不眠解消の対価
カーテンの隙間から陽の光が漏れて、いつの間にか部屋が明るくなっていた。こんなに気持ちのいい朝は久しぶりだ。
「んーーーー。よく寝た。」
ナナミは伸びをしてスマホの時計を見た。時刻は十時。寝過ぎて体が痛い。
昨日、シロヤマ神社の境内を出た直後のことだった。それまでの晴れ空が嘘のように、夕立に見舞われた。雨傘の代わりに日傘を差していたら、突風で傘の骨が折れてしまった。あの急勾配の坂で二回滑って転んだ。
何とか自宅に戻り、シャワーを浴びようとしたら、今度はシャワーヘッドが壊れた。幸い、壊れた物とは別に備え付けのヘッドを保管していたのでシャワーを浴びることは出来た。
しかしその後もひどかった。
夕食を摂ろうと食事を運んでいたら、皿を持ったまま何もないところでつまずいて転んだ。食事を床にぶち撒けて、お気に入りの皿は割れた。もう泣きたいくらいの不運続きだった。
それでもベッドに入ると二秒で眠りにつき、三ヶ月ぶりに熟睡することができた。
(今日は家で大人しくしてよう。ご飯もこぼれても片付けが楽なのにしたらいいよね。)
昨日でもう過ごし方のコツは分かった。しばらく不運が身に降りかかるのは避けられない。それなら、せめて被害を最小限にするために工夫してやり過ごすしかない。
そんなことを考えながら、ナナミは食パンに何も塗らず、トーストもせず、そのままかじった。




