26 なぜか班長に 前半
踏みしめられた固い土の上に、腐りかけたベッドが所狭しと並んでいる。
粗悪なレンガを積み上げた壁に、不揃いな薄い板だけで組まれた屋根。
そして、男たちの汗と臭い以外、何もない空間──ここは、奴隷兵たちの宿舎であった。
「今日からインフィが班長だ。副長はゼル。いいな!」
教官が九十六班にそう告げると、一瞬全員の顔が強張った。
だが、直立不動の姿勢で敬礼する。
独房から戻ってきたばかりのインフィが、突然班長に任命されたのだ。
新兵にとって、レベルがすべてである。
いち早くレベルを上げさせるための手段として、それは利用されていた。
素行の悪さから親に捨てられ、奴隷となったサギがぼやく。
「なんで俺の人生ってこうなんだ……」
商売に失敗して奴隷に落ちたカイラは、地面を蹴りながら言う。
「くそ、やってられねぇ……」
農家の口減らしで奴隷となったゼルが、小さくつぶやいた。
「また飯抜きだな……」
心が少女のままのダリルだけは、にこにこと笑っていた。
「なんでもするね、インフィいちゃん……」
誰ひとりとして、喜ぶ者はいない。不満の声が、新班長に好き放題ぶつけられる。
……まあ、一人は除いておこう。
教官の耳に入れば厳罰は免れない。それでも、あの肉への恨みはまだ尾を引いているのだろう。食べ物の恨みは、やはり怖い。
インフィもしょんぼりと立ち尽くしていたが、周囲の声は耳に入っていない。レベルアップが一週間できなかったことが、何よりも堪えていたのだ。
……
「おいおい、またアレかよ……」ゼルが呆れ顔で腕を組む。
「どうする、止めるか?」
「いや……今回は、見とこう。班長様のお手並み拝見だ」
歓喜の声を上げ、インフィ一人がイモムシラーに突撃し、串刺しにしている。だが力が足りず、魔物の動きは止まらない。
ちなみに、あの“特製剣”は取り上げられていなかった。正確には、新しい支給がなかったのだ。
インフィの目がだんだん狂気の目に変わっていく。あどけない少年の顔ではない。
「貴様ら、何をしておるかっ!」
教官の怒号に、ようやく班の面々が動き出す。
「おい、行くぞ」「やれやれ、仕方ねぇ」
仲間たちが加わり、ようやく魔物は倒れた。
……
「班長殿、我々は何をすればよろしいでしょうか? 見ていればいいのでしょうか?」
三十歳のゼルが、十歳の少年に対して嫌々ながらも問いかける。
「え、あ、ごめんなさい……魔物しか見えてなかった……どうすれば……」
「班長殿、そのような口調では、精神注入棒が我々全員に飛びます。命令をお願いします、サー」
ゼルがうんざりしたような声で、苛立ちを抑えながら続けた。
インフィは、はっと顔を上げ、何か閃いた。
「わかった。ええと、ゼルとカイラが盾。触角を攻撃してヘイトを取る。サギは五番目の左側継ぎ目を腹の下から突く、タイミングは魔物が浮いたとき──」
「お、おい、急にどうした」
インフィの目がギラリと光る。
「ダリルは、魔物の下腹五センチ上、斑点の濃い窪みを狙って、中腰で振り下ろしの力を突きに乗せろ!」
「なんか……めっちゃ喋るじゃん……」
「止まらないぞ!?」「え、長っ!?」
しかしインフィの説明は止まらない。
「班長殿、長すぎて覚えきれません、サー!」
「え、あ、わかった、実践だ。ぼく……自分がやる、きて」
インフィは一つひとつの動作を見せ、それぞれの癖を修正しながら体を動かさせる。
「サギ、足が外向いてる。ダリル、力が抜けてる。ゼル、もっと腰を落とす」
「う、うっせぇな……でも確かに……」
「もう少し、腰を落として……」
悪い所は手足で押さえて修正する。まるで一流のトレーナーが、スポーツ選手を指導するように。
ある程度の動きができると、イモムシラーで実戦に移る。
今度は、魔物の動きの特性、パターン、弱点なども併せて、効率的な倒し方を提示し、各人の動きに応じて「ここが悪い、ここは良い」と丁寧に教えていく。
「サギ、よし! カイラ、ナイス!」「ゼル、止めて!」「いまだ、みんなで攻撃!」
次第に連携が整っていく。倒すまでの時間も短くなっていった。
……
固い土の上に置かれた、軋むベッドに腰を掛け、96班の皆の顔がげんなりとしている。
「サギは、あの時はこうした方がよかった」「ゼルは……」「カイラは……」「ダリルは……」
そう、インフィの魔物討伐レクチャーは終わることなく続いていた。疲れを見せないインフィを、班員たちはジト目で睨みつつ、欠伸を繰り返していた。
……
また数日の時が過ぎた。
上位班では、レベルアップして11になる者も現れた。余談となるが、あの肉ご褒美発言からは、すでに二週間が経過していた。その間、奴隷兵たちは必死で魔物を狩り続けていた。むごい仕打ちではあるが、奴隷が肉を食えると考えれば、やむなしといえた。
「チラ」「サッ」「ピッ」「あ」「え」「か」「さ」
イモムシラーが動かなくなる。戦い始めて10分と経っていない。
連携が取れると、5人で一体を倒すほうが疲れも少なく、効率的に討伐できるようになっていた。
96班は、目線、ハンドサイン、短音で連携し、まるで機械のように魔物を倒していた。
このような連携は上位班でも一般的だが、あの“落ちこぼれ”だった96班の変貌に、教官たちは驚きを隠せなかった。
短編、これを広めてください(日本の将来のため)。要旨だけです。
読まれてない方は読んでください。これを広めるために書いている小説です。
ChatGPT plusの使い方は、短編にまとめたのでそちらで確認してください。無料版でも応用できると思います。




