第106話 神の運命と選ばれし者''十帝''(前編)
雪と凍結で電車止まるのやめてほしい
(本音:いいぞもっとやれ)
翌日、俺は冒険者ギルドへとやって来ていた。
イーゼルにパーティー名考えろとか言われたからちゃんと考えてきてやったぞ。
そんで以てイーゼル、ルナ、カーシャが冒険者になる前に、俺とヴェレアスで前以てパーティーを作っておく事にしたのだ。
そうすれば、4月に一々新規申請しなくても、既にあるパーティーに加入という形を取る事が出来る。
冒険者制度って意外と複雑なんだよな。
まぁそんなこんなで、さっさとパーティー登録をしておこうって話だ。
「おはようございます!ゼロ様!」
受付嬢のエルカが元気良く挨拶する。
「おはよう、ギルド本部長居るか?」
俺がそう尋ねると、エルカは何かを確認する素振りを見せると、俺の所へ戻ってきた。
「申し訳ありません。本部長は只今出張中でして、何かございましたら、伝言を預かりましょうか?」
出張中?
何だ居ないのか。
パーティー登録の件で色々話しておきたい事もあったが、まぁエルカが後から伝えてくれりゃ別に良いか。
「ああ、頼みたいが、ここじゃマズいな・・・」
俺が辺りを見渡すと、ギルド内はいつも通り、冒険者で溢れかえっている。
流石にここで国王の話をするのはマズいだろう。
「でしたら、別室がございますので、そちらで伺います。こちらへどうぞ」
エルカに促され、別室へと赴く。
そこで俺はパーティーの件について話を始めた。
「パーティー登録をしようと思うんだが、国王陛下も参加する」
「はい、パーティー登録の件ですね!・・・え?今何と?」
「国王陛下も参加する」
「こくおうへいか?・・・えェェェェ!?!?」
「そんなに驚かんでも」
エルカは座っていた椅子から転げ落ち、腰を抜かしている。
「こ、こ、こ、国王陛下も参加するんですかぁ!?」
「4月になったらな。それで前以て俺がパーティー登録をしておくって事だ」
「ふぁぁぁ、わ、分かりましたぁ。ゼロ様は既に白金ランク冒険者ですので、特に制約はございません。こちらにパーティー名をご記入くだしゃい」
あ、噛んだ。
驚き過ぎて気が抜けたみたいだな。
俺はエルカから渡されたパーティー登録用紙にパーティー名を書く。
俺が考えたパーティー名は・・・
~ザンダside~
俺がパーティー登録をしている頃、冒険者ギルド本部長のザンダは中立都市という所に来ていた。
中立都市とは、何処の国にも属さず、中立を保っている都市の事である。
中立都市では、主に国家間の講和条約が結ばれる事が多く、冒険者ギルドの総司令部もここ中立都市にある。
現在ザンダは冒険者ギルド総司令部から呼び出しを受けている。
それは年に1回行われる、各国の冒険者ギルド本部長が一斉に集まる冒険者ギルド総会に出席する為である。
冒険者ギルドは中立都市の総司令部、各国の首都に設置してあるギルド本部、各国のあらゆる都市に設置してあるギルド支部に分けられており、ギルド本部長が集まるこの会議は、非常に重要なものとなっている。
ザンダが冒険者ギルド総司令部本会議場に入ると、既に他の各国のギルド本部長が集まっていた。
暫く待っていると、冒険者ギルド総司令部総裁、即ち冒険者ギルドのトップが会議場に入って来た。
「皆知っていると思うが、初対面の者も居るので自己紹介をしておこう。私が冒険者ギルド総司令部総裁、レヴン=ディソウナウドだ」
レヴン=ディソウナウドが挨拶を済ませると、早速会議が始まった。
会議と言うが大した議題は無く、いつもは報告や細々とした決議程度であり、今回もそうであるとザンダは思っていた。
しかし、最後の議題は冒険者ギルド、いや国家にとって重要且つ重大なものとなる。
「次が最後だな。議題は''金剛ランク''についてだ。この議題は非常に重要な物だ。心して聞くように」
全員に緊張が走る。
今までどうでもいい、と言ったら語弊はあるが、そう言った議題だらけだったので、急に真面目な話になると皆強張るのだ。
「金剛ランクは現在はおろか、数十年に一人たりとも存在していない、言わば伝説のランクである。私は各国を廻り、あらゆる冒険者を見てきた。現在、金剛の下の白金は冒険者全体の1%にも満たないが、人数で見るとかなりの数だ。金剛ランクは全ての冒険者の憧れであり、目標とする者も多い。そこで白金ランク冒険者上位10名を選抜し、それを金剛ランクとする。この順位は毎年の査定で変動し、完全な実力でのみ上へと這い上がれる。そしてその金剛ランク冒険者は、''十帝''として活動する事になる。ここまでの話で何か質問はあるかね?」
衝撃的な話で誰もが1度固まったが、総裁の呼掛けに何人かのギルド本部長が質問をした。
「ガザイア王国本部長、キロシュ=ボーアです。その''十帝''ですが、総裁自ら指名なさるのですか?」
「良い質問だ。今回のみ私が選ばせて頂いた。それ以降は総司令部の選抜チームによって順位を査定していく予定だ」
「選ばせて頂いたという事は、既に?」
「うむ、この会議終了後、私が選んだ''十帝''が所属するギルド本部長に''十帝''指名書と新しく作った金剛ランクの冒険者カードを同封した封筒を渡そう。戻ったら各自渡してくれ、その封筒の中に''十帝''に関する特別な説明書もあるので、必ず読むように」
最初の質問が終わり、次に手を挙げたのはザンダだった。
「グランツ王国本部長、ザンダ=フリューセルです。その''十帝''と言うのは、具体的にどういった存在となるのでしょうか?」
ザンダの質問に、総裁は口を開き、こう発言した。
「最後の手段」
この辺の話、分かりにくそう。