第102話 神はサイコロを振らない(Yin-Yang And The Five Elements)
陰陽五行説
カイザーの家の地下にあった扉、そこにはこの壁画と同じヘレネス文字が刻まれていた。
そしてその中にあった額縁の文章、それと同じ文章が書かれた手帳。
更に今気付いたがこの洞窟の最奥の地形、先日攻略した風の遺跡の最下層とほぼ一致している。
これが関係ないとは思えない。
俺は異空間収納から例の手帳を取り出し、文章を眺める。
月に始り、日に終る
創造により生まれし物は
月は光を揺るがし
木は陽を開かせ
火は玉を衡る
土は天上の権力となり
金は天上に幾多の王を擁し
水は天上で王を凱旋させ
日は天上の中枢となる
我は神の言葉によって伝える
月日は樸を示し
木と火は伍をなし、土は参る
そして残りは日と重なる
その言葉は我の鍵となるだろう
恐らくこの文章がこの壁画の謎を解く鍵だ。
俺は己の頭脳をフル回転させ、思考する。
〈月に始り、日に終る〉
つまり、月から始まって最終的に日に行き着くという事か?
確かに下の文章を読むと、月から始まって日で終わっているが。
・・・ん?
この月、木、火、土、金、水、日の並び順、最初と最後を除けば木、火、土、金、水。
これは陰陽五行か?
〈創造より生まれし物〉は陰陽相生、木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じ、水は木を生ず。
この順と一致している。
そして月と日を加えれば7つ、北斗七星の数と一致する。
つまり壁画のα、若しくはηから始まって月、木、火、土、金、水、日の順に当て嵌まるという事か?
だが、αかηどちらが月か分からん。
・・・北斗七星、確かそれぞれの星に名前が付いていたな。
・・・あぁ、そういう事か。
〈月は光を揺るがし〉
これは北斗七星のη、''揺光''のアルカイド。
〈木は陽を開かせ〉
これは北斗七星のζ、''開陽''のミザール。
〈火は玉を衡る〉
これは北斗七星のε、''玉衡''のアリオト。
〈土は天上の権力となり〉
これは北斗七星のδ、''天権''のメグレズ。
〈金は天上に幾多の王を擁し〉
これは北斗七星のγ、''天璣''のフェクダ。
〈水は天上で王を凱旋させ〉
これは北斗七星のβ、''天璇''のメラク。
そして〈日は天上の中枢となる〉
これは北斗七星のα、''天枢''のドゥーベとなる。
北斗七星は七曜の星とも呼ばれる。
それを陰陽五行と掛けたんだろう。
・・・回り諄い。
まぁ確かに天枢は元々太陽の意があるし、天璇も青い星の意があるから間違っちゃあいないんだが、それだけだろ。
はぁ、もう何となく予想は付くが、〈我は神の言葉によって伝える〉
これは神代語だろう。
〈月日は樸を示し〉
これは月、揺光のアルカイドと日、天枢のドゥーベだ。
これを樸に示す。
即ち、北斗七星のヘレネス文字をそのまま示す。
つまり月はηのH、日はαのAとなる。
次に〈木と火は伍をなし、土は参る〉
これも言葉遊びレベルだが、星の名前を神代語に直した時、木と火は綴りの五(伍)番目、土は三(参)番目を示せって事だろう。
木のミザールは、Mizarで五番目の文字はR、火のアリオトは、Aliothで五番目の文字はT。
んで、土のメグレズは、Megrezで三番目の文字はG。
〈そして残りは日と重なる〉
これは金のフェクダと水のメラクは日のドゥーベと同じ条件で考える。
つまり両方とも日のドゥーベと同じA。
そしてこれらの文字を並び替えた時、〈その言葉は我の鍵となるだろう〉
俺はこの文字を見た時、見事に予想は的中していたなと思った。
そもそもこんな回り諄い事考える奴はあいつしかいない。
出て来た文字は、H、A、R、T、G、A、A。
そしてこれを並び替えた時に出て来る言葉は・・・
AGARTHA
これ考えるのにクソほど時間が掛かった件について。
多分もうやらない。