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寝取られて壊れた俺、義妹が可愛すぎるから養うことにした ♦︎♦︎♦︎義妹に癒されながらブラック不動産で働くことになった  作者: 白井 緒望


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第94話 聴取


 「ごめん。待った?」


 俺に気づいて、睦月が手を上げた。

 スーツ姿だが、弁護士バッジを外している。


 店内は混んでいて、そこかしこからジュージューと脂が焼ける音がしている。


 「いえ。ちょうど明日はオフでしたから。オールとか大歓迎です!」


 満面の笑み。

 睦月は目を細めると、言葉を続けた。


 「ところで、そちらの可愛い子は誰ですか?」


 「あぁ。前にも会っただろ? 対魔のお守り……いや、後輩の葛城だよ」


 睦月はさらに目を細めた。

 「ふぅーん。あ、春馬先輩の分は奢りますんで! ささ。遠慮なさらず。店員さーん。この男性に極上カルビ4人前!」


 さっそく金の力で来たか。

 つか、むしろ、明らかに年下の葛城にご馳走してやれよ。


 「いや、こっちが呼び出したんだし、俺が出すよ。店員さん。今の極上はキャンセルで。生ビール3つと、普通の上カルビ5人前とサラダをお願いします」


 「かんぱーい」

 理由のない乾杯をした。


 「何か良い事あったんですか?」

 睦月が首を傾げた。


 「いや、特にない」


 むしろ、通りがかりの老人から縁起でもない話を聞かされてテンション低めなんですが。


 すぐにお肉とサラダがやってきた。

 俺は取り分けるために、トングに手を伸ばした。


 すると、睦月にトングを奪われた。


 睦月は、ちゃんと3人分の肉を焼いている。

 えらいえらい。


 「2人はなんで一緒なんですか?」

 睦月は肉を焼きながら、チラッと俺らを見た。

 

 「いや、同じ会社だしね。今日は物件を見てきてさ」


 「へぇ。どんなのですか?」


 「あっ、そうそう。教えて欲しいんだけど、物件の隣に墓地があってさ。そこの木で首吊り自殺があった場合って告知義務あるの?」


 「何年くらい前ですか?」

 睦月はメガネをあげた。

 熱気でレンズが曇っている。


 「40年くらい前。事件があったのは完成前。亡くなったのは作業員らしい」


 「墓地は、マンションの敷地とは別ですよね?」


 「あぁ。もちろん敷地外。どうかな。告知義務ないよね?」


 「一般的論としては、心理的瑕疵には当たらないと思います。ただ、気になるのは、場所が墓地なことかな。つまり、嫌悪施設での自殺がどう判断されるか」


 睦月が肉を口に入れた。

 艶々の唇に、血のような肉汁が滲む。

  


 「グレー寄りになるってこと?」


 「はい。必要なら判例データベースで調べましょうか?」


 「いや、いいや。もう仕入れちゃったし」


 やっぱりそうか。

 ため息が出た。


 正直、これ以上は知るのが怖い。


 「そうですか。力になれることがあったら言ってくださいね」


 睦月は俺と葛城の小皿に肉をのせた。


 「まぁ、なんとかするよ。あと、もうひとつ。睦月が家を買うとして、1LDK53平米、8,000万円の中古マンションってありかな?」


 睦月は手を止めた。


 「ん〜。なしかな。結婚したら手狭だし、しなかったとしても親の面倒みたりとか。先々、1LDKじゃ不便ですし。豪華な1LDKに住みたいなら、賃貸にしますよ」



 「そうだよね。参考になったよ。ありがとう」


 「あっ。春馬先輩との新居なら1LDKでもOKですけど?」

 睦月は頬に手を当てた。

 

 「いや、だから。実家から引っ越す気はないって」


 すると、無心に食べていた葛城が手を止めた。


 「ところで、睦月さんって、なんでそんなに先輩のこと好きなんですか? いや、控えめに言っても、イケメンでもないし、お金なさそうだし。ブラコン妹つきだし」


 控えめとか言うなら、もう少し遠慮してくれ。


 「それは……春馬先輩に助けてもらったからです。わたし大学の頃、ちょっと太ってたし、すごく地味だったから。男子にからかわれることが多くて」


 「ふぅん。それと先輩にどんな関係が?」


 「男子グループに悪口言われてたら、通りがかった春馬先輩が『ダサいことするな』って」


 睦月は俺の方をチラッと見た。


 「そんなことあったっけ」


 覚えてなさすぎて、否定も肯定もできない。

 俺は鼻先をかいた。


 「覚えてなくても良いんです。あっ、春馬先輩。気づいたら終電ないです」

 睦月は腕時計を見ると、なぜか笑顔になった。


 「え? まだ21時だぞ?」


 「家、群馬県で遠いので」


 アプリで検索すると、確かに群馬行きの終電は20:55だった。


 なにこれ。

 ちょっとした終電トラップだ。


 「睦月。車は? ほらピンクの軽自動車乗ってただろ?」


 「さっき急に調子が悪くなって、ディーラーに預けたんです」


 ……ほんとかよ。


 「マジか。どうしよう」


 睦月は、俺の横に来た。


 「そ、その。ホテルでお泊まりとか。ここから100メートルくらい行ったところにありました」


 「あれラブホだぞ? 1人じゃ泊まれないでしょ」


 「だから、春馬先輩が一緒に来てください!」


 腕を組んで胸を押し付けてくる。

 

 柔らかくて、熱が伝わってくる。

 少しだけ汗っぼいグレープフルーツのような香水の匂い。


 頭がクラクラする。

 すると、葛城が言った。


 「わたし、この前、先輩とホテル行っちゃいましたけど」


 「いや、入り口前のベンチで休憩しただけだろ」


 話をややこしくしないでくれ。


 「ひどいっ。わたしの足を開いて、あんなに激しかったのに」


 葛城は、軽く握った右手を口元に当てた。


 「あなたが勝手に開いたんでしょ? エピソードを捏造しないように」


 「春馬先輩っ、それ本当なんですか?」

 睦月が箸をもったまま立ち上がった。


 睦月と葛城が言い争いをしている。

 こうしていると、姉妹みたいだ。


 「2人とも騒がしすぎ。店に迷惑だろ?」

 俺はそう言いつつも、2人を眺めていた。


 2人とも可愛くて優しい。

 俺にはもったいない女の子。


 ……やっぱ、葛城を連れてきて良かった。



 あれ。


 ——最近、柚子のことを思い出しもしない。


 「おれ、なんであんなに柚子に拘ってたのかな」



 本当は理由は分かっている。

 ここにいない、俺の妹のせいだ。


 会えなくなると実感するというが、本当みたいだ。桜藍に会いたい。

 

 

 

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