第122話 神は最高神と邂逅する
はい、第122話ですー。
神聖アーク帝国の話は、予定ではあと2話で終わります。
こんな感じであとザンザルヴェート王国とエグゼディア神皇国を・・・ネタ持つかな?
ちな邂逅の意味は偶然出会うではなく、会うべくして会うの方です。
邂逅するのは神だけなのか?
条約の署名が終わると、アルマは念話で聖女ライムを呼び戻すと、ライムが来る前に元居た場所に戻り、白いカーテンを閉め、俺達が最初入って来た状態と同じに戻した。
数分後、ライムがここに戻って来て、俺達を一瞥する事もなく、アルマに向かって「聖女ライム、只今戻りました」と言うと、アルマは落ち着いた声で「グランツ王国との条約を元老院で批准しなさい」と命令した。
元老院とは、聖女を議長とする諮問機関であり、こういった条約の批准も元老院で行われる。
イーゼルが署名した条約書をライムに渡すと、ライムは一瞬俺を睨みながらその場を後にした。
俺が一体何をした?
「さてと、イーゼル。俺とアルマは話があるから、席を外してくれないか?」
「うん、分かった。じゃあまた後で」
イーゼルは何かを察したのか特に何も言わず、聖母の間の外へと出ていった。
そして俺とアルマの2人だけとなった聖母の間で、アルマは再び白いカーテンを開け、俺達はお互い向かい合って目を合わせる。
「さてアルマ、生憎俺は転生してから1年しか経っていない。直近の100年と、不死神から俺の転生後200年の事は聞いている。その間に何があったのか、詳しく教えてくれないか?」
俺がそう尋ねると、アルマは申し訳なさそうな表情をしながら、俺の質問に応えた。
「・・・そうですね。ではまずは我が国、神聖アーク帝国の成立について話をしましょう」
ルーヴァー暦204年、最高神アルマ=ト=イエロは一通りの仕事を終え、彼女の故郷イエルダム、当時の地名で言うファリクスへと戻っていた。
創造神との協力により、人間族の数は徐々に回復していき、各地に国を興せる程、規模は大きくなっていた。
当時の人間族にとっても尚、神族は伝説の象徴であり、場所によって信仰されていた神はそれぞれ違っていた。
その時には既に殆どの神族は滅んでおり、一部の高位の神族しか残っていなかった。
当時の人間族にとって我々神族は生みの親であり、生き残った神族が信仰の対象となるのは必然であっただろう。
アルマは超級神族の最高神であり、俺、絶対神の右腕でもある。
アルマは自らの正体を隠す為に、聖母アルマとして最高神を信仰対象とする国家、神聖アーク帝国を建国した。
この時から他の超級神族とも絶縁となり、アルマ同様身を隠したと推定される。
アルマは神の言葉を伝える者、聖母として皇帝に即位し、神の言葉を遂行する者として聖女と言う役職を作った。
以降君臨すれども統治せずとして、首相職である聖女がこの国を回していき、現在に至る。
「つまり、アルマは殆どそこから動いてないと言う事だな」
「殆どではなく一切動いてないですね。基本的に外交なども聖女を筆頭に行っていたので、今回だってイーゼル国王自らいらっしゃらなければ、こうやって会話する事は無かったでしょう」
「動いてないって事は、その間に何があったどうかなんて把握出来ない訳か」
「ずびばぜん絶対神ざま〜お役にだでず〜」
「泣くな」
グズっているアルマを宥めながら、俺は聖女から報告とか無かったのかを訊ねた。
アルマ曰く、国家の緊急事態やアルマ本人に仕事がある以外では滅多に報告は無いとの事だった。
抑アルマに報告する事すら恐れ多いのだとか。
だが当代の聖女ライムだけは特別で、アルマから直接指示を受けたりするらしい。
まぁそんな事は良くて、アルマはここ1800年程外に出ていない為、俺にとって重要な情報は得られなさそうだな。
「あっ、でもグランツ王国に関わる事で1回報告があったような」
「!アルマ、聞かせてくれ」
「確か、エデンズワール王国が滅び、新たにグランツ王国が勃興した、って言う報告がありましね」
「エデンズワール王国・・・それって今から大体100年前の話だよな」
「ええ、100年程前の報告です」
成程、グランツ王国建国以前の歴史が抹消されている理由は、このエデンズワール王国に関係がありそうだな。
まぁこれは後で調べておこう。
もしかしたら他の国では記録が残っているかもしれないからな。
俺がそんな事を考えていると、アルマから俺にある提案を持ち掛けられた。
「絶対神様、宜しければウチの魔法師団を見ていって貰えませんか?」
「魔法師団?何でまた」
「実はいつの間にか、魔法のレベルが極端に低下していて、今では上級魔法が最強とか言われる程に」
そっちもか、矢張り世界全体で魔法レベルが下がっているようだ。
確か神代の初級魔法が現代の上級魔法レベルだったよな。
初級とか上級とか全く考えずにポンポン撃ってたからその辺の常識抜け落ちていたな。
「今、ライムに連絡してイーゼル陛下をお呼びしていますので、3人で視察?みたいな事をして、序でに魔法師団の心を折って貰えませんか?最近魔法師団の傲慢さが酷いと、ライムから報告を受けていまして」
「んー、まぁそう言う事なら問題ない」
「ありがとうございます、絶対神様!」
少し経ち、イーゼルから準備出来たと連絡があり、俺はアルマにまた来ると伝えると、聖母の間を後にした。
アルマは1800年間一歩も外に出ず・・・
果たして運命か、謀略か