第116話 神達は呆れる
大学が始まったので通学中にちょこちょこ進めます。
ノーザングランデのに着いた俺達は食堂で昼食をとる事になった。
乗ってきた馬車を繋ぎ場に停め、店内に入る。
イーゼルは国王としての服装ではなく、あくまで冒険者としての服装をしているので、店内にいた客達にイーゼルの事に気付いた者は誰も居なかった。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
接客の女性がそう尋ねると、早速注文を始めた。
「えっと、私はオムライスにハンバーグにそれに~、食後に特大パフェ!」
「ルナ、どれだけ食べるのですか!あっ、私はパスタをお願いします」
「我はこの''牛丼'''と言うものを頼む。人間の料理というものが如何な物か、我、楽しみである」
「うーん、じゃあ僕はこのトンカツ定食をお願いするよ。ゼロはどうする?」
「俺は珈琲で」
「かしこまりました。少々お待ちください」
注文を受け取った接客の女性は駆け足で戻り、注文を伝えるとすぐに別の客の注文を承っていた。
「ゼロくん、珈琲だけで大丈夫?お腹すかない?」
「ああ、俺はあまり食事を取らないからな。逆にルナはそんなに注文して、全部食えるのか?」
「大丈夫だよ~」
注文した料理が届くと、各々食事を始めた。
ルナに関しては割とデカいオムライスとハンバーグを美味しそうに頬張っている。
「ふぉれ、ほっへほほいひい」
「飲み込んでから話なさい。でも確かに美味しいですわね」
「うむ、非常に美味である」
「ここは貴族も訪れるほど有名な食堂らしいね。これ程美味しいなら納得だよ」
4人が賛美している中、俺は珈琲を啜る。
うん、確かに美味いわ。
久しぶりに良い珈琲を飲んだな。
因みに俺が飲んでいる珈琲はブラックである。
時間が経ち、それぞれ食事を終える中、ルナは特大パフェを頬張っている。
普通にデカい。
その量をよく食えるなと思う。
「ふぅ~、美味しかったぁ」
ルナはお腹を擦りながら満足そうな表情をする。
勘定を終え、食堂を出ようとしたその時、店内にいた1人の男が突然叫んだ。
「あぁ?売り切れだと?巫山戯るなよ!俺はこれを食べる為に態々足を運んだんだぞ!」
「も、申し訳ありません・・・」
男は怒鳴りながら接客の女性に文句を垂れ流す。
口論はヒートアップし、ついに男は女性の胸倉を掴んで脅迫した。
「たかが平民の分際で貴族様に歯向かえると思うなよ!こんなボロ店、すぐにでも潰す事だって出来るんだからな、あぁ?」
「ほ、本当に申し訳ございません・・・で、ですが」
「あ?口答えすんじゃねぇ!」
男がその女性に手を上げようとしていたその時、イーゼルが男の手を掴んでこう一蹴した。
「たかが貴族の分際で、か弱い女性に手を出すなど言語道断だ!」
男は女性の胸倉から手を離し、イーゼルに詰め寄る。
「あぁ?冒険者の癖に生意気な事言ってんじゃねぇぞ!俺はこのノーザングランデの領主、伯爵家の息子だぞ?冒険者如き、父に頼めばすぐに潰せるんだからな!」
「え?領主?伯爵家の息子?」
イーゼルは素っ頓狂な声を上げ、困惑する。
「なあ、イーゼル。まさかとは思うが、コイツ知らないのか?」
「えー・・・平民は兎も角、流石に貴族には知られていないと困る、というかダメなんだけど」
俺達が困惑、というより呆れていると、男は俺達が怖気づいたと思い調子に乗り始めた。
「ああそうだ、土下座して許しを請うなら、特別に許してやらんでもない。俺は貴族だ。平民は貴族の靴を舐めてれば良いんだよ!ハッハッハッハッハッ!!」
イーゼルは呆れて物も言えなかった。
俺は溜息をつくと、ルナとカーシャに''アレ''を持って来るように頼む。
ルナとカーシャは状況を理解し、馬車に積んである''アレ''を取りにいった。
イーゼルも諦めたように溜息をつくと男と対峙してこう言った。
「君、貴族の癖に僕の事知らないんだ」
「あ?誰が貴様の事を?一々平民の顔なんざ覚えてられるかよ!ほら、早く土下座しろ!土下座!土下座!」
この光景を見ていた他の客は目を逸らし、関わらないようにしている。
コイツに関わるとロクな事にならないのを知っているようだ。
今日だけじゃなく、他の日も同じような事をしていたに違いない。
「ゼロく~ん!持ってきたよ~」
「ゼロ様~!持ってきましたわ~」
2人が''アレ''を手に持ち、駆け寄って来る。
「じゃあ、それを掲げてくれ」
俺の指示を受け2人は''アレ''、もとい''旗''を掲げた。
それを見た男は顔を真っ青にして絶句した。
「え?・・・そ、そ、それは・・・王家の紋章・・・」
2人が掲げているのはグランツ王国の王家の紋章が描かれた旗、王章旗だった。
本来は神聖アーク帝国の聖城に入城する時用に用意した物だったが、別に使用制限なんて物はないので、遠慮なく使わせて貰った。
そして、イーゼルは男にこう言い放った。
「知らないようなので、自己紹介を。僕はグランツ王国国王イーゼル=グランツだ」
男は冷や汗をだらだら流しながら身を竦める。そしてここで俺が駄目押しの一発を与える。
「あ、因みに俺はグランツ王国大閣、ゼロ=グランディオ伯爵位な」
国王と大閣に喧嘩を売ってしまった男は先ほどの態度から一転、謙って謝罪した。
「も、も、も、申し訳ありません・・・こ、国王陛下とは知らず」
「あっ、そう言うの良いから。君の家には調査を入れる事にしたから覚悟しておいてね」
イーゼルは怪しい笑顔を浮かべると、男はその場にへたれ込んでしまった。
突然の王章旗掲揚と国王陛下登場に店内がざわめき始めた為、俺達は食堂を後にした。
後日、ノーザングランデの領主の数々の犯罪が明るみになり、息子共々断罪された。
なお不敬罪も含まれている事は言うまでもない。
イーゼルはあまり表舞台には出ないので、知らないのも無理はない?かも。
いやでも国王の顔ぐらい覚えとけよ。
《告知》
以前、新しい物語を投稿しようかなとかほざいていましたが、漸く構想が固まったのである第5章開始と同時に投稿しようかなと思います。まぁ第5章なんてまだまだ先なんで気長にお待ちください。