第三十三話 勇者の国 4
「――それで、話っていうのは何のこと?」
二人は会場からバルコニーに出て、神魔は落下防止の柵に背中を預けていた。持ってきたグラスを柵の上へ乗せているが今すぐにでも滑り落ちそうなほど軽度の傾斜がついている。ここに二人以外は誰もいない。つまり、人払いをする必要があった。
「まさか、手伝って欲しい。なんてことはないよね」
「……」
神魔は一度置いたグラスを持ち、手首で揺らしながら中の液体が動くのを見つめる。神妙な面持ちでため息を零すと身体を起こしてグラスを手から離した。そのままクエルフへ数歩進む。
「相変わらず神魔の魔法はおかしいよね。魔法というより、それは手品だよ」
地面へ落ちたはずのグラスは割れもせず消失していた。落下したはずのグラスは空中から手すりの上へ瞬間移動している。
まさに手品だ。
「計画が難航してる」
クエルフの言葉に何一つ返さず、本題を切り出した。
「それは本気で言ってるの?」
「ああ。何度か修正もした。改変だってな。だがだんだんとズレて来てやがる……これ以上は直しようがない。最悪、俺達が消える可能性もある、どころかこのままいけば消えるだろうな」
「そこまでなんだ」
明らかに意味深な事を言っているがすべてクエルフには伝わっているようで、拳を鼻に当てると少し考え込む。
(神魔でさえ修正が効かないとすると僕も多少なりと出しゃばる必要があるよね……とはいっても神魔の相棒が戻ってくるのを待っている時間はないかもしれない)
「それで? 具体的にはどれが一番厳しいの?」
神魔は「ふぅっ」と息を吐くと意を決したように言葉を連ねた。
――話し合いを終え中に戻ると祝いムードの騒がしさではなく、緊急事態でも起こったかのような騒がしさで溢れていた。
警備の人が慌ただしく走り状況を整理している。
「……これは合ってる?」
「なわけねぇだろ。これも想定外だ」
不適な笑みのクエルフに若干気味の悪さを覚えるが、そんなことはさておきこの事態の収拾のため外部の魔力反応を探ってみた。
「……チッ。はぁ」
その正体が分かるや否や明らかにめんどくさそうな表情を浮かべながら頭を抱える。
「警備には俺から言う。てめぇはこっちをどうにかしろ」
「はいはい。なるべく早く戻ってね」
それだけ言うと神魔は来た方向へトンボ帰りしバルコニーからサッと下へ飛び降りた。マークした魔力の位置を見つけると、タキシードからいつもの服、ロングコートにフードを目深に被った姿へと一瞬で変わる。
そのまま神魔は姿を消した。
◆ ◆ ◆
――半刻前、仕佐達はというと……
「何者だ!」
「やっっばい!」
「逃げるぞ仕佐!」
条夜がやらかし警備兵に追いかけ回されていた。
というのも普通にあの場にずっと居れば何も起きず平和でし入れただろう。それを意図せず崩してしまった。というか屋根という不安定な上に居たのが運の尽きだったのだろう。
「条夜がかっこいいから屋根の上から見ようなんて言ったせいだからね!?」
同じ姿勢で座っていたから向きを変えようと動いたところ、そのまま条夜は体勢を崩して下に落っこちてしまった。落下した衝撃でそこそこの音が出てしまったので結果的に見つかってしまい追いかけられている、というのが現状である。
条夜は半笑いで謝っているが全くもってそれどころではない。
「下手したら牢屋行きだろうなぁ」
「はぁ!?」
国の重要人物達のいるパーティーを覗き見したあげく、何か良からぬ事を考えていたに違いないなどとあることないことをでっち上げられればそれでこそ一環の終わりだ。というか牢屋で済むのだろうか。
街道を走り、裏路地に逃げ込み適当にジグザクに走り続けると少し開けた場所に辿り着いた。夜中という事もあり人通りはなく、静けさが沈黙を貫いている。
「――おい。なんでこんな所に居る」
突如聞こえたその声に二人は驚き後ろへ振り返る。そこには明らかに警備兵とも衛兵とも違う、怪しげな格好の人物が立っていた。
「休んでないでさっさと家まで帰れ。本物の勇者が今居んの分かってるだろ? 余計な面倒事を増やすな。分かったらとっとと失せろ」
それだけ言うとそいつは文字通り消えた。
「なんだったんだ今の……」
これにて33話は終わりと。
一気にキャラ増えたか? でも新キャラが4人くらいだろう多分。ほな大丈夫か()
かきたかった話とは言え分からなくなっちゃったら本末転倒だからねぇ。よし
え~っと、次の投稿が再来週の20日!!
そのあとの大晦日は毎年の通り、連載中の作品全部更新するぞぉ……!!
ではまた――




