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牡鹿の夢  作者: redzou
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【ヒグマ警報】道が「ヒグマ警報」発令 南区の施設襲撃受け警察や猟友会が大規模捜索・山狩りへ

9/27(日)13時配信 HTV NEWS

 

 札幌市南区の観光施設「SAPPOROもふもふパーク」で男性がヒグマに襲われたとみられる事件を受け、北海道は27日朝、南区全域及び中央区などの一部を対象に「ヒグマ警報」を発令しました。

 これを受け、札幌市は危機管理本部を設置。警察や猟友会と連携し、現場周辺道路の通行規制を行うとともに、ヘリコプターやドローンを動員した大規模な捜索・警戒体制に入りました。

 被害に遭ったとみられる男性の身元確認と連れ去られた可能性のある山林の捜索を進めていますが、加害個体は極めて危険性が高く、周辺に潜伏している恐れがあるとして、猟友会による現地での足取り追跡と即時駆除に向けた準備が進められています。

 市および警察は、現場付近の国道230号線の通行規制及び一帯全域の登山口を閉鎖するとともに、近隣の小中学校や住民に対して屋外活動の自粛や戸締まりの徹底を強く呼びかけています。



【速報】もふもふパーク襲撃 山林で園長の遺体発見 ヒグマは逃走か

9/27(日)17:15配信 TVSニュース

 札幌市南区の観光施設「SAPPOROもふもふパーク」で男性がヒグマに襲われたとみられる事件で、警察と猟友会などの捜索隊は27日午後、施設裏手の山林内で男性の遺体を発見した。

 警察によると、発見されたのは連絡が取れなくなっていた同園園長の男性(48)で、現場の状況からヒグマに襲われ死亡したとみられている。遺体は土や落ち葉などが被せられた状態で見つかった。

 捜索隊は現場周辺で加害個体とみられるヒグマの足跡を確認しているが、ヒグマはすでに山奥へ逃走したとみられ、発見には至っていない。足跡は幅17センチの前足と思われるものが確認されており、専門家によるとこのヒグマは2メートルを超える大型と推定されるとのこと。また獣毛も採取され、明るい茶色であるという。

 警察と札幌市は二次被害を防ぐため、引き続き厳重な警戒体制を維持する方針とのこと。

 


【南区・ヒグマ襲撃】大規模捜索を終了 クマ未発見も「待ち伏せ・警戒」へ移行 住民の厳戒続く

10/1(木)配信 北海道ニュースUHS

 

 札幌市南区で男性がヒグマに襲われ死亡した事件で、警察や猟友会による現場周辺での大規模な山林捜索が、昨日9月30日をもって終了しました。加害個体とみられるヒグマの捕獲・駆除には至っていません。

 警察と札幌市によりますと、遺体発見現場周辺を中心に連日50人態勢で追跡を行いましたが、ヒグマは山奥へ逃走したとみられ、新たな痕跡が途絶えたことから山林内での大規模な連日の捜索に区切りをつけたということです。

 市は本日以降、作戦を「大規模捜索」から、現場付近への箱罠設置やハンターによる定点監視といった「待ち伏せ体制」へ移行します。

 付近一帯の山林では、先月上旬に行方不明となっていた男性と見られる白骨死体が発見されており、採取された獣毛などから、同一個体のヒグマによる被害であるという見方を強めています。

 このヒグマは極めて危険性が高く、周辺に潜伏している可能性が排除できないため、警戒態勢は当面継続されます。市や警察は住民に対し、引き続き夜間の外出自粛や戸締まりの徹底を強く呼びかけています。



【10月4日(日)午後 セイコーマート簾舞店】

「——お孫さん、来てるのかい?賑やかでいいべ」

 店長は笑みを浮かべ、アンパンマンのベビーせんべいやビスコをレジ袋に詰めた。

「まあな……娘がちょっとな」

「……孫はかわいいよな。おれも息子んとこ行くかな」

「ああ?何言ってんだ。店は?」

「最近、さっぱりだ……特に今はヒグマのせいで、国道もガラガラだべや。全然お客さん来なくなったんだわ」

「なに、今だけだって。もうすぐ紅葉見にいくやつらがわさわさ……」

「……うん。だといいけどな。この週末はだめだったわ」

「この店無くなったら困るべや。頑張れや」

「……ああ。香奈子ちゃんによろしくな」


 普段なら、友だちとは言えお客とだべる暇などないはずだった。街中から定山渓へ向かう途中の最後のコンビニという好条件で、このセイコマは繁盛していた。ゴールデンウィークほどではないが、先月のシルバーウィークや今月からの紅葉シーズンは、バイト増員も必要なほどの忙しさだった……例年なら。

 今年は、そのバイトの確保にも苦労した。ヒグマのせいで。

 去年が異常とも思える大量出没だったせいで、子どもがこんな場所で夜遅くまでバイトするのを親が許さないのか。今年は、ヒグマは夏までは少なかったが、秋になってからまた増えてきたと思っていたら、もふパーの事件が起きた。


 園長は常連だった。毎朝、水とサンドイッチや惣菜パンを買って行った。たまに生野菜も買って、動物たちにやっていた。人の良さそうな男だった。それが、ヒグマに喰われて死んだ。

 ニュースで見るまで、店長は園長の年齢を知らなかった。年上だと思っていた。自分より若い者の死……しかも、ヒグマに喰われて。

 

 この事件で、店長は隠居することを真剣に考え始めていた。この店は国道沿いで、山との間には住宅街があり、ヒグマが店まで来るとは考えられなかったが、店の経営に胃の痛い思いをすることに嫌気が差していた。

 

 店長は時計を見た。

 15時。閉店時間まで、まだ8時間もある。

 店長は長くため息をつくと、ホットシェフの売れ残りのチェックを始めた。

 


【検証・南区ヒグマ襲撃事件】駆除からわずか3日後に発生 なぜ牙は向けられたのか 残された「手掛かり」と山林の闇

10/10(土)11:00配信 NHKデジタル特集

 

 札幌市南区で人命が失われたヒグマ襲撃事件から、今日で2週間が経過した。遺体発見後も大規模な山狩りが続けられたものの、加害個体とみられるヒグマの痕跡は山奥で途絶えたままだ。

 今回の事件において、地域住民や専門家に大きな衝撃を与えたのは「直前に行われた駆除」との時間的近さだ。

 

■駆除の3日後に起きた惨劇

 事件を振り返る上で重要な時系列がある。

 23日に小金湯で1頭が駆除された際、地域には一瞬の安堵が広がっていた。しかし、それからわずか3日後の26日深夜、隣接する地域の施設に別のヒグマが現れ、飼育されていたヒツジと、忘れ物を取りに戻った男性を襲った。

 

■人身被害をもたらした個体の危険性

 現場の検証を行った専門家は、今回逃走している個体の特異性と危険性を指摘する。

「建物の壁やドアを破って内部へ侵入し、人間を襲って遺体を山林へ引きずり込んで埋める行動は、明確な執着性と危険性を示している。9月23日に駆除された個体とは別に、この地域にはすでに人間を恐れない巨大な個体が潜伏していたことになる。ヒツジではなく、人間の遺体を持ち去った点にも注目している。この個体が示す執着性は非常に強い。我々人間にとって、大変危険であると思わざるをえない」

 警察と猟友会は遺体発見後、新たな痕跡を見つけられず、奥深くに広がる山塊の中でヒグマの足取りは途絶えた。現在は大規模な捜索隊は撤収し、引き続き監視と箱罠による「待ち伏せ作戦」がとられている。

 新情報が途絶え長期化する恐れもあり、現場周辺には今も重苦しい緊張感が漂っている。

 

 

【10月12日(スポーツの日)22時過ぎ 簾舞、豊平川河川敷】

「えー、私は今、札幌市南区の山林に来ております。ここは、そう……例の、もふパー人喰いグマ襲撃事件の、すぐそばの山林になります……いかがですか……街灯なんかありません。北海道の大自然、そのど真ん中に、私1人で潜入して、ライブで配信しております……」


 小声で抑えた口調だったが、その内容は大袈裟で、誇張されていた。そこは自然の中なのは間違いではなく、画面には綺麗な星空と、鬱蒼と茂る草木しか映っていないが、ほんの少しカメラの角度を変えれば、住宅街の街灯や、少し先には国道を行き来する大型車のヘッドライトや電飾が映るだろう。国道の向かいにはコンビニもある。


「えー、私はですね、自然を愛するインフルエンサーとして、日々活動を続けておりまして、たくさんの皆様からご支持を賜っている者としてですね、昨年から続く……クマ騒動、と言いますか、それにその、ひとこと物申したいと、常々思っておりました。今回、機会をいただきまして、こうして単身、乗り込んで来たというわけです」


 チラチラと周囲に目を配りながら、自称インフルエンサーの男は、カメラアングルに細心の注意を払いつつ、少しだけ背後の木陰に後退した。配信撮影用のライトが、連なるニセアカシアの木々を明るく照らした。


「えー、今にも……クマが出そうな森ですね……私が万一クマに襲われたら、その時はみなさん、私の命は自然の源として土に還ったと……私の常々言ってきたことを実行したんだなと、思ってください……いや、ぶっちゃけ、喰われるのは嫌ですけどね?やるならこう、一撃でやって欲しいですね、ははは……」


 男は声を潜めてヘラヘラしながら、さらに一歩後退した。あと数歩で、背中が木の幹にぶつかりそうだった。マイクが、カサカサと葉が触れ合う音を拾った。


「……はい。今のは風です。風の音ですねー、そよ風。クマじゃありません。あとこの後ろの方には、川も流れてるんですよ。そのせせらぎも、もう少し下がれば聞こえるかもですねー……行ってみたいと——」


 男の動きがピタリと止まった。硬直したかのように、振り向き掛けて斜めになったまま。

 目だけをカメラに戻して再び喋り始めた男の声は、囁くように小さかった。


「……みなさん……今ですね……ちょっと、物音が——」


 カサッ。

 突然男は駆け出した。男の靴が土を蹴る音とマイクが空を切る音が、全世界に向け配信された。カメラは激しく揺れ、夜空や地面を交互に写し出した。

 男の激しい呼吸も聞こえた。時折り小さく、やばいっ!とか、うわっ!とかの声も聞こえた。


 男は必死だった。配信中であることも忘れて全力疾走していた。すぐにアスファルトの道路に出て、カメラにはその灰色のアスファルトや街灯や、立ち並ぶ住宅街も映り込んでいたが、もうそんなことを気にする余裕などなかった。泣き言を漏らし、それが配信の音声に拾われてしまっていることも、気がつきさえしなかった。

「——勘弁してください……ママ……助けて……」


 男は数10メートル走り、煌々とナトリウムの光に照らされた国道まで土手を駆け登った。転ばなかったのは奇跡に近かった。

 

 明るい国道に出て、男はやっと落ち着きを取り戻したが、配信を続けられる精神状態にはほど遠かった。配信用照明を切り、スマホのカメラも止めて、歩道で膝に両手をついて荒々しい息を整えた。それからビクビクしながら自分が駆け登ってきた土手の下を見たが、そこにも街灯に照らされた住宅街があるだけだった。


 やがてようやく普通に呼吸できるようになって顔を上げると、国道の向かいの駐車場に停めた自分の車が見えた。

「ふー……ビビった……」

 もう今日は帰ろう。バカだった。こんな命懸けの取材をしなくても、他にもっと安全なネタはたくさんある。うちの近所に出たキタキツネとか、隣の飼い猫とか。


 男は歩行者用信号が青になるのを大人しく待ち、右を見て左を見てもう一度右を見てから、早足で国道を渡ると、セイコーマートの駐車場へと戻っていった。



【同時刻 セイコーマート簾舞店】

 店長は店内から、配信者の男がふらふらと、駐車場にポツンと置かれた軽自動車に戻って行くのを覗いていた。

 今週も、連休だというのにお客は少なく、売り上げもひどかった。もうすぐ閉店という時になってやっとお客だと思ったら、車を置いてどこかに行ってしまった。無断駐車。駐車場は広いから、ひと言断ってくれればダメと言ったことはないのに。

 

 男はそのまま車に乗ったが、すぐには動く気はなさそうだった。エンジンもかけずに運転席でなにかしていた。まもなく閉店だった。外のノボリをしまう時間だ。


 店長は外に出て、ノボリを片付け始めた。セイコーマートオリジナル、北海道ソフトクリームのノボリ。昼間、園田の奥さんが連れてきた孫娘にソフトクリームを手渡した時のことを思い出した。

 2歳か。うちの孫とひとつ違いか。

 

 ノボリを数本まとめて、車の方をチラ見した。まだエンジンは始動していなかった。 

 店長は手にノボリを持ったまま、車に歩み寄った。運転席のドアが開き、男が降りてきた。

「す、すみません、もう終わりですよね……」

「そうですね、11時までなんで……すみませんねえ」

「ソフトクリーム……」

「はい?」

「ソフトクリーム、買ってもいいですか……」

 男は店長が持っているノボリを見ていた。

「ああ。これね?どうぞどうぞ」

 

 店長は男に先立って店の入り口へ歩いた。

 このお客さんは20代か。もしかしたら子どもがいるのか。

 園田の孫娘はお母さんによく似てたな。香奈子ちゃんはなんか調子悪いらしくて、店にも顔を出してないが……あんなかわいい娘がいるんだ。そのうち元気になるだろう。暇なら、またバイト——


 いきなり、衝撃が店長を吹き飛ばした。

 店の陰から突然現れたヒグマが、店長に横から襲いかかった。右前足をひと振りして薙ぎ倒し、店長の後に続いていた男にも左前足の一撃を見舞った。

 男は悲鳴をあげる間もなく仰向けに突き倒され、まだ意識はあったので逃げようとジタバタして、ヒグマにのしかかられた。呻きとも咳ともつかぬ音を立ててもがく男の顔に、ヒグマは鼻息を荒げながら、もう一度右前足を振り下ろした。


 フッ、フッ。

 国道を通過する大型トラックのヘッドライトに、その金茶色の姿が照らし出された。ヒグマは驚いて顔をあげ、ひと声唸ると、男の体を掬い上げるように持ち上げ引き摺って、店の陰に隠れた。


 数分後、トラック運転手の通報を受け、パトカーのサイレンを鳴らして駆けつけた警官が発見したのは、セイコーマートの自動ドアの前で息絶えた店長の無惨な骸、そして、裏手の住宅街のど真ん中を突っ切って山裾へと続く血の跡だけだった。

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