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彼女ができたのかもしれない

「最近彼女が出来たかもしれないんだ」


「えっ」


「その子とは同じ学科なんだけれど、毎回隣の席に座ってきて、話しかけてくるんだ」


「水素水要りませんかって?」


「いやいや。”いつもありがとうございます”って」


「なんの感謝?」


「彼女、体調不良で休むことが多くって。だから、講義ノートの写真とかをRINEで送ってるんだ。あと、課題について相談されることもあるから」


「それ、利用されてるだけじゃない?」


「そうなの!?」

妹の言葉に驚く。僕のようなコミュニケーション能力のない人間と違い、友達100人いそうな妹の言葉は、重かった。


「うん。お兄ちゃん、真面目に授業聞くし、真面目にノート取るでしょ?だから、サボりのために利用されてるんだよ」


「……いや、そんなことはない。なぜなら、お礼にランチを奢ってくれる」


「大学の講義90分。その間働いていれば、いくらくらい稼げる?そして、ランチといっても、学食でしょ?」


「……2限、3限入ってるときはそうだけど」


「ね。お兄ちゃん。多分、その子可愛いんだろうけれど、その子が男だったらどう?それはどういう関係?」


「……」


「そしてね。大事なことなんだけれど、彼氏彼女の関係には、普通告白というプロセスが入るの。そうしないのは、相手を食い物にしたいとき。だから、ね。一回冷静になろ?中高男子校育ちのお兄ちゃんが同年代の女子に舞い上がるのは分かるからさ」


妹の優しい声が、心にしみる。

まるで、お風呂のお湯が傷口にしみるように。


「そんな……手を繋いで学外へランチ行ったりもするのに」


「ん?」


「そんなデートみたいなことしたら恋するに決まってるじゃないか!」


「んんん?」


「彼女は、ただ――僕を利用しようとしていただって」


「ちょっと待ってお兄ちゃん」

妹からの静止。


「うん?」


「一旦、整理させて?その子は、講義で隣の席に座ってくる」


「うん」


「そして、講義や課題についてRINEしてる」


「うん。あと、たまに彼女から、こんど、ランチでここ行きませんか?このカフェ一緒に行きませんかってお誘いが来たりする」


「……そして、実際に手を繋いで行く」


「うん。一回目のとき、ナチュラルに手を取られてびっくりして。そしてしばらくしてから、急に顔を赤くして、”つい、女子校時代の癖で手を繋いでしまいましたが、ご迷惑ではありませんか?”って」


「流れ変わった?いや、でもまだ女子校で異性との距離感測りかねてサークルクラッシュタイプかもしれないし……」


「こっちがなんて返せば良いか分からなくて、ただ彼女の手を握る力をちょっと強めて。そしたら彼女も力を強めて。そのまま二人しばらく無言で歩く。なんて青春イベントあったら彼氏彼女でしょう!?」


「それは――お兄ちゃんじゃなくても、脈アリと思うね。でも、それで彼女出来たかもと普通の人はならないけれど」


「ぐっ」


「ここから大事な話。お兄ちゃん。まだ、告白してないし、されてないんでしょう?」


「まだしてない」


「早く告白しな。いつ他の男に取られるか分からないから」


「そうだね!対面が良いかな、RINEが良いかな」


「対面での方がいいよ。ベストはランチやカフェの帰り。次点として、人気のあんまりないところ」


「分かった。ありがとう!」


「万一すでに彼氏が居るとかで、振られたら慰めてあげるから。頑張ってね」


「ありがとう。頑張るよ!」


「うん。よろしい。それで、お兄ちゃん。他に相談しておきたいこととかってある?」


「他――あ、実は彼女の名前が良く分からないんだ。告白するのに、相手の名前が良くわかっていないのは不味いと思うんだけれど、どうすれば良いかな」


「どういうこと!?」

「……お兄ちゃん。その子の連絡先、なんて名前で登録してるの?」


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