31話・会食の夜で色々します
トサ王子との会食の夜になります。
すでにスズカは乗馬マスターになっているから、トサ王子との約束は果たしている。だから、馬レースの開催日が婚約破棄の日になるの。私が馬レースに勝つだけで今回の婚約破棄は終わるから、残りの数日はゆったり過ごせるはず。
とりあえず、トサ王子が勇者様を探してくれれば、私も勇者様と恋に落ちて自分のガールズラブになる呪いからも解放されるのに……。
バクーフ王国の姫としてスズカは登場したわ。
今日はキラキラした黄色いドレスに、茶髪のロングの絹のような髪は下ろしている。足元のヒールも金色で、派手な色が好きなトサ王子も喜びそうな服装だわ。貴族令嬢達もビビってるわね。
(相変わらずのSSS級のヒロインモードね。あのスズカを、本当のスズカが見たらどう思うのかしら?それに私が昨日言った言葉もどこまで届いているやら……)
あのヒロインモードのスズカに対して言った言葉がどこまで届いているか気になる。だから二人の間に割り込む気が起きなかったの。
もう、バクーフ王も長いヒゲを上下に動かしして今度こそ婚約決定じゃ! と盛り上がっているわ。あの王の願いはもちろん潰すけど、私はスズカの全てを潰したいと思い出していたの。
(スズカはヒロインモードのまま婚約決定した場合、元の人格がどうなるかもわからないわ。だからこそ、ヒロインモードに勝つ為の強さが必要。出来れば今回の婚約破棄の中で実現したいけど……)
鉄壁で完璧なヒロインモードのスズカを崩すのは容易では無さそうだわ。あの微笑みと、気品はこのパーティー会場で一番輝いているもの。だからこそ、偽りの輝きには消えてもらわないとならないの。
悪役令嬢以外の悪は必要無いからね。
トサ王子とスズカとの話も一通り終わったようだし、群がり出した貴族令嬢達を蹴散らしましょう。
「貴族令嬢達を蹴散らして、私もトサ王子に乗馬マスターの件を報告しないとね」
会食パーティーが始まっているバクーフ王宮にいる私は高いヒールを鳴らして歩き、悪役令嬢としてザコの貴族令嬢達を蹴散らすようにトサ王子の元へ進む。
「こんばんはトサ王子。約束通り、スズカ姫は乗馬マスターになったわよ。これで最終日の馬レースが楽しみになったでしょう?」
「よぉ、アヤカか。相変わらず陰気臭い真っ黒黒助だな。スズカから話は聞いてるぜ。もう乗馬マスターになれたなら、馬レースに参加出来る。その決着は俺も楽しみだ」
「それを聞いて安心したわ。そちらの勇者様探しはどうなの?」
「この前のドラゴン飛来事件でバクーフに勇者がいるのは確信的になった。今はドラゴンエッグと勇者の光の魔力の痕跡を家臣達が探している。おそらく、もうすぐ発見出来るだろうよ」
どうやら、トサ王子の家臣団も勇者様探しに躍起になってるようね。ドラゴンエッグはあらかた探された後だし、勇者様の痕跡が見つかると私も助かるんだけどね。すると、少し困り顔の赤髪の攻撃的な男が聞いてきたわ。
「スズカ姫というのは、言われた事を完璧にこなすタイプなのか? たった一日で馬レースに出られるレベルまで上達するなんて異常だぜ?」
「あぁ、その事ね。スズカ姫は王族の娘として他国に嫁ぐ義務があるの。だから成人式から五年以内に婚約する為に努力は惜しまないという事ね」
「なるほど……それで納得しとくか。少し外の空気が吸いたい。ベランダに出るぞ」
私はトサ王子に連れられて、ベランダへ行ったわ。
いつの間にか私はトサ王子の相談役になっていたの。そこからすれ違いが起こる事も知らずにね。夜風を浴びながら、トサ王子は言葉を話す。
「あそこにいる貴族令嬢達は噂してるぜ。どうやら俺達は近寄り過ぎてるような感じを持たれてるな。俺がアヤカの家に泊まっていたのも噂になってやがる」
「それは事実だししょうがないわ。私達の間には何も無かった。今はね」
「今はねじゃなく、今後もねーだろ。スズカが馬レースで勝てば全て終わる。俺はそもそもクエストクラスじゃなくて、王族との婚約に来たわけだ。そこを忘れんなよ」
相変わらず夜の月を見つめたまま話している。どうやら私と噂になっているのに照れがあるようね。面白いわ。
「それとよ。スズカ姫がいるから、パーティー会場では距離があった方がいいかもな。でも今更距離を開けても遅いから意味無いけどな」
「じゃあ、どうするつもり?」
「ま、結果は俺のバクーフ滞在の最終日に出るからそのままでいいかな。それに、馬レースを宣言すればそんな話も立ち消えるだろうよ」
「消せないわよ」
私はトサ王子の頬にキスをしたの。
驚くトサ王子はベランダから下に落ちそうになりつつ、私の行為で婚約する気があると納得してくれたわ。
そうして、パーティー会場に戻ったトサ王子は馬レースを宣言したの。
クエストクラスのアヤカと、バクーフ王国の姫スズカの対決である馬レースをね。
でも、この勝敗次第で婚約者が決まるという話は、何故かしなかったわ。おそらく、バクーフ側の心情を考えたのでしょう。この勝敗で婚約者の決着がつくなら、バクーフ王は間違い無くレースに介入してくるだろうから。
気を良くしたのか、トサ王子はだいぶ酒に酔っていたの。それを私は介抱して王子の泊まる寝室まで運んだわ。そうして、私達は一夜を過ごしたの。
「ん……どこだここは? 俺は確か馬レースを宣言してから……」
朝になり目覚めたトサ王子は、昨日の出来事を思い出そうとしているわ。それを隣で寝ていた黒い下着姿の私は答えたの。
「裸で起きない王子をそのままってわけにはいかないでしょ?」
「!? アヤカ!? お前何で俺の部屋にいるんだ……?」
驚いたトサ王子はベッドから飛び上がり構えたわ。私は鍛え上げられた王子の肉体美を見ていたの。トサ王子は黒い下着だけの私に見とれているわ。
「一夜を共にしたからここにいるのよ。昨日はお楽しみだったのに、もう忘れるなんて最低よ王子様」
「酒の飲み過ぎで記憶が飛んでるぜ……。でも俺はアヤカを抱いた記憶は無い。絶対に無いぜ! たぶんな!」
「下の王子様は嘘をつかないわ」
と、私は王子様の素直な気持ちを教えてあげたの。下を見るトサ王子は自分が全裸という事に気付いた。
「? 俺、全裸かよ!? なら……マジで俺はお前で童貞を……?」
「さぁ、どーでしょうねぇ?」
あたふたしてる王子は中々かわいい所もあって面白いわ。
そうして、私とトサ王子との関係の噂は広まったわ。




