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俺の能力、便意操作なんだが  作者: ぬふへほ
白守美里の章
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焼き鳥屋のあとなの

それからしばらくあたしは泣いていた


少し落ち着いてきたとき、柊先輩が


「ありがとよ…」


と言った


「俺のためになんとかしようとしてくれたってことだろ?だから…ありがとよ…」


「そんな…だって柊先輩は…」


「俺はいいんだよ。俺は…お前が心配なんだよ…」


心配だって言ってくれた…

それだけでものすごく嬉しい


「お前は確かに成長したよ。強くもなったと思う。でもな……、危なっかしいのは昔から変わってねぇ…。もっと自分を大切にしろ」


「じゃあ柊先輩も自分を大切にしてくださいよ…。スキャヴのことはほっときましょう?それかやっぱりあたしが…」


「ダメだ。スキャヴのことは俺の責任だ。俺がケリをつける」


「イヤですよ!柊先輩がいなくなるなんて…あたしはイヤです」


「大丈夫だって。足で戦ってみるから。一応手は出してないってことになるし」


「またそれですか?ふざけないでくださいよ」


「ハハハ、ふざけてる方がいいんだよ。余裕がありそうだろ?"常に冷静に余裕を持て"だな」


たしかに柊先輩らしいけど

冷静でいられるわけがないよ


「よし。そろそろ帰るか。大将!お会計」


柊先輩はそう言って立ちあがり、お会計をしに行った


「おーい、白守。なにしてんだ?行くぞ?」


あたしもゆっくり立ち上がり柊先輩のところに行く


「お金…いくらですか?」


「バカ!俺にカッコつけさせろよ。約束だったしな」


そう言って柊先輩はお会計を済ませる


「ほんじゃ大将。次はいつになるかわかんねぇけどまた来るわ」


"次はいつになるかわかんねぇ"って…

なんかすごく引っかかる…


もう来れないかもしれないって思っているのかな…

だからあたしを連れてきてくれたのかな…


そんなマイナスなことばかり考えてしまう


「そんなこと言わずに来月あたりにでもまた来てよ」


そう笑顔で言う大将に、柊先輩はただ笑って手を上げ、ドアを開けて外に出た


あたしも大将にペコリとお辞儀をして柊先輩のあとを追う


「先輩。ご馳走様でした…」


あたしは柊先輩にお礼を言った


「おう、約束だからな。さあ帰るか。どっかでタクシーを拾って…」


「イヤです…」


「はぁ?イヤってタクシーがか?」


「帰りたくないです…」


「バッカ、お前……。俺らにはそれぞれ帰る家があるだろ?帰るぞ」


「イヤです……あたしは帰りたくないです」


「お前酔ってるだろ。水もらってくるか」


ただ困らせてるだけ…

どんだけ帰りたくないって言っても、柊先輩はなにもせずにあたしを必ず送り届けるから…


だから少し意地悪してるだけ…


「あぁ、もう…。じゃあ一旦駐車場戻るぞ。お前少し俺の車で休め」


そう言って柊先輩はあたしの腕を掴み、引っ張って歩きだした


さっきの駐車場に戻ってくるとあたし達は車に乗りこんだ


「おい、具合とか大丈夫か?吐きそうなら言えよ」


「全然大丈夫ですよ。それよりさっきあたしの腕引っ張りましたよね?腕より手を握って欲しかったんですけど」


「お前なぁ…。ふざけるなよ…」


「さっき先輩が言ってたじゃないですか。"ふざけてる方がいいんだよ"って」


「そうだけどよ…」


「手……握っていいですか?」


「なんでだよ。カップルじゃねぇんだぞ」


「もしかして手繋ぐのとか恥ずかしいんですか?柊先輩ともあろう人が?あー、だから咄嗟にさっき腕を掴んだんですね」


「そんな挑発にはのんねーよ」


「ケチ」


あたしがそう言うと、柊先輩は笑った

だからあたしも自然と笑ってしまう


ずっとこうしていれたらいいのに…


あたしの中の気持ちがまた溢れてしまいそうになり抑えきれそうにない…


「先輩……」


「ん?どうした?」


あたしは柊先輩の顔を見ると、柊先輩と目が合った


「もし……、先輩がアカリさんと出会う前に…あたしと出会ってたら…なにか変わってました?」


あたしは真っ直ぐに柊先輩を見てそう聞いた


知ってる…バカなことを聞いたって


"なにも変わんねぇよ"

柊先輩はそう言うだろう


それで凹むのも知ってるのに…

どうしても抑えきれなかった…


「そうかもな…違ってたかもな」


柊先輩も真っ直ぐにあたしを見て、予想してた答えとは違うことを言った


それを聞いた瞬間、いろんなものが込み上げてくる


ものすごく嬉しくて…

だからこそ悔しくて…


あたしは涙目になりながら運転席の柊先輩に覆い被さるように抱きついた


柊先輩はなにも言わず黙っていた


あたしはゆっくり顔をあげる


すぐ目の前に柊先輩の顔がある


あたしはゆっくり目を閉じ、顔を近づけると唇が触れた


ゆっくり離し、ゆっくり目を開ける


目の前にいるのが柊先輩だと再認識すると、もう抑えきれなくて


また唇を重ねた


何度も…何度も……


外では街灯が静かに揺れていた





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