の首相ですから。ちなみに私は付き添いですよ」
ライムがそう答えると、アリアは「そんなの絶対勝てないじゃない…」と呟く。
十帝とはいえ、アリアにとって上には7人いることになる。
ま、今回は流石に運が無かったな。
そもそも俺と敵対した時点で負け確なので仕方ない。
そう言えば、アリアが現れる前にいた皇王陛下と外務卿が居なくなっているな。
あれ、いつの間にどこ行った?
俺がキョロキョロしていると、俺達が倒した数十人の兵士全員がこの場からスッと消えた。
それと同時に兵士達が入ってきた扉から、紫色のローブを纏った長髪の男が現れた。その男を見るや否や、アリアは「し、ししょ〜」と言い、泣きじゃくりながら男に抱き着いた。
「全く、だからあれ程言ったじゃないか。操るなら国内だけにしろと」
「だって〜、だって〜、グズッ」
アリアは急に人が変わったようにその男に泣きついている。
その姿に呆然としていると、男は俺達の前に立ち、深々と一礼して謝罪をした。
「グランツ国王陛下、グランディオ大閣伯爵閣下、聖女ライム様、この度はウチの馬鹿弟子が申し訳ない。ほら、アリアも早く謝りなさい!」
「グズッ、ごべんなざい〜」
まるで子供のようなアリアの謝罪を一応は受け取ると、イーゼルは「失礼ですが、貴方は?」と聞き返した。
「申し遅れました。この馬鹿弟子の師匠をしております、グリツと申します。以後お見知り置きを」
再び深く礼をするグリツと名乗る男。
俺の役職の正式名称を知っているのは兎も角、ライムの正体まで知っているのに疑問を持った俺はその事について訊ねた。
「ああ、この城に入る時に結界を通り抜けられましたよね?あれ、私が張った結界なんですけど、魔力の波長を感知できるんです。それで入ってきた人物のことが分かるようになっているんですよ」
俺達はこの城に入ってきたときのことを思い出して納得した。
あれ程の結界魔法を使える者ならば、転移魔法を使って兵士達を移動させることも容易だろうな。
「そう言えば、俺達が来た目的を忘れるとこだったな。こんな状況で大丈夫か?」
「あー、えーと。皇王陛下はアリア殿下に操られていたから、えっと、国家元首って誰になるの?アリア殿下?グリツ殿?」
イーゼルがそう訊ねると、グリツは「事実上はアリアですね。私はあくまでアリアの師匠ですから。皇王陛下や他の者達はアリアの傀儡に過ぎませんので」と答えた。
グリツは続けてアリアの頭をペシッと叩くと、「ほら、準備は済んでいるから、早く仕事しなさい!くれぐれも勝手に操ろうものなら・・・一ヶ月おやつ抜きですからね!」とアリアを脅す。
アリアは「おやつ抜き!?ふぇぇ、分かったよう〜」と、目に涙を浮かべながら、俺達を別室へと案内しようとした。
「あ、俺は師匠と話があるから、イーゼルとライムで行ってくれ。流石に大丈夫だろ」
俺がアリアを一瞥すると、アリアはビクッと跳ね上がり、俺を見て泣きそうになりながらも、イーゼルとライムを連れて、その場を後にした。
俺は3人を見送り、グリツの方を向くと、グリツは俺の前で跪くと、頭を垂れた。
「久しぶり、魔法神グリーツィア=エグゼド」
「またこうしてお会いできることを信じておりました、絶対神様」
「よく俺だと分かったな、と思ったが、あの結界で分かるのか」
「はい、絶対神様もよく私が魔法神だと」
「まぁ、あの結界を張れる奴なんて神ぐらいしかいないし」
「それもそうですね。今の時代、人間には不可能ですから」
「それで?ここで何でアリアの師匠なんかやってるんだ?」
俺がそう訊ねると、魔法神はこの国の建国の話から語り始めた。
ついに魔法神と邂逅!
実は長くなってしまったので分割しました。
なので第4章はあと2話+αです。
年内には終わらせたかったけど、行けるかな?
無理そう。
そう言えば、アリアは魔法神の弟子といつ肩書きを持ってることになりますね。
地味に凄いよね。