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第147話 そして世界は美食の夜明けを迎えた(笑)

「ふう。こんなところかしらね。…まったく。あなたはまだ10歳なのよ?…まあ…今更よね」


戦勝の宴から1週間。

今僕の部屋の改装が終わり、お母さまが最終チェックを終えたところだ。



※※※※※



ここで戦勝の宴の顛末を語ろうと思う。


あの後。

皆が目を覚まし、僕渾身の料理とスイーツはまさに革命をこの世界にもたらしていた。


何より休憩施設に行っていた美食の女帝ジョコビッチの乱入。

さらには僕の前世、つまりは日本での経験を生かしたスイーツの数々。


まさにあの日会場は天国状態に突入していたんだ。


高貴であろう重鎮の皆さま。

我を忘れ、口に詰め込むあの様子。


まさにカオスに包まれていた。


一応僕が宣言した婚約11名とティアリーナとの婚姻。

それは浸透したはずなのだけれど…


なぜかあの後、一切話題には出なかったんだよね。


『ふん。ライト大公爵よ。貴様は阿呆なのか?このような凄まじい美食の数々…確かに女神様との婚姻――重大事項ではあろうが』


空になった皿の前で、まるで猛獣のように瞳をぎらつかせ――


『我らヒューマン族は本能には抗えんのだ。ここまで胃袋を掴まれてしまえばな…ライト大公爵よ…覚悟はいいのだろうな?』


なぜか色気マシマシで僕を見つめ、口にしたジョコビッチ。


うん。


食べられちゃうかと思ったよ。


ハハハ、ハ。



という訳で。

僕は別に隠すことではないので、特別にスイーツといくつかの料理。

レシピを無償で提供しました。


きっとこの世界の食事事情、激変する事だろう。



まあ。

悪い事ではない、よね?



※※※※※



「ふわー♡…ここが改装した“ライト様とわたくし”の夫婦の寝室なのですね♡ティアは、ティアは…」


えっと。


実はあの後、僕はお母様に相談を持ち掛けていた。

既に熱烈に僕を求めてくれる大切な婚約者たち。


一線はまだ超えてはいないけど。

いよいよそんなことを言えなくなってきてしまっていた。


何より僕とティアの婚姻は、すでに全世界が知っている事実。

あの後学園でも散々冷やかされたものだ。


というわけで。

僕はまだ10歳なのだけど。


いよいよその覚悟を決めたんだ。


まあ、倫理的にはもちろんアウトだし?

のべつ幕なしという訳で思ない。

当然だけど、実際の接触はしないつもりだ。


だけど。

僕は。


「むう――ズルい、ズールーいー!!」


考えに耽っていた僕。

突然のルイの大声で現実に戻された。


「出ましたわね、この淫乱魔王。…ここはわたくしとライト様の“愛の巣”です。出ていきなさい」

「嫌です。むう、何このベッド…なんでこんなにいい布団なわけ?…ライト」

「う、うん。な、なにかな」


「…えっち解禁なの?」

「うあ、えっと…そ、その…」



正直。

僕は“ある秘策”で乗り切ろうと考えていた。


擬似性交。

つまりは魔力抱擁の強化版だ。


今までの魔力抱擁は、どちらかと言えば親愛を前面に押し出しての秘術だった。

当然色も付きまとってはいたけど。

精神的な融合、つまりは幸福感の共有だった。


でもついに国王までもが認めた正式な婚姻。

妻となったティアリーナ。


まったく今までと同じという訳にはいかないだろう。


「…ふう。ルイちゃん」

「は、はい。お母様」


駄々をこねるルイに、お母さまがそっと口を開く。


「あのね。一応ライトはティアリーナ様と正式に夫婦になったの。分かるわよね?」

「は、はい」


そしてそっとルイを抱きしめるお母さま。


「…あなただって大切なライトのお嫁さんなのでしょ?確かに順番とか、色々思うところはあるでしょう。でも…信じてほしい。ライトはあなたたち全員を、心の底から愛していますから」


「っ!?」


肩を振るわせ、目に涙がにじむルイ。

魔王を泣かせ、なだめるお母さまって…


さすがは僕のお母様。

最強です。



※※※※※



「ムッハバラードよ」

「はっ」


一方、隣国聖協国リーディルド謁見の間。


ここでは戦勝の宴に参列していた聖王とムッハバラード第3王子がいくつかの書類を前に真剣なまなざしでお互いを見つめ合っていた。


「…再現具合はどうだ」

「はっ…3割程かと」

「むう」


戦勝の宴から早1週間。

あの時の料理に衝撃を受けた二人は、ライトのレシピをもとに料理の再現を試みていた。


何より実際に食した聖王とムッハバラード。

実は各種能力値が向上、さらにはいくつかの持病までもが完治していた。


そして――


「猊下…まだなのかしら」

「うぐっ」


聖王の妻であり、ムッハバラードの母親である王妃。

輝く笑顔と怪しい視線を二人に突き刺す。


「…お土産としていただいたあのスイーツ…まさに至福の極致…」


そして吹き上がる、とんでもない濃密な魔力。


「…わたくしを置いて行った罰ですわ…“再現”出来るまでわたくしに触れる事禁止です」

「ぐうっ」


当然だが。

いくら平和的な催しとはいえ、ホイホイと王族全員で行くわけにはいかない。


結果聖王と、マイハルド王国から妻を娶る予定のムッハバラードが参加していたのだが。

実は他国の王族、いわゆる実際に参加した女性から、彼女は幾つも話を聞いてしまっていた。


自分とそう変わらぬ年齢の女性。

ありえないほどに美しく、そして何より恍惚の表情で語るその内容。


彼女は完全に激おこだった。


「…猊下」

「む、な、何じゃ」

「お暇を」


実は以前、操られていたリョダにより苦汁をなめつくしていた王妃。

やっと国内も案手してきたタイミング、彼女は遂に心の想いをぶちまける。


「わたくし、自ら行きますわ。マイハルドへ」

「なあっ?!」


そしてすっと目を細め、言い放つ王妃。


「それがお嫌でしたら…再現、お願いいたしますわね♡」


立ち去る王妃。

冷や汗を流す聖王。



(…ライトよ…お主の齎したもの…我が国は窮地だぞ?)



思わず遠い目をするムッハバラードなのであった。


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