第101話 神はサイコロを振らない(The Big Dipper)
北斗七星
俺が渓谷に降りると、人が1人入れるかどうかの穴、もとい洞窟があった。
俺は周辺の岩を破壊し、洞窟の中に入る。
その洞窟の中は手付かずの未開地で、様々な鉱石が多く露出していた。
「へぇ、こんな所があったとはな。ぱっと見大鉱脈だ。他の誰かに見つかる前で良かったな」
俺がここをその内私有地化しようかなと考えていると、案の定魔物が襲い掛かってきた。
こういった洞窟は漏れなく魔素が充満している。
魔物にとっては最適な繁殖ポイントと言えるだろう。
よってここに居る魔物の数は尋常じゃない。
面倒なので俺は一瞬で倒す事にした。
「『死の予言』」
俺がそう''告げる''と、襲ってきた魔物だけではなく、奥に居る魔物まで、洞窟内全ての魔物が絶命した。
この魔法は、対象の死の未来を反映させる事が出来る。
尤もその対象が確実に死を迎える状況にないと使えないのだが、俺がこの魔法を使わなくても全ての魔物を一掃している筈なので、その未来を反映させたという事だ。
「ざっと400体ってとこだな。結構居たな、広いのか?」
俺は探知魔法で洞窟内を検索する。
魔物が400体近く居た事もあってかかなり広い。
その洞窟の中で最も開けた場所がある事を発見した。
洞窟の最奥にあり、恐らくここに何かあるだろうな。
俺はこの洞窟の最奥に向かって、途中にある魔物の死体を回収しながら歩き出した。
暫く歩いていると視界が段々と狭くなっていく。
俺の目は夜でもはっきりと見える、所謂暗視だ。
だが、洞窟の最奥に向かって行くにつれて段々と暗くなっていく。
「暗っ!俺の暗視が役に立たない程とか、どんだけ見られたくないんだよ。この暗さじゃ魔族なんて到底見る事なんて不可能だろ」
それは夜の暗さではない。
夜でも多少の光はある。
それを増幅する事によって俺の暗視が成立する。
だが、この洞窟の暗さはまるで宇宙だ。
周りに星の無い、完全に真っ暗な状態だ。
最早宇宙の外とも言える。
「まぁ、宇宙空間のような暗黒ならば、擬似恒星でも出せば見えるもんだ」
俺は真っ暗の中、洞窟の最奥に到達した。
案の定全く見えない。
ここまでは探知魔法を使って来られたが、何かを探る為には光が必要だ。
恒星は太陽のように自ら光を放つ星の事で、宇宙空間において光の象徴である。
『擬似恒星』
手の平の上に光輝く球体を出現させる。
すると、その球体は真っ暗だった空間に光を齎す。
俺は擬似恒星を空中に浮かせると、その光は徐々に広がっていき、数秒後には洞窟全体を照らし出した。
「あ!?何だコレ?」
洞窟の最奥にあった物、それは壁画のような物だった。
バラバラに7ヶ所小さな穴が空いており、その穴の隣に、ヘレネス文字が刻まれている。
その文字は上から順番にα、β、γ、δ、ε、ζ、ηと彫られていた。
「この穴の配置にこのヘレネス文字・・・北斗七星か?」
その穴の配置は北斗七星と同じ配置であり、ヘレネス文字の配置も重なっている。
この壁画が北斗七星を表しているのは間違いないだろう。
「で、だから何だ?この北斗七星は何を意味している?何か他に無いのか」
俺はこの洞窟の最奥内を隈無く探索するが、この壁画以外何も見つからなかった。
仕方ないのでこの壁画について考察しよう。
まずは壁画の年代について、劣化具合から見て、凡そ2000年前からはあったと見れる。
これが俺の転生前か転生後かは分からない。
次に作者について、そもそもこの彫られていた穴と文字は、何か道具を使って彫られた物ではない。
魔法を使ったのだろうが、この壁は異常に硬い。
俺の異次元や核融合でも傷を付けられないだろう。
この作者は相当な力を使ったに違いない。
「これを彫った奴は何の目的があった?そもそも、態々相当な力を使って何故これを作った?後世に残したかったから?だったらこんな洞窟の最奥なんて今日まで見つからなかった訳だし、そもそもここまで来れるのは俺ぐらいしか・・・まさか、俺に残す為?ならば、これにはどういう意味が込められている?北斗七星・・・ヘレネス文字・・・ヘレネス文字?」
俺はカイザーの家の地下の扉にあったヘレネス文字を思い出した。
そして俺はこの壁画の謎の解法に辿り着くのだった。
次回は謎解き。