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三国志の関興に転生してしまった  作者: タツノスケ
第二部・許都青雲編
27/271

24.甘寧、関興に登用しろと脅迫する

前回のあらすじ。

河賊をやってたイケメン筋肉ダルマの甘寧が、仕官させろと押しかけて来た。


「あのう、つかぬことを伺いますが、甘寧殿は孫呉に仕官しようとは思わないんですか?」


とオレは聞いてみる。甘寧は眉毛をピクリと動かし、


「おいチビ。おまえ、俺に死んで来いと喧嘩売ってんのか?」


いえ、滅相もない!ただ史実では、何故か甘寧は孫呉に行っちゃったから。


「俺は昔、孫呉の凌操を弓で射殺してるんだよ。あいつの息子が孫呉に仕えて俺を親のかたきと狙っている。そんな所におめおめと行けるか!」


そうなんだよなあ。いくら黄祖が憎いとはいえ、常識的には甘寧が凌統のいる孫呉を亡命先に選択するわけがない。そこには、周瑜や呂蒙などの有力武将の調略があったはずなんだ。


ああ、そうか!

オレが荊州と孫呉を裏で繋いでいた襄陽の大店おおだなを潰したせいで、調略で使う伝手ツテの糸が切れてしまったんだ。それでこの世界の甘寧は仕方なく、同じ荊州軍でマトモな関羽の所に仕官を考えたわけだな。

やるじゃん、オレ!


「しかしですな、唐県は穏やかな住民の多い所です。あなたのような悪党を、県令の関羽殿が果たして招き入れるかどうか……」


出た、頭の固い潘濬め!

あんたの言ってることは正論だぞ。ただ、時と場合によるだろ。今は絶対強者の甘寧に剣を突き付けられているんだ。身の安全を第一に考えろ!


しかも甘寧の江夏での活躍は、荊州中に知られた事実だ。多少の素行の悪さに目をつぶったって、仕官させるにあたりオレたちに不利となる要素はない。


「そこを曲げて仕官させろと言っておるのだ!」


「黙りなさい!あなたは関県令殿のご子息に向かって、剣を突き付けチビと暴言を吐く。このような無礼は決して許されることではない!」


いや、すごいわ。潘濬。


「は?このチビが?……い、いや、このかわいらしい坊やが関羽殿のご子息?」


甘寧の丁寧バロメーターによれば、坊や>チビなのね。オレは“かわいらしい坊や”と呼ばれる方が馬鹿にされた気がするのだが。


「甘寧殿、言葉遣いはべつに気にしなくてもいい。潘濬殿もほどほどに……」


「いいえ。私が婉曲に断ろうとしているのに、事態の深刻さを分かっておられぬのは興坊ちゃま、あなたです!」


「えっ、オレ?」


「そうです。この潘濬、ハッキリ申し上げましょう!

甘寧殿を仕官させるとなれば、配下の者200名も唐県が召し抱える必要があります。その費用はいくら掛かると思いますか?」


「さあ。1人100銭×200人で、二万銭くらい?」


「興坊ちゃまはこう申していますが、甘寧殿は二万銭で満足ですか?」


「んーまあ、部下の衣食住を保証してくれた上で、船団の維持費用を考えれば、十倍の二十万銭は欲しいなあ」


うわー思ったより高いなあ。でもそれって船の維持修理費用込みの値段だよね。


「お分かりですか、興坊ちゃま。甘寧殿は二十万銭を要求しているのに対し、劉表殿が与える我が唐県の年予算は、先ほど私が申したとおり三十万銭です。そんな大金はどこから捻出するのですか?」


「あー俺たちが裏でこっそり河賊として稼ぐことを認めてくれりゃ、半分の十万銭でなんとかやって行くぞ」


現実的な金の問題を持ち出されて断られそうなことに気づいた甘寧は、慌てて妥協案を提示する。だが甘寧軍団が河賊になって、曹操領(隣接する田豫の朗陵県)を襲撃してしまったら、そっちの方が都合が悪い。


「お言葉ですが、潘濬殿。唐県の年予算三十万銭は、潘濬殿が民生でお使いになる費用とし、軍事費については、すべて屯田で得られた余剰兵糧米の売却費でまかなうことにすれば、潘濬殿の批判は当たりません。

楼船の修理費用十万銭と、甘寧殿の仕官・船団の維持費二十万銭については、オレが責任を持って父上に掛け合います。

そういう整理でいかがですか?潘濬殿、甘寧殿」


とオレは提案した。


「お、おう……おいチビ、おまえすげぇな」


「まあ、兵糧米の管理は私には関係ありませんから、興坊ちゃまのお好きになさいませ」


甘寧は呆気にとられ、潘濬はやれやれと溜息をつくのであった。



甘寧を連れて唐県に戻ったオレは、翌日、関羽のおっさんに事情を説明した。関羽は甘寧の腕を確かめるため一騎討ちの模擬試合を行ない、「甘寧殿の武芸は趙雲に勝るぞ」とその類い稀なる実力をすぐに認めた。

そして甘寧と配下の兵二百を新たに雇うことに同意した。


「今後は水軍も整備していかなければならないと思っていたところだ。近隣から希望者を募るとともに、唐県の住民から徴発を行なう。甘寧殿には船団を3部隊ほど養成してもらいたい」


「はっ。お任せあれ!」


甘寧は承諾した。そして二人の模擬試合を観戦していたオレの方を振り返り、


「チビ、ありがとなっ!」


と爽やかな笑顔を見せた。ケッ、筋肉ダルマが。


◇◆◇◆◇


甘寧の水軍調練は順調だ。

午前中は槍や弩の練習,午後は鬼捕子(おにごっこ)と筋トレ・ランニングのようなユル~い屯田兵の訓練とは違って、スパルタ式に水泳・ダッシュ・船の櫓漕ぎと格闘術を一日中繰り返し訓練している。うへぇ、地獄だ。

ところが、日焼けしたマッチョな水軍兵に憧れる若者が体験入隊(?)し、男臭い甘寧の熱血指導に魅惑され、本格入隊する者が続出した。その数いまや千人。


それはいいんだが、問題がある。

唐県の男たちが、何故かすぐに脱ぎたがるようになったのだ!

これは無駄にイケメンの筋肉ダルマ・甘寧が、自慢のシックスパックを見せつけるように上半身裸で街をウロウロするせいだ。ナルシストめっ。


で、当の甘寧なんだが、街でオレの姿を見かけるたびに茶々を入れて来る。

正直ウザい。


ところがある日、オレは重大なことに気がついた。

いつもオレに茶々を入れるのは、決してオレに構われたいわけではなく、オレの隣にいる美少年の関平兄ちゃんとお知り合いになるキッカケが欲しいからなのだ!

それが証拠に、甘寧の野郎、関平兄ちゃんと目が合うたびに頬を赤らめる。


……ってキモいぞ、甘寧!おまえは乙女か?!


困ったことに、関平兄ちゃんも「甘寧さんってカッコいいよね~」みたいに満更でもなさそうなのだ!甘寧と関平君がお尻愛だなんて、これは由由しき事態だぜ。

ダメだ。美少年の関平君は、前世24歳で死んだ俺が転生した時から唾つけてるんだ!(←オレも十分キモいな!)

いや違う、オレは関平君の弟なのだ!いつまでも愛らしい少年の心を持ったまま、健全に成長して欲しいだけだ。

決して筋肉ダルマの悪党・甘寧なんかにけがされるわけにはいかん!


そこで俺は考えた。関平君にかわいい婚約者ができればいいんじゃないか?

例えば……そうだ、張遼の娘なんかどうかな?


「は?俺の娘と婚約したいだと?!許さん、そこに直れエロガキめっ!」


うーむ。最愛の娘をよその男に盗られるのは我慢ならないようだ。というか、相手はオレじゃなくて美少年の関平君なんだけどな。

じゃあ、田豫の所はどうだろう?


「歓迎したいんだけど、僕の子供は二人とも男なんだよねー」


くそ、ダメか。

すると、オレが婚約者募集中という間違った噂を聞きつけた曹操が、「わしの娘をやるぞ」とふみを寄越して来やがった!

無理に決まってるだろう!オレ、ひょっとしたら閣下あんたの子かもしれないんだぜ。


「アレぇ?興はわしの子だと、やっと認める気になったのか?」


ニヤニヤしながら曹操が筆を取っている様子が目に浮かぶ。


「もう遅いぞ!おまえが来春の計吏報告で都に上がった際に、わしの一族の娘とお見合いさせるからなっ」


……調子に乗って考えなしに動けば凶。オレの【雷天大壮(らいてんたいそう)】の卦が示すとおりだった。あーあ、失敗した。


次回。甘寧率いる水軍を養う金は、どこから捻出するか?関興は悪知恵を働かせ贋金作りを思いついたが、女神様にバレてしまって天罰を下される!お楽しみに!

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