第99話 神はサイコロを振らない(Bolt Out Of The Blue)
青天の霹靂
二人が剣を構えたまま固まった光景は、明らかに異様だった。
観客達もその光景に戸惑い、何が起こったのかと騒ぎ出す者も出始めた。
しかし、その答えは直ぐに明らかとなった。
「・・・ガルシア、気付いたか?」
俺がそう尋ねると、ガルシアは静かに頷いた。
「・・・ああ、流石にな。審判!試合は中止だ!」
「へ?」
ガルシアがそう叫ぶと、審判は素っ頓狂な声を出し、ガルシアの方へ顔を向ける。
ガルシアは緊迫した様子で審判に叫んだ。
「魔物暴走だ!もう王都の直ぐそこまで来てやがる!」
そう、俺達が感じ取ったのは、大量の魔物の気配、それも王都の入り口の直ぐ近くでだった。
審判はてんやわんやの状態で、ギルド本部長に報告すると言って、その場を後にした。
俺は念話でイーゼルにこの事を伝えると、軍と警察を動かすとして、イーゼルもまたその場を去っていった。
数分後、俺達がいるステージにギルド本部長が上がって来て、観客席にいる冒険者に向かって、こう叫んだ。
「お前らぁ!今年は少し早いが、剣魔祭第2部を始めるぞぉ!目標は王都南部、魔物暴走を停止させるぞぉ!!!」
「「「ウォォォォォォォオ!!!」」」
ギルド本部長の呼び掛けに観客席の冒険者は雄叫びで返し、各々魔物暴走の対処へと向かった。
俺はこの状況の意味が分からず、(°Д°)?的な顔でガルシアに尋ねる。
「ああ、毎年この試合が終わったら、第2部として魔物狩りをすんだわ。憂さ晴らしかどーかは知らねぇが、恒例になってんだよなぁ」
「あー、つまり魔物狩りは元々予定されていた所に丁度良く魔物暴走が起きた、と。起こした奴可哀想」
「あ?起こした?これは人為的なモンなのかぁ?」
この魔物暴走には以前リュケイア辺境で起こった時と同じ、あの緑の合成獣の気配を感じる。
それに王国第2の都市であるリュケイアの次に狙われたのが王都だ。
人為的以外に何がある。
「まぁ取り敢えず、俺は魔物暴走の出所を探す。そこを抑えりゃ魔物暴走は止まるだろうからな。ガルシアは前線で殺りたいだろ?」
「クハハッ、当然だろ!俺が蹂躙してやっから安心して探してこいよ!」
俺とガルシアは拳を合わせ、それぞれの持ち場へと動いた。
~ガルシア&イーゼルside~
「オッラァァァァァ!!エグいな、どんだけ居やがんだ?」
既に魔物は100体以上は倒している。
だが、一向に減る気配はない。
更に悪い事に討ち漏らした魔物が冒険者を倒し、王都に侵入したのだ。
「だぁ、クッソ!王都の門ぐらい守れよ!」
ガルシアは王都に侵入した魔物を倒す為、王都内に戻ろうとする。
するとその時、突然地面が隆起し、王都の門を塞いだ。
「あぁ?一体何が・・・」
ガルシアがふと門の上を見上げると、魔法を発動しているイーゼルの姿があった。
「あ゛?国王陛下!?何やってんだこんなトコで」
「何とは失礼だね。軍と警察を使って国民の避難誘導と、王都内に侵入した魔物を倒しに来たんだよ。今対処しているから君は前線に集中してほしい」
「ハッ、言われなくともそのつもりだ・・・ですよ!」
「・・・いや、無理に敬語使わなくても良いからね?不敬罪とか無いから」
「あ?マジで?じゃあそーするわー。手伝え国王陛下、人が足りん」
「自重はしてよ。まぁ勿論そのつもりで来たんだからちゃんと手伝うよ。『大規模殲滅魔法・地岩海』」
イーゼルが門の上から大規模殲滅魔法を放つと、地面から岩が出現し、海の如く魔物を飲み込む。
「大規模殲滅魔法だと?やるじゃねぇか!だったら俺も、八大地獄第八『無間地獄』!」
ガルシアの魔法による地獄の猛火が魔物を溶かし、一帯の魔物を殲滅する。
だが、これでも魔物の数は減らず、特に緑の合成獣が殺られる前に自爆し、周辺一帯がボコボコになっていた。
「クッ、本当にキリが無ぇな」
「ああ、最早ここまで来ると、ゼロが大元を絶つのを待つしか無いね」
「同感だ!」
ガルシアとイーゼルは再び魔物に向かって攻撃を始めた。
一向に減らない状況で他の冒険者達が困窮している中、二人はゼロの事を信じ、共に戦い続けるのだった。
~ゼロside~
「さて、恐らくこの辺だな」
俺は魔物暴走の起点となっているであろう場所まで飛んできた。
やはり魔の森である。
尚、飛んできたので下の魔物はスルーした。
ガルシア達が何とかするだろ。
「さてっと、魔力探知して・・・あそこかな?はい、予防先制攻撃『異次元』」
俺が魔法を放つと、普段起こり得ない巨大な爆発が起こった。
恐らく何かを爆発させて、俺の魔法を掻き消したのだろう。
今の人間にこんな高度な防衛は出来ない筈だ。
故に、この魔物暴走の元凶は・・・
「やっぱり貴様だったか、魔族」
もっと激しい戦闘の筈なのに文章力無いとここまであっさりするのか。
まぁそこは優秀な読者が優秀な脳で補填すると信じて。