9話・王様からバクーフ騎士団任命式に呼ばれました
この世は格差社会!
そう、常に権力と金がある者が支配者。
一般庶民は自分のクラスを最低でもマスタークラスにしないと這い上がれない。
―――――――――――――――
・王族・国の支配者
―――――――――――――――(超えられない壁)
・上流階級
ジョブを極めたクエストクラス
代々続く貴族血筋の家系
―――――――――――――――(一部の人間のみ超えられる壁)
・中流階級
商売などで成功した人間
芸能などの一芸に秀でる人間
ジョブマスター
―――――――――――――――(超えられる壁)
・一般庶民
平民
ジョブ初心者
―――――――――――――――(ある意味超えられない壁)
・ニート
ニート(世捨て人も含む)
王様に会うまでの一週間は引っ越しの準備と、国境周辺でモンスターや敵国の人間と戦って魔法訓練をしてたの。もう私はクエストクラスとして国を守る義務が課せられる。だから、モンスターだけじゃなく同じ人間も殺せる覚悟が必要なの。バクーフ王国国境付近に現れた盗賊を、警告無視で攻めて来たので倒します。
「こちらの警告を無視したなら……死んでもらうわ。火炎龍よ……我が血のマグマに弾けて混ざれ! マグマドラグーン!」
警告はするけど、ダメならば殺さないとならない。私はこの一週間でそれを身に付けた。おそらく悪役令嬢のジョブで性格が冷たくなったから簡単に克服出来たのね。
「ニートさんに力は強くても経験が足りないと言われたのも克服しないとね。苦しいけど、これも生きる為の仕事。この異世界ジパングではこれが当たり前の事なのよアヤカ」
そう、自分に言い聞かせた。
悪役令嬢になったから大半の魔法は使えるようになった。だからたまに国境周辺とかで襲って来る敵国のスパイであろうウィザードなども問題無く倒せる。私を襲っても悪役令嬢クラスは手に入らないのにね。
そうして引っ越しの準備も整い、私は晴れてバクーフ王国の王に「バクーフ騎士団」への任命式に招かれたの。
※
バクーフ王宮へ行くと、茶色い髪を左右の耳の後ろで後ろに編み込みをしている、純白のドレスを着た美しい少女が待ち構えていたわ。黒い魔女服を着ている私は会釈し、バクーフ王の十番目の娘のスズカに王室の間に案内される。
その任命式会場になる王室までの通路は誰もいないので、私は気軽にスズカと会話した。
「一応スララも従者として連れて来たけど、王室には入れるの?」
「従者なら入れるわ。モンスターの従者でも王には会える。隅の方に待機してれば問題無いわよ」
「なら出て来なよスララ」
「御意」
ぬぽっ! とスララは私の胸の谷間から顔を出す。プルプルッと弾けるように揺れて、スララはニッコリ笑った。
「ここは空洞があるのでスズカ殿の胸より隠れやすい」
「私はCカップもあるの? わかる?」
「でもスズカさんはEカップ……」
「人の成長はそれぞれなの。余計な事を言うと、鼻にドングリ詰めるわよ」
「拙者、スライムなので鼻が……」
「!」
とりあえず、スララはスズカの胸に入れておいた。やれやれと言った顔のスズカは、私達の仲の良さを褒めてくれた。そんなスズカに思った事を聞く。
「私の呪いの話だけど、スズカは結局、私の呪いが発動しなくても五年さえ過ぎれば他国王子との婚約予定が無くなり、自由になれるんだよね?」
「そうよ。10代の王族の娘は特に貴重な存在で、20を越えれば自由恋愛になる。でも五年間はアヤカの呪いが解ける「トゥルーラブ」を見つけないようにね。私も困るから」
「結局、私が自分の呪いを早く解けばスズカから解放されるのね。これって悪役令嬢っぽいね」
「そうね」
イマイチ反応が悪いな。
別人のような顔になりスズカは言う。
それは、大きく重厚な扉の前に来たからだった。
「お喋りはここまでよ。この扉から我が父バクーフ王がいる王室になる。クエストクラスの悪役令嬢アヤカ。身と心を引き締め任命式を終えたまえ」
「はい。スズカ姫様。……勇者様、私はバクーフ騎士団に入ります」
「そんな祈りをしても、どこにいるかもわからない勇者は助けてくれないわよ」
「助けてくれなくていい。今度は私が勇者様を助ける。だから見ていてください勇者様」
覚悟を決めた私に、スズカは黙る。
そして――。
「それではクエストクラス。ジョブ「悪役令嬢」であるアヤカのバクーフ騎士団任命式を始める!」
「はい!」
とうとう正式に王からバクーフ王国を守るバクーフ騎士団の一人として任命される。
私と従者のスララは絨毯が敷かれる道を前に進んで行く。
王室はとても広く、美しい空間であり身が引き締まる思いになる。とても歴史を感じさせる空間だわ。
左右にはバクーフ騎士団の精鋭がおり、正面の王のイスにはスズカの父親であるバクーフ王が鎮座していたの。
王は髪は白髪で王族専用の白い制服にマントを着用している、口ヒゲが長い老紳士というイメージの王様だわ。スララは従者の為に途中で立ち止まり、私の背中を見送ります。
「……」
そのまま進んで行き、バクーフ王の前で膝まずく私は両手を差し出す。王は白い口ヒゲを上下に動かしながら言う。
「……バクーフ王国・バクーフ王が命じる。現時刻を持って、クエストクラス・悪役令嬢アヤカをバクーフの矛と盾であるバクーフ騎士団に任命する。心して励むが良い」
「はっ。悪役令嬢であるアヤカはクエストクラスの名に恥じぬよう、誠心誠意バクーフ王国に忠誠を尽くす事を誓います」
王室の左右にいるバクーフ騎士団の精鋭達の拍手が起こり、無事に私はバクーフ騎士団に任命されたの。
実際はバクーフ騎士団の活動ではなく、緊急時のバクーフ王国の守護と魔法などの研究。危険生物発生時の対処、他国への牽制などが主な任務。
魔法研究は生活してるうちにわかるだろうし、他国への牽制は他にも四人のクエストクラスがいる事だから、たまにダンジョンや平原に出るモンスターを倒していればいい。危険生物も私、チートだから楽勝。
バクーフの守護は当分問題無い。だって異世界ジパング大陸の最大勢力はこのバクーフ王国なんだから、戦争レベルの事は簡単に起きない。
私が悪役令嬢として他国の王子の婚約破棄を失敗しなければね。
(問題はスズカの雑用と、スズカとの婚約相手の「婚約破棄」がメインになるわ。気を引き締めて行くわよアヤカ)
そうして、バクーフ王国郊外の森の建物。アヤカハウスへ引っ越した私は広い屋敷の二階のベッドの上から窓の外を見ながら呟く。
「20歳になればスズカも自由恋愛。だから5年間の間に「トゥルーラブ」を見つけて、スズカの呪いを解くのが一番の目標。5年後に呪いが解けるとは言え、そんな待ってはいられない。私は勇者様と旅に出る目標があるから!」
そして、とうとう他国の王子である「アイヅ王国」の王子が現れる事になったの。
「フフフ……ようやく悪役令嬢の出番ね。まず一人目からキッチリ婚約破棄は成功させてやるわ。誰がヒロインかわからせてあげるわよ。このバクーフ王国全ての人間にねぇ。オーホッホッホッ!」
と、テンプレな笑いをしながら完全に顔が悪役令嬢になっていたの。オホホのホ! の方がいいかな?
とまあそんな私は、スズカのガールズラブ展開になる呪いを回避する為に、一回目の婚約破棄に向かいます!




