01 転生
初投稿です!投稿頻度は少ないと思いますが、よろしくお願いします。
「マジか・・・・」
窓ガラスに反射して映っている自分の姿を見て、思わずため息をついた。
目が覚めるとなんだかヨーロッパの貴族が寝ていそうな天蓋ベッドの上にいて、飛び起きたところ窓ガラスに自分の姿(?)が見えたのだ。
マッシュショートに近い綺麗なサラサラの黒髪に、透き通るようで尚且つ燃え上がるような赤い瞳。
年齢的には13、14歳ほどだろうか、ろくに食べていないのかかなりほっそりとしていて、いかにも不健康そうな見た目である。
こんな状態でも顔立ちが整っていると思えるのだから、健康なときはどれだけ美貌なんだろうかと少し見とれてしまう。
いや、そんなことよりどうなってるんだ?
自分の見かけは一旦置いておくことにして、顎に手を当てて思考を巡らせる。
通勤途中だったのは覚えている。
寝不足の体をなんとか動かして、ブラック企業に近い労働状況の会社へ足を運んでいたはずだ。
そして信号で足を止めて・・・そうだ、子ども。
俺の横で同じように信号待ちしていた親子。母親が手を離してしまったのか、子どもが走って道路に飛び出してしまったのだ。
危ない、と思ったときにはもう体が動いていた。
迫ってくる車に背を向けるようにして子どもを抱え込んで、そこから記憶がない。
つまるところ死んでからの転生、か。
小説やマンガでは定番のものだがまさか本当にあるとは、しかも自分が体験することになるとは思ってもいなかった。
別に未練なんてものはないが、転生がしたかったわけでもない。
そもそも、この身体の元の持ち主はどうしたのだろうか。
赤ちゃんとして生まれるか、死んだ人の体の中に自分の魂が入るのが俺の中の転生というイメージだ。
さっきから気になる頭の痛みと頭に巻かれている包帯のようなものから推測するに、後者だろう。
10代で命を落とすなんてこの世界は衛生面が悪いのだろうかとも思ったが、この状態からするに頭の打ち所が悪くてそのまま・・・といったところだろう。
俺もまだ20代だったしこれから花ある人生を送るはずだったのにお互い災難だな、とため息をついたが、働き詰め状態から解放されたのは悪くないと思いつつ部屋を見回す。
第一印象は汚い、だった。
壁に飾られている絵画は傾いていて、アンティークランプは誇りをかぶっており、カーテンは色褪せて擦り切れていて見事にもある意味調和がとられている。
高級そうな天蓋付きベッドもよく見てみると少し汚れている上にところどころ欠けている。
なんというか、かなりきつい。
俺はもともと掃除は積極的にする方だったし、アレルギーもあったので埃は見るだけで体が反応するようになってしまった。
この身体がどうかはわからないが、掃除を当たり前とする日本人としても見て見ぬふりは出来ない。
これから生活していくことにもなりそうなので大体の状況が把握できたら一番にやることを掃除だと決める。
今自分にかかっている布だっていつ洗われたか、清潔なのかわかったものでもないし、服だって同様だ。
ちなみに服はパジャマのような柔らかい素材のものだ。
家具ほどは汚れていないから、まあ少しはマシなんだろうと思いつつ、とりあえず情報を集めようとベッドから降りようとすると、窓とは反対の方向でガチャっと音がした。
ベッドから降りるのを一時中断して音の方に視線を向けると、細かな装飾が彫り込まれた木製のドアがゆっくりと開いていく。
まだ自分が誰かもここがどこかも誰が居るのかも、何も把握できていないため少し体がこわばる。
身なり的に一応貴族か何かではあるんだろうが、この部屋の状況からして自分の身分はあまり期待はできない。
加えてこの不健康な見た目なのでなおさらである。
それにまず言葉が通じるのかも怪しい。願わくば異世界転生特権か何かで言語がわかるようになっててほししものである。
ギィ・・・と効果音がつきそうな感じで開ききった扉の向こうから現れたのは一人の男性だった。
前髪を長めに残して後ろを少しすっきりさせたマッシュショートのサラサラとした白い髪に赤いキリッとした鋭く力強い目で、美形と言える顔立ちなのでどこか冷たい印象だ。
そして、猫のようなふさふさの耳と長いしなやかな尻尾があった。
執事服のようなものを身にまとっていて、手にあるシルバートレイにはポットと容器、きれいに畳まれている白いタオルと細い布のようなものがのせられている。
初めて生で目にするそのもふもふに固まった俺を彼の赤い瞳が捉える。
彫刻のような表情に少し驚きが滲み、ドアを開けたまま早足でこちらに近づいてきた。
ベッドの上で思わず後退りする。
普通、知らない人が近づいてきただけでも怖いのに、美形なうえ無表情に近い顔で見慣れない耳と尻尾があり、しかも早足で近づいてこられたのだからなおさら怖いのだ。
「お目覚めになられたのですね。気分はいかがですか?」
トレイをベッドのすぐ側の小さめのテーブルに置くやいなや袖をまくり、ポットのお湯を容器に注いで濡らしたタオルを絞っている。
テキパキとした動作で無駄がない。
幸い言語の壁はなさそうだ。言葉が理解できることに安堵しつつ、俺の言葉も伝わるかの検証も兼ねて日本語を使う。
「だ、大丈夫です。ええと、すみません名前って・・・」
取り敢えず質問の返事をしつつ、こっちからも質問させてもらう。
この耳と尻尾は亜人だろうか。
異世界に来たのだということを改めて実感されられる。
俺は記憶を受け継ぐタイプの転生ではなかったらしく、彼の名前もわからない。
理解が追いついていないが、こういう時は分かっているふりをせずに潔く聞くのが一番手っ取り早い。誤魔化すほど後で面倒くさくなるのは目に見えている。
それに頭を打っているようだから最悪記憶喪失か何かで突き通せるはずだ。
そう思えば彼は一瞬固まって、何かを察したのか絞ったタオルをテーブルに畳んで置き、姿勢を正した。
左手を後ろの腰に、右手を左胸に当てて綺麗な一礼をする。
「私はルード・ジークリトと申します。そして貴方はオリビア帝国第四皇子であるルシエル様であり、私は貴方様にお仕えしている身です。なので敬語はおやめください」
俺が記憶喪失だと思ってくれたのか、丁寧に俺の名前と地位まで教えてくるルード。
視線を再び俺に戻した彼は先程置いたタオルを手に取った。
タオルを何に使うかはわからないが、彼がこの身体の、もとい俺の従者であると分かってそれほど不安はなくなったものの、俺はとても困惑していた。
飽き性だけど続くかな・・・汗




