第120話 神は聖女と出会う
お待たせしました、第120話です。
ちょっと表現が思い付かなかったりすると中々進まないんよね。
結局ルナは信仰都市フェイスブルクでお土産(食べ物)を買い、馬車の中で頬張っていた。
そして2時間程馬車に揺られ、昼前には目的の神聖アーク帝国首都イエルダムへと到着した。
イエルダムは教会の総本山があると言う事で、フェイスブルクよりも豪華で純白の街が広がっている。
何処もかしこも真っ白なので、太陽光の反射で街中がキラキラと輝いているような印象を受ける。
俺達は首都に入る手前で馬車を止め、準備を始める。
俺は特にする事は無いのだが、首都に入る時は、前の街とは違い、冒険者ではなく国王一行として入るので、イーゼルは正装に着替え、ルナとカーシャは王章旗を掲げる準備をする。
首都に入る時は問題無いが、聖城に入城する時は正式な形をとらなければならないからな。
因みに俺が今着ている私服だが、俺の私服=正装なので、俺はこのままである。
他の皆の準備が終わり、首都の門で衛兵に冒険者カードを提示して、首都の中に入る。
首都の中心には聖城ライトメアが聳え建っており、その放射状に大通りが整備されている。
その大通りは各方角へと伸びており、俺達が入って来た南門にも伸びているので、正面にある聖城ライトメアが良く見えている。
そのまま馬車を進め、聖城ライトメアの城門前まで移動した。
「ここより先は聖城である。冒険者が何用だ?」
城門の警備に就いている衛兵が俺達、と言うより馬車を引いているヴェレアスにそう言った。
そう言えば馬車は冒険者仕様だったな。
衛兵の声を聞いたルナとカーシャは馬車を降り、王章旗を掲げ、「私達はグランツ王国外交使節団ですわ」とカーシャが言うと、衛兵は「これは失礼致しました、どうぞお入り下さい」と、聖城の門を開け、中に通してくれた。
中に入り馬車から降りると、いかにも聖職者という格好をした少女が出迎えていた。
「ようこそ神聖アーク帝国へ、グランツ王国国王陛下並びに外交使節団の皆様。今回の会談を受け持っております、聖女ライムと申します。会談は午後を予定しておりますので、来賓室へご案内致します。どうぞお寛ぎください」
聖女と名乗るその少女はそう言うと、一礼した。
俺達も礼儀として、聖女ライムに対して自己紹介を行った。
「気遣い有難うございます。私がグランツ王国国王兼外務卿、イーゼル=グランツです」
「俺はグランツ王国大閣、ゼロ=グランディオ伯爵位だ」
「私はグランツ王国ベルナリン伯爵家令嬢、カーシャ=ベルナリンですわ。今回はこの外交使節団の護衛を務めております」
「私はルナ=エルサーラです。カーシャと一緒で護衛担当です!」
「我はヴェレアス=グランディオ、ゼロさ・・・"ゼロ"の兄で護衛担当である」
ヴェレアス、お前ゼロ様って言いかけたな。
そういやヴェレアスは俺の兄って設定だったな。
普通に忘れてたわ。
自己紹介を終えると、聖女ライムに来賓室へと案内され、会談の時間まで持て成しを受ける事になった。
「そうだ、ルナ、カーシャ、ヴェレアス。会談の最中は暇だろうから観光にでも行くと良い」
俺がそう提案すると、ルナとカーシャは目を輝かせながら「いいの?」という表情を見せるので、再び了承すると、2人は喜びながら燥いでいた。
「ヴェレアス、2人の護衛を頼んだ」
「うむ、我に任せるが良い」
こうしてルナ、カーシャ、ヴェレアスは首都の観光へと向かった。
その後、俺達は聖女ライムに会談が行われる場所へと案内される。
「ん、そう言えば会談の相手って誰なんだ?そっちの外務卿?」
「いえ、幾ら外務卿を兼任しているとはいえ、国王陛下自らいらしているので、こちらの外務卿なんて出せませんよ」
「ふーん、一応こっちは国家元首と首相だから、そっちも同じって事か?」
「はい、国家元首は神聖アーク帝国皇帝にして聖母、アルマ様が。首相は私、聖女ライムが務めております。着きました、こちらです」
聖女ライムが扉を開けると、神々しい光と共に純白の光景が目に入る。
奥には白いカーテンが掛けられており、その奥に人影が見える。
「こちら、聖母の間となっております。聖母アルマ様はこの場から動く事も顔を出す事も禁じられておりますので、ご了承頂けると幸いです」
聖女ライムがそう言うと、奥にいた人影が立ち上がり、一歩前へ出て挨拶する。
「お初にお目にかかります。私が神聖アーク帝国皇帝、聖母のアルマと申します。本日は遠い所から態々お越しくださり有難うございます」
聖母アルマは一礼すると、俺達もまた一歩前へ出て挨拶する。
「グランツ王国大閣、ゼロ=グランディオ伯爵位だ」
「グランツ王国国王、イーゼル=グランツです。こちらこそ、このような会談を設けてくださり有難うございます。それにしてもこの部屋は素晴らしい装飾ですね」
「ほう、お分かりになるとは流石ですね。この部屋の装飾には様々な宝石が配われております」
確かに周りを見渡すと、ルビーやサファイアだけでなく希少なダイアモンドやアレキサンドライト等が散りばめられている。
しかも照明の光と屈折によって、聖母アルマがいる所には神々しい光が降り注いでいた。
「・・・成程。まさに聖なる光、聖光だな」
俺のこの発言は周りから見れば至極普通の感想だと捉えられていたが、聖母アルマだけは少し顔を顰め、訝しむのだった。
次回、章のタイトルを回収します。