第123話 神は視察する
あつくてしにそう
この話、想定していなかったせいか、作りが雑になってしまった。
俺はイーゼルと合流し、聖女ライムに連れられ、訓練施設ような所に来ていた。
俺達が中に入ると、兵士だろうか、的に向かって魔法を放っている。
入学試験を彷彿とさせるその様子を見ながら懐かしいなと思っていると、強面の男が俺達に近付いて来た。
「これはこれは聖女様、本日はどのようなご要件で?」
若干煽り気味で発せられた言葉に対し、聖女ライムは冷静に対応した。
「こちらはグランツ王国国王、イーゼル=グランツ陛下と首相、ゼロ=グランディオ殿です」
流石に他国のトップとナンバーツーだとは思わなかったようで、驚いた表情をした男は、俺達に向かって挨拶した。
「これは失礼致しました。私は神聖アーク帝国第一魔法師団長のマーク=イプサムと申します。確か本日は我が国とグランツ王国との会談の日でしたな」
「はい、聖母様の命を受け、こちらのお二方と共に魔法師団の視察を行いに」
聖女ライムが淡々と説明すると、マークは聖女ライムを見下しながらこう言った。
「視察とは良いご身分ですね。貴方の騎士団はA級の魔物に後れを取ったそうじゃないですか」
「!」
「何でも、何処からか飛んで来た魔法によって辛うじて倒されたとか。いけませんねぇ、そんなものでは。我々が行えば被害は0で済んだものを」
マークが聖女ライムを煽り、聖女ライムもまた事実である為、反論せずにいた。
つかA級の魔物?
何処からか飛んで来た魔法?
「あー、それ俺だわ。魔物の反応がしたから2km先ぐらいから魔法を放ったな。そうかあれは聖女の騎士団だったのか、ふーん」
俺がそう言うと、イーゼルも聖女ライムもマークも驚いた顔をして、こちらを見つめた。
「そう言えばゼロ、あの時魔法を放っていたけどそれだったの?と言うか2kmか、流石だね」
「(まさか!この男が・・・。ですがイーゼル陛下もそう仰っているし・・・本当に?)」
「ほう、貴方が。それも2km先からですか!その威力と正確性、是非ウチの師団に入って貰いたいものですな」
「イプサム魔法師団長、彼は首相ですよ。それに言いましたよね、視察ですと。確かに私の騎士団は負けかけましたが、貴方の師団でアレを倒せるとは思いませんが?」
「フッ、ハッハッハッハッ!回復しか出来ない貴方に言われたくはありませんね!良いでしょう、では貴方の騎士団と私の魔法師団、どちらが強いか試してみますか?」
「私は視察しに来たのであって戦闘をする為に来た訳ではありません。主旨を履き違えないで頂けますか?ですが、そうですね。では貴方が絶賛した彼と闘うのは如何でしょうか?」
そう言うと聖女ライムは俺の方を指差した。
まぁ元よりそのつもりだったから別に良いんだけどさ。
どうすんの?叩きのめせばいい訳か?
「ほぉ、彼一人でですか?私は構いませんよ。貴方はそれで良いですか?グランディオ殿」
「ん?まぁ良いんじゃない?有象無象が何匹いようが関係ないし」
俺もマークを煽って様子を見る。矢張りプライドが高いだけあって俺の発言に相当キレているようだ。
「・・・後悔しない事ですね」
そう言うとマークは、第一魔法師団全員を俺と対峙させる。
1対21、こちらに勝ち目が無いと思うのが普通だ。
この状況を作り出した聖女ライム本人も、少し焦っていた。
「(ああは言いましたが、この人数差、幾ら彼でも全員相手となると・・・)」
「大丈夫だから、ちゃんとゼロの動きを見ていた方が良いですよ」
イーゼルのその言葉を聖女ライムは直ぐに理解する事が出来なかったが、その言葉の意味を身を以て知る事となる。
「いつでも良いぞ。始めてくれ」
「その余裕、叩きのめして上げましょう!」
マークのその言葉を皮切りに、魔法師団は一斉に魔法を放つ。
火属性魔法やら水属性魔法など、様々な属性魔法を俺にぶつけて来る。
実はこの戦法、魔物だけではなく対人戦闘にも有効である。
相手がどの魔法を使うのか分からない場合、取り敢えず異なる属性の魔法を放ち、その適正を見極める。
悪くない作戦だが、それは相手の使える属性が少ない時に限る。
全属性保持者の俺には、その作戦は無意味だ。
だから俺はお返しに、同じように異なる属性の魔法を与える。
全属性を同時に。
「『全属性八門総砲』」
この一撃で魔法師団全員が沈黙、流石に全属性では対応する事は出来なかったようだ。
ま、当然だな。
「ま、まさか・・・全ての属性を、同時に・・・?」
何だまだ倒れてなかったのか。
流石魔法師団の長を名乗るぐらいだからな。
と、思ったがこの一撃で心が折れたのか、起き上がって来る事は無かった。
つまらん。
「はぁ、目的は果たした。じゃあ戻るか」
俺が戻ろうとした時、聖女ライムが俺を呼び止めた。
「魔法師団は皆上級魔法使い、それをあんなにあっさり、更に全属性保持者、貴方は一体何者ですか?」
聖女ライムは俺を訝しみながらそう問いかける。
いやそんな目をされたって本当の事を言うつもりは無いが。
まぁ適当に答えておこう。
「これでも(見かけは)白金ランク冒険者だからな。それより俺が言うのも何なんだが、そこで倒れている奴らを回復しないのか。聖女何だから出来るんだろ?」
「ええ、私の能力は《回復》、聖女たる所以ですから。まぁこの方達ににはお灸を据える為にもう少しこのままでいさせましょう」
うぉ、中々えげつない事言うな。
結局俺達は倒れている魔法師団を放置したまま訓練施設を後にした。
〜ライム視点〜
魔法師団を放置し、イーゼル陛下とグランディオ首相と別れた後、私は聖母アルマ様に召還され、聖母の間へと伺った。
それにしてもあのゼロ=グランディオという男。
私の騎士団があれ程苦戦した魔物相手に一撃で、それも2km先から、更に今回の魔法師団に対する圧倒的な力量差。
一体彼は何者なのだろうか。
先程は良い様に逸らかされてしまいましたが、いつかその正体を白日の下に晒したいものです。
そんな事を考えながら聖母の間へと入り、聖母アルマ様の御前で跪く。
「聖女ライム、貴方に勅命を奉じます」
私は聖母アルマ様から奉勅を賜った。
しかし、その内容は絶好の機会であり、苦渋の決断を強いるものだった。
一瞬で出番が終わる魔法師団www
あ、次回は閑話です。