第134話 神は操られない
ゼロですよ。
イギリスのリズ・トラス首相が辞任する前に山際経済財政相が辞任しました。
後任はそれぞれリシ・スナク元財務相と後藤茂之元厚労相になるそうです。
リズ・トラスは在任50日での辞任ということで史上最短ですね。
日本では東久邇宮稔彦王が54日で最短です。
また、内閣で言えば第1次岸田内閣の38日、改造を含めると第2次田中角栄第2次改造内閣の28日が最短なんですよ。
政治的には長い方が安定するのですが、個人的にはポンポン代わってくれた方が面白くて好きです。
エグゼディア神皇国首都エグゼディア、多くの留学生が集まり、多数の学会が開かれる程の学園都市なので、学生や学者による活気ある都市、だと思っていたのだが。
「なんでこんなに雰囲気が暗いんだ?こんなに人が多いのに」
「ですね、私が留学した時はこんな様子ではありませんでしたし」
明らかに異様である。
皆俯きながらトボトボと歩いている。
我々のような冒険者や初めてこの街に来たという者達は平然としているのだが、それでも陰鬱な空気に飲まれてしまっている。
全体的に街が暗く感じてしまう。
そんな異様な雰囲気を余所に、俺達はエグゼディア神皇国皇城、エグゼド魔法城へと歩を進めた。
エグゼド魔法城は首都エグゼディアの中央に聳える巨大な城で、その城をすっぽり覆える程の巨大な結界が城の周囲に張られてある。
その結界は普通に目視できており、薄暗い街に青白く光を放っているそれは、異様な雰囲気を更に感じさせるようなものであった。
「街もそうだけど、この結界も相当不気味だよね」
「結界は以前見た時と変わらないのですが、この雰囲気と合わせると本当に不気味です」
「これだけ大きな結界を張れることだけは評価できるな、うん」
イーゼルとライムは「そこじゃない」と声を合わせて主張する。
いや、俺に不気味さとか感じないし。
異様だとは思うが、別にそこまでじゃないからな。
そんなこんなで俺達はエグゼド魔法城の堀に架かっている橋を渡る。
その橋の真ん中に結界が張られており、その結界を触れようとしたが、腕はそのまま貫通し、普通に通り抜けられた。
通り抜けた時に分かったのだが、これは悪意のある者や物だと跳ね返るようになっているな。
普通の結界とは違い、普段はこのように通り抜けられるようになっているのだが、攻撃や悪意のある者が通り抜けようとすると、それに反応し瞬時に硬くなるタイプの結界、所謂これは柔剛結界と呼ばれるものだ。
柔剛結界でこの規模のものとなると、結界魔法としては上級を優に超える。
つまりこの結界は無属性超級魔法ということになるな。
さて、一体誰が張った結界なのやら。
そんなことを考えていると、さっき結界を通り抜けた時に魔力を感知したのか、目の前にある巨大な城門がゆっくりと開いていく。
多分魔力感知によって通った者が誰なのか判別して、自動で開くようになっているのだろう。
突然城門が開き、イーゼルとライムが驚いている中、開いていく城門の奥で誰かが立っているのが見える。
完全に城門が開き終わると、立っていた男は深々と一礼すると、俺達に向かって話かけてきた。
「ようこそいらっしゃまいした、グランツ王国の皆様。私はエグゼディア神皇国で外務卿を務めております、カイヘル=イザリオと申します」
カイヘル=イザリオと名乗るその男は棒読みでそう言った。
そう、棒読みだ。
誰でも分かる明白な棒読みだ。
巫山戯ているのかと思われるが、目が虚ろで少しふらついており、まるで生気を感じられない。
まるで生きる屍のような男だ。
「皇王陛下がお待ちです、さぁどうぞこちらへ」
またしても棒読みで案内するイザリオ外務卿。
これが素なのか、それとも異常なのか、イーゼルとライムは居た堪れない不安感に苛まれながら、俺達はイザリオ外務卿の後ろをついて行った。
魔法城の中も外と同じように薄暗く、不気味な雰囲気を漂わせている。
前を歩くイザリオ外務卿がその暗闇に飲み込まれて消えて居なくなりそうな感じである。
俺は別に何も思わないのだが、ライムが手を震わせながら俺の服を掴んでくる。
歩きにくいからやめてくれ。
異様な情景を醸す城内を歩き続けること数分、漸くエグゼディアの皇王が居る部屋へと到着した。
イザリオ外務卿がその扉を開けると、中には玉座の前にある階段の下で皇王が突っ立っていた。
俺達は思わず、は?という表情になる。
それもその筈、普通は玉座に座って待ち構えるものだからだ。
しかも階段の下ということで、俺達と同じ高さに居ること自体がおかしいのだ。
「ようこそ、歓迎しようグランツ王国の者共よ。余がエグゼディア神皇国皇王、カイジン=ザ=グランギニョルである」
・・・そういう上から目線の台詞は是非玉座から言ってほしかった。
俺達より身長が低いせいで下から目線になっている。
他国の使節に対して者共と発言するのはどうかと思うが、それ以前にこいつも棒読みである。
序でに雰囲気が暗すぎて威厳もクソもない。
だが、一応礼儀としてこちら側も名乗っておく必要がある。
「・・・お出迎えありがとうございます。グランツ王国国王イーゼル=グランツです」
「同じく首相のゼロ=グランディオだ」
「・・・え?私も言うんですか?えっと、・・・補佐のライムリー=アヴァンドンです」
ライムは流石に素性は隠している。
グランツ王国の者じゃないからな。
だが素性は隠しているけど名乗っているのは本名だ。
神聖アーク帝国の聖女としてライムの名前の方が通っているからな。
流石ライム察しがいい。
しかし俺達が名乗り終えた途端、甲高い笑い声がこの室内に響き渡る。
「キャハハハハ!名乗ってくれてどうもありがとう♡」
突然の笑い声に動揺するイーゼルとライム。
俺は即座に声が聞こえる方へ顔を上げる。
すると玉座に座って足を組んでいる少女がそこにいた。
少女を視認すると少女の両手から糸が出ているのが分かる。
少女が両手を動かすと、俺達の前にいた皇王はその手に合わせて、横に移動する。
成程、棒読みなのはそういうことか。
「貴方達もこいつらと一緒に操ってあげる♡『傀儡交響曲』」
少女は俺達の方に両手を伸ばすと、無数の糸が俺達を襲う。
が、俺達が操られることはなかった。
「は?え?な、なんで、なんで操れないのよ!」
少女は必死に糸を動かそうとする。しかし俺達に掛かった糸はピクリとも動かない。
「クソっ!何なのよっ!なんでっ!」
「いや、まぁ国王ですし」
「まぁ首相だし」
「二人共答えになってませんよ・・・」
まぁ単純に考えて俺達の方が強いからだろうな。
イーゼルに至ってな俺の神紋があるし、絶対に操られることはないだろう。
俺はそもそも操られないし、少なくともライムよりは弱いことは分かった。
操れないことが分かったその少女は少し取り乱したが、すぐに平静を装い、俺達に話し掛けてきた。
「私が操れないなんて、貴方達一体何者よ?」
「いや、それ以前にお前は誰だ。こっちは既に名乗っているんだから、お前も名乗れ」
俺がそう言うと少女はハッとして、伸ばしていた両手を降ろす。
そして少女は玉座から立ち上がり、スカートの裾を持ち上げて一礼すると、俺達を見下しながらこう言った。
「私はエグゼディア神皇国王太女にして、十帝冠位序列第8位〈傀儡〉アリア=グランギニョル=マリオネイティ。貴方の国、私にちょーだい♡」
ついに登場!
エグゼディア神皇国の十帝です。
ここまで神聖アーク帝国やザンザルヴェート王国でも登場したので、予想できた方もいるんじゃないでしょうか。
でも所詮8位なのでゼロやライムには敵いません。
次回は珍しく戦闘回ですよ!
語彙力ないのであっさりしそうですが。