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93 厄災

インフィたちはその日のうちに、小さな魔王城へと戻ってきていた。シャリーネも共にいた。


シャリーネ自身は、人に害を与えることを望まないが、人を導こうともしなかった。

「人のことは人が決めるべきだ」と、彼女は常にそう考えていた。


シャリーネにとって、「インフィ聖国」と銘打たれた国が築かれ、インフィの銅像が立てば、それだけで満足だった。

彼女が選んだ十名の指導者たちは、皆おおむね良識ある者たちであり、少なくともドランザーク帝国より悪しき国家にはならないだろう。


──いや、仮にそのような国家に堕ちたとしても、二つの掟さえ守られていれば、シャリーネは口出しはしない。

だが、その掟を破ったときには──天災のごとき制裁が訪れるかもしれなかった。


一方、レイヴァンはというと──

「久しぶりにこの地に戻ったので、しばらく街を見て回ります」とだけ言い残し、それきり戻ってきていなかった。


ヨパラはというと、今では相当な実力者となっており、一人で魔物を倒してはレベルを上げる日々を送っていた。


インフィは最初、フィディアとシャリーネに言った。

「ヨパラさん一人じゃ心配だから、二人で見てて」と。


だがその願いは、「嫌です」のひと言で、見事に同時拒否された。


それでも最終的には、フィディアとシャリーネが交代でヨパラを見守ることになった。

「何かあったら、僕が悲しい」とインフィが訴えると、どちらも無言で頷いてくれたのだった。


魔王と勇者の心が自分の中にあったことを理解してから、インフィはよく笑うようになった。

そして、フィディアとシャリーネに対して、かつては何の感情もなかったはずなのに──

今は、どこか少し違う感情が芽生えてきていた。


それが愛なのか、母への思慕なのか、彼自身にもはっきりとは分からない。

ただ一つ、心に強く刻んでいた。


──「二人は、僕が守る」


そして、守るためには高みを目指さなければならない──と、心が告げていた。


今、インフィはあらゆる魔法を駆使して、高レベル魔物の弱点を突き、次々と瞬殺していた。


ヨパラ(Lv.50)もまた、インフィからいろいろな事を教わり、卓越した水魔法を巧みに組み合わせ、魔物たちを難なく倒していた。

かつて死を覚悟したドラゴン(Lv.40)など、今では彼にとって目を向ける価値すらない存在となっていた。


父──ザルヴェリオス(Lv.55)を超える日も、そう遠くはないだろう。


そして、ヨパラにはレベルが上がるたびに、大きな変化が現れていた。


言葉にすれば──“格好良く”なってきているのだ。


しなびていた肌は若々しく張りを取り戻し、酒で膨れた腹も引き締まってきた。

ただのおじさんに見えていた顔つきも、なぜか整って見えるようになってきた。


レイヴァンによる見た目のアドバイスが影響しているのかもしれない。

あるいは──ヨパラという存在が、“王子ミストファル”として本来の姿へと変化しつつあるのかもしれなかった。


母である王妃リュセリナは、壮年を迎えてなお若く美しかった。

そのあまりの美貌に、「もしかしてエルフでは?」という噂が流れるほどであった。


彼女は短命にして世を去ったが、その血は確かに息子に流れていた。


その変化を見ていたレイヴァンは、同士を失ったような寂しい目をしていた。──あいかわらず、繊細な魔族であった。


「インフィ」という新たな生命体は、変異を遂げようとしていた。


魔王が持っていた魔法体系、勇者が持っていた魔法体系、魔物たちの特性、さらには人が作り出した魔法体系。

それらすべてを、壊しては組み立てることを体内で無限に繰り返した結果、インフィは“インフィ”としての新たな魔法体系を作り出してしまっていた。


それらは「自らの力を証明することで、その力を上げる」という新たな魔法であった。


元証げんしょう:元の道理によって自らの重さ・硬さを上げる


覇証はしょう:覇の道理によって力を上げる


閃証せんしょう:閃の道理によって速さを上げる


魔証ましょう:魔の道理によって魔力を上げる


魂証こんしょう:魂の道理によってすべての能力を上げる


魂証とは、肉体や思考を超えて、「魂そのもの」によって自らの存在と力を証明する強化である。

各証とも重ねられ、各証の力まで高めてしまう究極の強化であった。


インフィは、それらの力を元に強大な魔物と戦っていた。


インフィ(LV.55)はいつものように、少年の装いで戦っていた。

一見無防備にも見えるが、実際には──透明な装備で全身を完全に覆っていた。

そして今、インフィが向き合っていたのは──漆黒のドラゴン。

レベルは65、体長はなんと1キロ。

かつて人類が一度も踏み入れたことのない禁忌の領域に棲まう、文字通り“厄災”と呼ばれる存在だった。


人間の基準では、たとえ“天才”と呼ばれる者であっても、せいぜい3レベル上の魔物を相手にするのが限界だとされている。たとえ相手の弱点が分かっていたとしても、レベル差3を越えると、もうどうにもならない。


人間界では、レベルがすべてである。


だからこそ──人は「1対多」の戦い方を選び、数の力で上位の魔物を討ち倒すのが常識だった。


しかしインフィは、そんな常識に抗い──

あえてLv.10も上の魔物と、ただ一人で戦おうとしていた。


それには──ひとつの、大きな目的があった。


そして今、インフィは飛び上がる。

まるで天へ跳ね上がる流星のように、厄災のもとへと向かって。


草木ひとつ生えぬ、赤黒く乾いた岩が無数に転がる大地。

朝日が昇り、その光が地を照らした瞬間──そこはまるで、かつて流れた膨大な血の記憶が染みついているかのような、凄惨で異様な色に染まった。


その空を、一匹の漆黒のドラゴンが、悠々と飛翔していた。

まるで「ここは我の領土」と、誰に問われることもなく、絶対の威容をもって誇示しているかのように。

おもしろいと感じた方は、「亀の甲より年の功」をクリックして、他の作品もぜひご覧ください。まったく異なるジャンルの物語を、生成AIを駆使して書いています。

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