第109話 神は報告する
久しぶりにルナ、カーシャ、ヴェレアスが登場します。
現在、王城のイーゼルの部屋に俺、イーゼル、ヴェレアス、ルナ、カーシャが集まっている。
何故ここに集まっているのかと言うと、パーティーについての報告と十帝に関する報告をする為である。
いや、学校行ってるんだからそこでやれよ、と思うかも知れないが、今は絶賛冬休み中なので、学校はやっていないのだ。
「なんか、緊張するね」
「そうですわね、何故でしょう?」
ルナとカーシャは初めてイーゼルの部屋に入ったので緊張しているようだ。
それもその筈、イーゼルの部屋とは国王の執務室である。
普通そんな所に一般人はおろか、貴族でさえも立ち入る事は滅多にない。
「そりゃあ、国王の部屋だからな」
「ちょっと、その言い方だと語弊が生まれそうなんだけど?」
イーゼルの冷静なツッコミをスルーし、俺は話を始めた。
「取り敢えず、話を始めよう。先ずは、パーティーについて。イーゼル、ルナ、カーシャは4月に冒険者となり、俺が作ったパーティーに加入する。今後、このパーティーで冒険者活動をするって感じだ」
「あ、前以て作ってくれたんだ」
「ああ、そうしないと、色々と面倒な事になる。国王陛下がパーティーを作った、と騒ぎになるだろう。だから予め作っておいたパーティーに加入する事にすれば、そこまで騒ぎにはならんだろ(希望的観測)」
あくまで予想である。
実際はどうなるか分からんが、エルカには口止めしておいたし、そう大した事にはならないと信じたい。
「ゼロくん、ゼロくん。そのパーティーの名前は決まってるの?」
「ああ、イーゼルが考えろって言ってきたから、ちゃんと考えてやったぞ」
「何か僕が強制したみたいに言わないでよ」
実際には出来れば考えておいて、と言われただけである。
呆れているイーゼルを余所に、俺はパーティー名を発表した。
「俺らのパーティー、それは''恒久の王権''だ」
恒久の王権、国王が所属するパーティーに相応しい名前となっている。
「へぇ、思ったよりいいじゃん!」
「うん、格好いい!」
「ゼロ様のパーティーに相応しいネーミングですわ!」
カーシャはちょっと違うが。
何はともあれ、割と好評そうで良かった。
「この''恒久の王権''は俺をパーティーリーダーとして、イーゼル、ヴェレアス、ルナ、カーシャの5人パーティーとなる」
「ねぇ、ゼロくん。ずっと思ってたんだけどさ。ゼロくんの隣にいる人って、誰?」
ルナはヴェレアスを指差してそう尋ねる。
カーシャもそれに頷く。
そう言えばルナとカーシャはヴェレアスとは初対面だったな。
「ああ、こいつはヴェレアス。風龍で、俺の従魔?みたいな奴だ」
「ん?ああ、我はヴェレアスだ宜しく」
ヴェレアスは目をパチリと開けて、ルナとカーシャに挨拶する。
こいつ、立ったまま寝てやがったな。
「えぇぇ!?龍!?この人が!?」
「うむ、我はゼロ様の眷・・・ゴホン、従魔である。普段はこうして人の姿になっておる」
「そ、そうなのですか。・・・流石ゼロ様!龍までも従えてしまうとは!」
ルナとカーシャはヴェレアスが龍だという事に相当驚いているようだ。
・・・いやカーシャは(以下略
「ゼロくん、本当に龍なの?見た感じ人間にしか見えないけど」
「高位の龍だと人の姿に出来るからな。それに龍だという事は他言無用な。一応俺の兄という設定で冒険者登録してあるから」
「「分かった(分かりましたわ)」」
「あ、ヴェレアス。普段寝てる時の状態に出来るか?」
「うむ、了解である」
ヴェレアスは俺の指示で小さい龍の姿に変身する。
「この姿がどうしt・・・」
「「可愛いい!!(可愛いですわ!!)」」
「うぉ、何をする!ちょっと待っ・・・」
ヴェレアスがルナとカーシャにナデナデされている。
それも高速でナデナデされている。
ヴェレアスも最初は抵抗したが、徐々に諦めていき、最終的には満更でもない様子だった。
その様子を適当に見ていると、イーゼルがこそっと尋ねてきた。
「ねぇゼロ。良かったの?二人にヴェレアスが龍だって事教えて」
「まぁ、一緒に行動するからな。先に教えておいても損は無いだろう。寧ろこれで龍としても動かせるしな」
「ふーん。そう言う割にヴェレアスが神龍である事は隠すんだね」
「流石に神龍を使役出来る人間なんて居ないだろ。それこそ、そういった能力を持っていなきゃ・・・」
いや、何故俺はそう考えたんだ?
神龍を使役出来る人間は居ない。
だが、そう言った能力を持っていれば使役出来るのか?
完全に矛盾してるな。
確かに考えてみれば分かる事だ。
最初の人間族は火炎、大海、暴風、万雷、大地の能力で、例え他の神が子孫を残す為にその人間族と交わったとしても、必ずどっちかの能力、若しくは混ざった能力が顕現する筈だ。
ルナの星光やカーシャの花卉ならまだ分かるが、ライトの設計やブラントの修繕なんか全くルーツが分からん。
つまり神由来の能力ではないという事、人間は使役出来ないものであっても、使役出来る能力は存在する。
そんな偶然あんのか?
・・・はぁ、また懸念が増えたな。
一体俺が転生してから何があったんだよ。
これはいち早く不死神のような他の神と再会しないとな。
「ゼロ?どうしたんだ考え込んで」
「いや、何でもないさ。それよりルナとカーシャはまだ撫でてんのか」
俺とイーゼルはルナとカーシャに撫でられ続けるヴェレアスを見て、微笑ましく思うのだった。
ゼロは能力について疑問を持ち始めました。
そりゃそうだろ、一体どんだけの能力があると思っているんだ、と。
次回はそれを検証します。