第113話 神達の閑かな話
閑かな話、つまり閑話です。
単純に思い付いた若しくは後から付け足したような話なので、閑話という形で残しておこうかなと。
〈イーゼルの受難〉
グランツ王国国王、イーゼルは執務室の机にぐったりと臥せていた。
「うーん、本当にどうしようかな?」
イーゼルは未だに決め倦ねていた。
国家公安卿を誰にするのかを。
ゼロが首相職である大閣に任命させてしまったので、国家公安卿の適任者がいなくなってしまったのだ。
国家公安卿は警察だけでなく公安をも司る他の卿相よりも圧倒的重要な卿相である。
迂闊に選べば、自身の命が危うくなるほどだ。
「全く、何でゼロはこんな役職を作ったんだよ」
イーゼルは国王なので権限を使えば強制的にゼロに国家公安卿になるようにする事も出来るが、そんな事を勝手にすれば何をされるか分からない。
ゼロ本人はそんな事考えてもいないのだが、イーゼルは絶対神の使徒として認められている以上、出来るだけ神の意思に背く事は出来ないと考えているのだ。
イーゼルの受難は続く・・・
〈ルベスシューター家の存亡〉
代々枢機卿、今は神祇卿であるが、その家系であるルベスシューター家は窮地に陥っていた。
その理由は前国王が暗殺され、前枢機卿の悪事が明るみに出てしまったからだ。
ルベスシューター家は信仰という能力を持っているという理由だけで、現在も辛うじて神祇卿の立場を維持しているが、それがいつ崩壊しても可笑しくない。
教会の権威は失墜し、全て絶対神の使徒である国王イーゼルに奪われたのだ。
神祇卿は復讐の機会を窺っているが、その機会は二度と訪れないだろう(意味深)。
〈不死神の改装計画〉
初めてゼロが不死の遺跡最下層に現れ、不死神と再開した後、不死神は嘆いていた。
「折角絶対神様ガ居ラシテ下サッタノニ」
不死神は辺りを見渡す。
遺跡の最下層だけあって薄汚れており、絶対神であるゼロを出迎えるには相応しくない場所だった。
「・・・改装スルカ」
不死神は次にゼロが来るまでに遺跡の最下層を綺麗にしておくのだった。実際綺麗になってた。
〈不老不死〉
数いる神族のうち、不老不死なのは超級神族以上の神族と不死神のみである。
なので、当然ゼロ=絶対神は不老不死である。
しかし、不死神や超級神族とは決定的な違いがある。
不死神や超級神族は''不老不死''という固定された状態を持っている、と表現出来る。
一般的に言う不老不死はこれを指す。
だが、ゼロは''不老不死を操る''のだ。
つまり、いつでも不老、不死を解除、付与出来るという事だ。
現在のゼロは11歳である為、最盛期である20歳までは程遠い。
なのでゼロは不老不死のうち、不老のみを解除してある。
その為、不老を再付与しない限り、ゼロは成長し、普通に老いるのだ。
そして不死を解除すれば、ゼロは絶対神であろうと死ぬ事が出来る。
絶対神は全てにおいて他を超越する存在、それ故絶対神に不可能があってはならない。
たとえそれが死であろうとも。
〈ヴェレアスの日常〉
朝
「Zzz」
昼
「Zzz」
夕
「Zzz」
夜
「Zzz」
〈ベルナリン家の信条〉
一般的に貴族の家に生まれた者には12歳に婚約者を決める慣習がある。
故にクラスメイトの殆どは12歳を越えているので、皆婚約する者がいる。
それが当然なのだ。
しかしベルナリン家の令嬢、カーシャ=ベルナリンは12歳になっても婚約していない。
それは何故か。
何故なら、ベルナリン家は婚約自由という信条がある。
つまり、政治的な婚約ではなく、自分が愛した者と婚約する、その時期に年齢は関係ないという事だ。
その為カーシャはゼロと出会うまで婚約者がいなかったのである。
〈カーシャの真意〉
カーシャが初めてゼロを見たのは入学試験の時、ゼロが圧倒的な魔法で的を破壊する瞬間である。
カーシャ自身貴族である為、当然平民如きに興味など無かった。
多くの者がゼロの放った魔法に釘付けになる中で、カーシャはゼロの魔法だけでなくゼロ本人にも釘付けになっていた。
「・・・ゼロ、様」
つまり、カーシャはゼロに一目惚れしたのである。
カーシャは当時13歳で婚約者はいなかったのだが、ベルナリン家の信条に愛した者と婚約する自由が認められている。
カーシャはこの時から既にゼロをマークしていたのだ。
しかし、ゼロの隣にはいつもルナ=エルサーラがいる。
商家もまた基本的には貴族と同じく、12歳には婚約者は決めているが、ルナもまたカーシャと同様婚約者はいなかったのだ。
カーシャは暫くはゼロに話し掛ける事が出来なかった。
当時はまだゼロの力を認める者はおらず、貴族であるカーシャが平民のゼロと接する事は貴族と平民の関係を揺るがしてしまう。
しかしカーシャのもどかしい日々はある日を境に一変する。
ゼロが魔導祭で優勝し、名誉爵位を授かったのだ。
カーシャは告白する事を決意したのだった。
「ゼロ様、私と婚約して頂けませんか?」
〈退屈な授業〉
ゼロとイーゼルはその立場ゆえ学園には普段通ってはいないが、当然授業はある。
そして学園に通っているルナやカーシャも当然授業を受けなければならないのだが・・・
ゲールノーア学園1年Aクラス、彼らにとって普段の授業は退屈極まりなかった。
それもその筈、彼らにとってその授業の内容はゼロから教えて貰った事の足下にも及ばないのだ。
Aクラスの全員がゼロが創ったクラブに所属しており、たまにゼロから魔法を教わっていたのだ。その魔法は現代で言う上級魔法以上、ゼロにとっては初級だが。
一方1年の授業で教わるのは精々中級から弱い上級程度。
授業の内容は既にゼロから教わっている上に、全員が修得している魔法を今更教わった所で意味ないのだ。
そして今日も退屈な授業が始まる・・・
〈神の暗殺〉
これはゼロが前国王を暗殺してから数日後の話である。
「そう言えばゼロ、どうやって前国王を殺したの?」
イーゼルはどうして前国王が死んだのかを知らない。
頭から血を吹き出して死んだ事は確認しているがその原因は不明なのだ。
だから世間一般では絶対神の神罰として処理された、というより処理されるようにしたのだ。
「ああ、イーゼルは知らないのか。つか、自分の父親なのに''前国王''って言うんだな」
「犯罪者に慈悲は無いよ」
「あ、そう。で、どうやって殺したかだよな」
ゼロは銃剣ラグナロクを取り出し、イーゼルと見せる。
「これは・・・剣?」
「このままだとな。銃剣ラグナロク、狙撃モード起動」
ゼロがそう言って魔力を流すと、剣の形をしていたラグナロクは狙撃銃の形になる。
「これは狙撃銃と言ってな、この銃口から魔力弾を発出させる物で、遠距離から攻撃出来る武器だ。そもそもこの時代に銃なんて無かったからな。暗殺するには丁度良い」
「へぇ、そんな武器を何時の間に。と言うか僕が言うのも何だけど、ゼロって人を殺す事に躊躇とかあるの?あと殺人は一応犯罪だよ」
「は?躊躇?ある訳ないだろ。それに殺人が法で禁止されていようが、俺には関係ない。超法規的措置だ」
「うん、まぁそう言うと思ったよ。超法規的措置ね、うん・・・」
超法規的措置なんてあったら何でも出来るよね、と思ったが、そう言えば絶対神だから何でもアリか、とゼロの力を再確認するイーゼルであった。
次回キャラ名鑑を投稿して第3章は完結です。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
第4章ではついに恒久の王権が始動します。
お楽しみに!