零幕〜プロローグ〜
「覚悟は……できているのかしら?」
大きな木造の机越しに、ソファへ座るセミリアが、顔を少しばかり紅潮させて、体をモジモジとくねらせながら、ボソボソとした声で言った。
ここは、城の一室―応接室のようなところだ。
彼女と出会って早一年、二年生の始業式前日となって、俺はセミリアから呼ばれてこの部屋まで来ていた。
座らせれて、まさかの第一声がこれであった。
覚悟―。
「は? 覚悟ってどういうこと?」
「……それはもちろん、入れる覚悟よ」
「何を!?」
「……………だから……」
唐突すぎる物言いだし、全く意味がわからなかった俺は、額に汗をしたらせながら次の一言を待つしかなかった。
「……戸籍よ」
「はぁ……?」
「戸籍を入れる―つまり、この私と婚姻届を書いて、役所に提出する覚悟は―心構えはできているのかしらと、聞いているのよ」
俺はそこまで聞いて、ようやくセミリアの言わんとしていることが理解できた。
いや、完全に理解できたわけじゃない。
意味だけはわかった―が、意図がわからない。
「一応、確認なんだけれど……」
俺は茶化すように笑って、目を逸らす。
「俺たちって高校生だよね……」
「ええ」
「さらにいうなら高校一年生―だよねぇ!?」
「そうね、それであってるわ」
「いや、だから……高校生の場合……」
「……何が言いたいの?」
セミリアは首を傾げる。
さっきまでのモジモジとした態度がまるで嘘のようだった。感情がコロコロ変わるので、表情を堪能しずらいのである。
俺は思わずため息をついた。
「高校一年生どうしって、あのさ、基本的に結婚できないんだよね……というか、割と全世界共通でそうなんじゃないの?」
「…………………そうだったわね」
セミリアはハッとして、固まった。
「え?」
もしかして忘れていたのか!?
もしかしなくても忘れていたのか!?
いや、忘れていたことは対して重要じゃないな!
それより……それより……!
「高校生相手に結婚申し込んでんじゃないよ!!」
さて。
ここから描かれるのは、俺がセミリアと出会って、時間が流れ―最終的にこの日が来るまでの、短くも長い話になるのだろうと思う。
一年前の話から始めるとしようか。




