第103話 神はサイコロを振らない(Agartha Wind)
アガルタの風
AGARTHA、これは五側神、いや五崩神の一人、風神シュヴァイツ=アガルタの事で間違いない。
・・・だから何なんだよ。
名前だけ伝えられても分からんわ。
恐らく、俺以外の誰かがこの謎を解き、AGARTHAに辿り着いたとしても、何を表しているのかは分からないようになっているな。
この回り諄さと用心深さは風神の代名詞だ。
神代でもいつもこんな感じだったからなぁ。
さて、結局風神が何を伝えたかったかは後で考えるとして、何故風神がこれを残したのかを考えるか。
時期的には俺の転生前後あたりだが、俺の転生前に風神を含めた五崩神は全員死亡している筈・・・
いや、待てよ?
隕石の落下で一帯が更地になったせいで気付かなかったが、そもそも俺は五崩神の死体を見た訳ではない。
それこそ、風神のみが生きていて、この壁画を残す事も十分可能だろう。
だが、この洞窟内で風神の痕跡があるのはこの壁画のみ、他は一切存在しない。
つまり、風神はこの壁画を残した直後に死亡したという事。
隕石の落下直後、命からがらここに辿り着き、満身創痍の状態になってまでこれを残す意義は何だ?
死体でもあればサクッと記憶を覗いてサクッと解決だったんだがな。
・・・いや待てよ。
じゃあ風の遺跡の最下層にいたアイツは何なんだ。
うーん、風神の配下とかそう言う者だろう。
消滅させたんで確認の術が無いが。
さて、いつまで経ってもここに居る訳にもいかないし、さっさと戻るか。
そして俺は洞窟の最奥を後にしたが、洞窟内を戻っていく途中、俺はふと思い出した。
魔族は何をしにここに来る筈だったのかと。
あの壁画の謎を解く為か?
いや、解けたとしてもアガルタの文字しか出てこないし無意味か。
じゃあ逆にあの壁画を消そうとした?
他の誰かに見られるのを防ぐ為か?
でも今更だよな。
そもそもあんな暗号、神代の知識使わないと解けない筈だ。
陰陽五行説とか、確か陰陽神が勝手に提唱していた奴だし、現代まで残っているとは思えん。
現代の人間に壁画を見られようが絶対に解けない。
つまり、神代では解ける。
だから回り諄い方法を取った。
神代では暗号がバレてしまうから。
そしてそれを魔族が欲した、若しくは消したかった。
魔王は神代の魔族という事になる。
・・・なるのか?
取り敢えず推測はこの辺で区切るか。
後は相手が勝手に動いてくるのを待とう。
一々俺が動く必要はない。
風神には悪いが、放置!
~ガルシア、イーゼルside~
ゼロが洞窟の最奥に居る頃、王都の門はガルシアとイーゼルによって辛うじて持ちこたえていた。
しかし、ゼロが大元(魔族)を倒すまでに相当の数の魔物が出現しており、いつ王都の門を破られてもおかしくない状況だった。
「だぁぁぁ、クッソ!!どんだけ居やがんだ!」
ガルシアが剣を薙ぎながら叫ぶ。
「うん、だけど数は増えなくなった!ゼロが大元を絶ったんだろう!」
イーゼルは魔法を放ちながら叫ぶ。
二人の発言はここで止まった。
そこまで会話している余裕は無かったのだ。
増える事は無くなったが、それまでに出現した魔物は全勢力で向かって来ており、二人を含め、王都防衛に充たった冒険者や軍はかなり疲弊していた。
更に、数は減ってはいるのだが、それが目に見えて分かる事は無く、士気も下がっていた。
イーゼルが国王として皆を鼓舞し、ここまで戦ってきたが、それも限界が近付いている。
「国王陛下!もう直ここは陥落します!直ぐに戻って体制を立て直しましょう!」
そう言ったのは王宮警察官、古い呼び方では近衛兵だ。
彼ら王宮警察の任務は国王を含む王族の護衛だ。
彼の判断は仕事としては正しく、そして理にかなっている。
そもそも国王自ら前線で戦う事自体、歴史的に見ても異例なのだ。
国のトップが前線で倒れれば、瞬く間に国は崩壊するだろう。
しかしイーゼルはその判断を却下した。
何故ならイーゼルは信じていたのだ。
この状況を打破できる救世主、いや神の存在を。
あけましておめでとうございます。
今年も順調に更新できるように頑張ります!
因みに「神はサイコロを振らない」はあと1話で終わります。
それから章のタイトルにもなっている「十帝」の話をして第3章が完結します。
そこで一旦区切りとして新しい物語の投稿を始ようかな?
或いは普通に第4章が始まるかも知れない。
予定は未定、そして不定。
何はともあれ今年もよろしくお願いします!
by Absolute ZERO