第118話 神は添い寝される
ネムイ(´・ωゞ)
~ライムside~
神聖アーク帝国・聖城ライトメア・聖女の間、聖女ライムは数分前に届けられた手紙を読んでいた。
「・・・そうですか、無事討伐出来ましたか。それにしても原因不明の攻撃、ですか・・・」
ライムは自国の騎士団にA級の魔物の討伐を依頼していた。
本来ならばライムも同行するのだが、直近にグランツ王国との会談を控えている為、こうして騎士団を送り込んだのだ。
「誰の攻撃かは分かりませんが、全滅必至だった状況に一矢を放ってくれたのは感謝しかありませんね」
その代わり騎士団には厳しい指導が必要ですね、とライムは謐くと、手紙を引き出しに仕舞った。
~ゼロside~
俺達は神聖アーク帝国に入国し、最初の街であるホーリーグラードに到着した。
ホーリーグラードは別名輪中都市と言われ、2つの川が交わる所に都市があるのだ。
その川は天然の要塞にもなっており、もしグランツ王国と戦争になっていたとしても、ここで足止めを食らっていただろう。
入口での検問を終えると、まず俺達は冒険者ギルドへと向かった。
理由は勿論、黒虎を換金する為である。
「ようこそ冒険者ギルドホーリーグラード支部へ!本日はどのようなご用件でしょうか!」
受付嬢が元気な声で接待する。
俺は冒険者カードを提示しながら、用件を伝える。
「黒虎の換金だ。今は異空間収納に入っているが、ここで出しても良いか?」
「えぇ!?異空間収納を使えるんですか!流石は白金ランクですね・・・あっ、勿論出しても構いませんよ!」
受付嬢は俺が異空間収納を使える事に驚きつつも、俺の要求を許可する。
そう言えば異空間収納って確か消失魔法だったな。
こう言った反応を見るのも懐かしく感じる。
まぁそれはそれとして、俺は異空間収納から2体の黒虎を取り出すと、受付嬢は鑑定を始めた。
暫くすると、鑑定が終わったのか、買取り金額を提示する。
「はい、2体合わせて2万リコルですね!状態が良かったので、少し多めに査定しました!」
「ああ、それで構わない」
「ありがとうございました!」
俺は受付嬢から金貨2枚を受け取る。
因みに基本冒険者ギルドでは大陸共通の通貨が使われる。
なので単位は何処でもリコルであり、通貨価値も同じである。
冒険者ギルドがいつ出来たかは知らないが、どの国でも共通なのは便利である。
「はい、報酬」
俺はルナとカーシャに金貨1枚ずつ渡したが、ルナとカーシャは困惑した表情を俺に見せる。
「ゼロ様、宜しいのですか?」
「そうだよゼロくん。私達だけが貰って」
その反応に俺は謙遜し過ぎだなと思いつつ、2人に諭した。
「いや、2人が倒したんだから当然だろ?それに、俺らは余裕あるから」
俺がイーゼルに顔を向けると、イーゼルはそれを肯定するように頷いた。
イーゼルは王家なので金には困らないし、俺もなんやかんやで相当な金額を持っている。
いつもは異空間収納の中に放り込んであるので正確な金額は分からないが、10億(白金貨10枚)は確実にある。
「有難う、ゼロくん!」
「有難うございます、ゼロ様!」
2人は金貨を貰った事より、俺から受け取った事に喜んでいるようだった。
そういやカーシャは伯爵家にルナは大商家だったな。
2人とも小遣いは貰っているだろうし、俺らの中で一番金持ってないのはヴェレアスだな。
そんな事を考えつつ、俺達は冒険者ギルドを後にした。
そして、時間も時間なので、今日はこの街で泊まる事になった。
今は冒険者だとは言え、国王がいるのにボロ宿には泊まれないという事で、この街で最も高い宿に泊まる事にした。
高いと言っても他より銀貨1枚分多いだけなので、対した違いは無いが。
俺達は宿の受付に行き、5部屋空いているかを尋ねた。
「申し訳ございません。現在混み合っておりまして、シングル1部屋とダブル1部屋しか用意出来ません」
それを聞いたイーゼルは、悪い顔で俺達に提案した。
「じゃあシングルには僕とヴェレアス、残りはダブルって事で」
悪魔のような提案にルナとカーシャは顔を真っ赤にして反応する。
「え?え?ゼ、ゼロくんと、い一緒に・・・?」
「ゼ、ゼロ様と同室・・・?!」
2人は顔を手で隠し、照れ照れしている。
そこは男女で別れないのかとイーゼルに問いたが、イーゼルは呆れた表情で、あーそう言えば君はそう言う事に関しては皆無だったね、と溜息を吐いた。
まぁ別に俺は眠る必要ないし、ヴェレアスは竜形態にすればベッド必要ないし問題無いか。
俺はイーゼルの提案に乗り、受付の人に伝え、宿代を支払うと、部屋に案内して貰った。
「ごゆっくりどうぞ」
受付の人がそう言うと、鍵を渡して戻っていった。
部屋の中に入ると、割と広い部屋で設備が良く整っているが、ベッドは1つしかない。
良く見ると枕が2つある。
「あっ、ダブルってそう言う。ベッドじゃなく枕の数ね」
そう言うのはダブルとは言わないのではと思っていると、ルナとカーシャは更に顔を真っ赤にして、ぶつぶつと呟いている。
「ゼロくんと同じベッド・・・ゼロくんと同じベッド・・・」
「ゼロ様と同じベッド・・・ゼロ様と同じベッド・・・」
そんな2人の反応を見て、俺は眠る必要が無いから寝ないと言うと、2人は一緒に寝てと懇願する。
結局俺が真ん中で、2人は両側に添い寝する形となった。
2人は布団に入ると、俺の腕を抱き枕に眠りにつく。
「むにゃむにゃ・・・ゼロく~ん・・・えへへへへ」
「ゼロ様~・・・離しませんよ~・・・」
「・・・俺、動けねぇ」
2人は寝言を言いながら俺の腕にスリスリしてくる。
結局朝まで抱き着かれていたので、俺は全く動く事が出来なかった。
次の次で神聖アーク帝国首都に到着する予定です。
聖女ライムや聖母アルマの正体を予想してみてください。