第63話 ダンジョン計画始動!当然宿泊は『馬小屋』だよね?!
転移して訪れた我が家。
春先、と言うか初夏のガルデス領は新緑に包まれた山々が目に美しい。
まだ僕は9歳だけど。
やっぱり故郷は良いものだね。
つい目に入る景色に意識を奪われていると、お母様がため息交じりに口を開いた。
「…本当に一瞬なのね。…まったく。これならいつでも来られるでしょうに…」
「ハハ、ハ」
我が家の前、玄関先に転移してきた僕たち家族5人。
一応ティアとココナ、ミリ、そしてサルツさんは留守番だ。
まあすぐに戻るので、問題はないと思うけど。
取り敢えず僕はインベントリから色々と物を出して、やることは終了。
久しぶりの帰郷はわずか数分で終わりを告げた。
※※※※※
今回は家族を送るために来ただけだ。
もちろん先ぶれとかはしていないので、ヒャルマ先生にも会うつもりはない。
因みに父上たちの乗ってきた馬車も一緒に転移してきたよ?
領兵の皆はすでに僕が転移魔術使えるの知っているしね。
「コホン。ライト」
「はい」
「さっきは色々と言ったが…お前は本当に自慢の息子なのだ。…どうかこれからも体に気を付けて頑張ってほしい」
「父上…は、はいっ。精一杯頑張ります!!」
本当に家族は良いものだ。
誰に言われるよりもぐっと心に響くものがある。
やっぱり。
直接会う方が100倍は良いね!
僕はさらに気合を入れていた。
「…あー。その。…くれぐれも『やり過ぎる』なよ?…なんだ。…まあ、ほどほどにな?」
「……あ、はい」
なぜか気合を入れた僕にジト目を向ける父上。
お母様もやれやれといった表情を浮かべている?!
「兄さま、頑張ってね!」
「っ!?う、うん。ありがとうルード。…それでは父上、お母様。…戻りますね。…キャルン姉様もいいかな?」
「うん」
「じゃあまた。…転移っ!」
魔力の残滓を残し、消える僕とキャルン姉さま。
さあ、帰ったらダンジョン、手を付けますかね!
※※※※※
寮に戻った僕は、改めて素案となるかつてのゲームを思い起こしていた。
(…そう言えばあの時の“俺”…やりつくしたはずなのに、また新しく始めていたよね…)
(――つくづく“凝り性”だよね…ハハッ)
◆曽我頼人:回想◆
「くわー、『ダークゾーン』に『回転床』…マジで凶悪だよな…」
俺は狭いワンルームで懐かしいゲーム機を引っ張り出し、さんざんやりつくしたダンジョンRPGの凶悪な罠に改めて慄いていた。
「ったく。…しっかしこのゲーム、死んだらリスクがあるとか…マジで変なところだけリアルだよな」
世界的に有名な『線画』で表示されるゲーム。
初期の物は殆ど『字のみ』の表示。
今思えば逆にそれが想像力を掻き立てていた。
「うあ、やべえ。…魔法の使用回数、終わっちまった…ぐうっ?!エンカウント?!…うあー、し、死ぬ?…っ!?ク、クリティカル?!…う、ウサギに首飛ばされた…マジで?全滅?!!」
※※※※※
このゲーム。
全滅すると死んだ場所に『死体』として放置される。
そして時とともに消えていく装備品やお金。
運が悪いと死体そのものまでもが死の最終段階である『ロスト』と言う状況になってしまう。
いわゆるその世界から消えてなくなる。
もちろん復活はできない。
「…他のゲームだと全滅すると『王様の前』とかなんだよな…今思えば…その方が不思議だよな」
思わず独り言ちる。
何はともあれこのゲーム。
回収するためには違うパーティーでそこに行くしかない。
しかも人数制限があるため、ミイラ取りがミイラになるなど良くあったものだ。
ん?
どういうことかって?
あのゲームは最大6人パーティー。
もちろん死体も一人として『カウント』される。
つまり最大人数である6人パーティーが全滅した場合、違う6人パーティーでは誰一人回収することができない。
「…レアな装備品とかを持っているときに全滅とか…マジで焦ったよな…」
まあ。『キャンプ機能』と言うものがあるのでやりようはあるのだけれど…
とにかく回収作業は結構大変だった。
『魔法使い』が鍛えてあれば、簡単なのだけどね。
いわゆる転移魔法、それでどうにでもなる。
でもね。
大体全滅する人は無茶をする人たち。
そもそもそのレベルに到達していれば、ほとんど死ぬことはないのだから。
だからこそ、あのゲームプレイヤーは上級者ほど無理をしなくなる。
無理をするのはとことん強くなってから。
そして一番のお楽しみ。
“アイテムのコンプリート”を目指すのだ。
『手裏剣』とかマジで出ないのよ。
ああ、マジで懐かしい。
コホン。
さらには生き返らせる魔法や方法はあるものの、実は100%ではない事実。
散々鍛えたキャラがうっかりで死んでしまい、呪文が失敗して『灰』になったときにはマジで絶望したものだ。
「あのクソ寺院…大金かけても失敗するんだよな…」
なぜか確率で失敗する鬼畜仕様。
何度悔しい思いをした事か…
因みに灰はロストの一歩手前。
再度の蘇生に失敗すると『ロスト』してしまう状況の事だ。
そして生き返らせると年を取る。
実はあのゲーム『老衰』なるモノまでが搭載されていた。
さらには『がめついお店』に無茶ぶりを言う王様。
金を使って宿泊すると中途半端な体力回復と1週間経過してしまう宿屋。
あの世界では寝ると魔法の使用回数が回復するのだが。
さっきも言った通り年を取っていくこのゲーム。
そして貴重なお金。
ほとんどのプレーヤーは、お金がかからず1日しか時間が進まない『馬小屋』で寝ていたんだ。
そして魔法による自力回復。
…確かレベルアップも寝ないとしないんだったっけ。
ああ。
マジで懐かしすぎる…
◆回想終了◆
※※※※※
そんな懐かしい事が脳裏によぎりながらも。
僕は今自室で頭を悩ませていた。
時間は夜の11時。
お子様は寝る時間だが…
「う――――――ん」
セイと打ち合わせ済みで、全100層と“実力変動システム”までは構築済み。
そして…
『ねえセイ?この“仕組み”だとさ…正体とか『丸わかり』になっちゃうよね?』
『はい。件の異世界の生物が擬態とかしていれば確実に判断できますね。さらには我々に対し悪意を持つものも判断できます』
僕が考えたアバター方式。
実はこれにはとんでもない“追加効果”が得られる仕組みとなっていた。
つまり隠蔽できない。
真実の確認ができてしまう。
何しろ生命力を抽出する際に、魂にも『フィルター』をかけることになるからだ。
(ヤバイ…これはマジでヤバイ…上手く行けば今いるこの世界の異星の者たち…一網打尽にできるかもしれない?!)
実は擬態している者たち。
記憶はなくても“粗暴な性格”になっていた。
きっと自分の中にある齟齬、彼らは無意識下でとんでもないストレスを抱えているんだ。
だからきっと。
『国王の命』により全世界へとこのダンジョンの情報が出回れば…
彼らは間違いなく訪れるはずだ。
「くくっ、決めた」
おもむろにノートに記入していく。
「とりあえず宿泊は…『馬小屋』一択だね!…あとは罠…落とし穴に毒の沼地…くくくっ、うろたえるプレイヤーたちが目に浮かぶ…これはいい、最高だ!」
そして詰められていく、とんでもなく悪辣で凶悪なダンジョンの設定。
その作業は深夜まで続けられた。
睡眠不足でおかしなテンションになっている僕。
その思い付き全開のダンジョン。
後日説明したときに、僕以外が全員ドン引きしたのは言うまでもない。
「面白かった」
「続きが気になる」
と思ってくださったら。
下にある☆☆☆☆☆から作品への応援、お願いいたします!
面白いと思っていただけたら星5個、つまらないと思うなら星1つ、正直な感想で大丈夫です!
ブックマークもいただけると、本当に嬉しいです。
何卒よろしくお願いいたします。




