第117話 神のパーティーは初戦闘する
日本語が合っているのか不安になってくる。
流石世界最高難易度の言語。
俺達は要塞の街、ノーザングランデを後にして神聖アーク帝国へと馬車を進めた。
当然国境には関所がある。
そこには国境を通過しようとしている冒険者や商人で列をなしている。
俺達は一応冒険者として入国するつもりなので、普通に列に並んでいた。
関所に着くと、俺は冒険者カードを提示すると、関所の衛兵が俺達に依頼と忠告をした。
「これは冒険者の方々にお願いしている事なのですが、最近国境付近でB級の魔物の発生が相次いでいましてね。もし宜しければ、討伐して頂けると幸いです。ですが稀にA級も混ざっているので、十分気を付けてくださいね」
「忠告感謝する。基本的にエンカウントしたら倒すつもりだ」
「ありがとうございます。では、良き旅を」
関所を問題なく通過し、俺達はついに神聖アーク帝国へ足を踏み入れた。
まぁ、馬車の中だが。
それにしてもB級の魔物ねぇ。
魔物のクラスとか考えないから一瞬何の事を言っているのか分からなかったわ。
確かB級は複数の冒険者がちゃんとした装備をして勝てるレベルで、A級はギルドが大規模討伐隊を組んでギリギリ勝てるレベルだっけか。
「ねぇねぇゼロくん。衛兵の人と何話してたの?」
ルナが興味津々で尋ねてくる。
ルナ達は馬車の中にいたので俺と衛兵の会話の内容は聞こえなかったのだろう。
「大した事じゃない。最近この辺にB級の、稀にA級の魔物が出るから気を付けて討伐してくれって話だ」
俺がそう回答すると、ルナとカーシャは驚いて声を発した。
「「B級!?それにA級!!??」」
ああ、そう言えば昨日ルナ達は最初の冒険者講習的な物に参加してたな。
その時聞いたんだろうか。
「ゼロ様、だ、大丈夫なのですか?B級でも危険ですのにA級なんて・・・」
「だ、大丈夫だよカーシャ。もし魔物が来てもゼロくんが倒してくれるから」
「いや、俺は戦わないぞ。戦うのは2人だけだ」
「「ふぇっ!?」」
ルナとカーシャは素っ頓狂な声を上げ、目を丸くしている。
「俺が戦ったら意味ないだろ。一瞬で終わる。あとヴェレアスも俺と同じ理由で戦闘には参加しない。イーゼルもB級程度だったら1人でも倒せるだろ?」
「まぁ、前あった魔物暴走がA級だったし、B級くらいなら大丈夫かな」
「と言う訳だ。2人とも魔物相手には初戦闘だろ?慣らしておかないと国王なんて守れないだろ。ほら、丁度良い所に魔物だ。前方70m先に2体、2人で討伐してみろ。2人の実力なら大丈夫だ」
「うーん、ゼロくんがそう言うなら!」
「分かりましたわ!2人で魔物を倒してきますわ!」
馬車を止め、2人は前方にいる魔物と対峙した。
俺とイーゼル、ヴェレアスは後方で待機しながら、2人の戦いを見守る事になった。
「あれはB級の黒虎かな?それにしてもゼロ、初めての魔物討伐は普通D級かC級だよ?いきなりB級で本当に大丈夫かな?」
「まぁ、大丈夫でしょ」
「適当だなぁ」
後ろでごちゃごちゃ喋っている間に2人は魔物に向かって攻撃を開始した。
「『墜ちる彗星』!」
「『鳥兜』!」
ルナは両手で魔法を発動させ、魔物に彗星を墜とすような魔法を放つ。
カーシャは魔法でトリカブトを出現させ、その毒で攻撃している。
2人とも厳しい戦いになるだろうと思っていたが、そんな事はなく、その初撃で魔物を倒した。
「「え?」」
「そりゃそうだろ。片や彗星、片や猛毒。耐えられる魔物はいないって。まぁ何はともあれ初戦闘で初勝利だな」
俺が褒めようとすると、2人はナデナデを要求してきた。
仕方なく撫でると、数秒で顔が蕩けてきていたので撫でるのをやめた。
その時、俺は異様な気配を感じ、その方向に振り向く。
大体2km先だろうか、恐らくA級の魔物だ。
纏っている瘴気の量が桁違いだ。
更に言うと、その魔物と誰かが戦闘中である。
一向に気配が薄くならない為、殆どダメージを与えられていないように感じる。
このままでは全滅だろうな。
介入するつもりは無かったのだが、その魔物がこっちに来ても困るしな。
俺は銃剣ラグナロクを取り出し、狙撃モードにする。
そして俺は片手で2km離れた魔物に向かって狙撃する。
今回俺が撃ったのは集束の魔弾だ。
被弾と同時に複数の魔弾が爆散する。
俺は大量の魔弾を浴びた魔物の気配が消えるのを確認した。
「え?ゼロくんどうしたの?」
「ゼロ様?何かあったのですか?」
2人は俺を心配していた。
それもそうだろう。
いきなり銃剣ラグナロクを取り出し、何も無い所へ向かって発砲したのだから。
「ああ、ちょっと目障りな魔物がいたからな。気にするな」
魔物の討伐を終えると、黒虎の死体を異空間収納に仕舞うと、馬車に乗り、神聖アーク帝国首都イエルダムへと向かっていった。
~???side~
突然目の前にいた巨大な魔物が倒れた事により、戦闘中の騎士達は唖然としていた。
「い、一体、何が起こったんだ?」
どこからか魔力が猛烈な早さで近付いて来ると思ったら、その魔力が魔物を貫き、一瞬にしてA級の魔物を倒したのだ。
援軍かとも最初は思ったが、何処にも人がいる気配はない。
まさか2km先からの狙撃だとは夢にも思わないだろう。
「と、兎に角、怪我人の手当を!あと、ライム様にも報告を頼む!」
「了解しました!」
返事をしたその騎士は鳥の魔獣を召喚し、足に手紙を括り付けると、帝都がある方向へ向かって、鳥を飛ばした。
それを見ながら命令をした騎士は、安堵反面、底知れぬ恐怖に苛まれる事になった。
2km先の片手での狙撃、まさに神の芸当。
と思ったが、特殊な条件下ではあるが約180kmの距離の狙撃を見てしまったので、凄さが薄れる。