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三国志の関興に転生してしまった  作者: タツノスケ
第一部・関興転生編
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[番外編]ブラック関羽、劉備へ殺意を抱く

俺が頭を抱えていると、どうしたわけか騎兵の中から上機嫌の曹操閣下が現れて、


「わははっ!参った、参った。降参じゃ」


俺は下馬してさっとひざまずく。

ふと気づくと、興が立ったまま曹操閣下を睨んでいた。興、不敬だぞ。慌てて俺は興を正座させ、お辞儀するようてのひらで頭を押さえつけた。


「よいよい。久しいのう、関羽」


と曹操閣下が言葉を掛けてくれる。本物だ。ここは心証が大事な場面。


「はっ。ご無沙汰しております、曹操閣下」


「田豫が言っておった面白い子供とは、この子だな?」


「はっ。そのとおりでございます」


「ふうむ。弱兵と見せて、己の有利な場所に敵を誘い込み、伏兵をもってこれを討つ。虚から実を生み出す見事な作戦よ。

だが詰めが甘い。崖の上の兵は偽装フェイクじゃな」


曹操がにやりと笑う。

そんな馬鹿な!興は、兵法の天才と言われるあの曹操閣下をあざむくことに成功したというのか?


「曹操閣下。崖上の兵が偽装フェイクとは……」


「簡単じゃ。わしの斥候に調べさせて、軍旗を掲げる趙雲も陳到も、劉備と一緒に新野の城に立て籠もっとる。あの崖の上におるはずがない。となれば、奴らが率いる伏兵もあそこにおるはずがない」


なるほど。しかし興も俺も疑問に思い、


「……それが分かっていながら、閣下はどうして降参したのですか?」


その質問に閣下はあっさりと答え、


「わしはもともと、今、荊州を攻める意志はないからの。

ここまで軍を進めたのは、袁譚と袁尚の仲を再び裂くための釣り餌じゃ。こたびの戦に負けて撤退したと噂が流れても、わしはべつに痛くもかゆくもない。むしろ、袁譚と袁尚を油断させるには好都合じゃ」


はあ、そういうものですか。


「それにしても、閣下は後詰で西平に駐屯中と聞き及んでおりましたが、先鋒の騎兵の中に潜んでこちらにお越しとは、いったいどういう事情でしょうか?」


「面白い子がいると田豫に聞いたからには、ぜひ会いに行かねばのう」


なに?!俺は焦った。

まさか曹操閣下は俺よりも興に興味がある?バレたか?

興と俺の対照的な反応に気を良くした曹操閣下はニヤリと笑って、


「……というのは冗談で、劉表と劉備に釘を刺しておこうと思ってな。

わしは虚から実を生み出してやろうと思い、本当に荊州に侵攻して、奴らがいかに頼りにならぬエセ君子であるかをあばき出してやったのじゃ。

これでわしが華北に遠征し許昌を留守にしても、奴らは疑心暗鬼になって一歩も動けまい」


さすが曹操閣下、やることにソツがない。

そんなことより、俺はさっさと売国交渉を進めたいのだが……


「あのう。劉備将軍が曹操閣下のスパイという噂は、事実なのですか?」


また興が邪魔をした。コラッ。興のバカげた質問に曹操はフンと鼻で笑って、


「馬鹿馬鹿しい。スパイは主君との間に強固な信頼関係がなければ務まらぬ。あの兎野郎が信用できる人間か?断じて否!

あいつこそ本物の姦雄よ!陶謙・呂布・わし・袁紹そして劉表……群雄の間を渡り歩くたびに乗っ取りを企んで来た、奴の履歴を見れば一目瞭然だろうが」


「ですが、オレは劉備将軍から自慢話を聞かされたことがあります。

将軍が曹操閣下の元で雌伏していたある日、閣下から『この乱世、天下に英雄が二人おる。それは劉備将軍とわしじゃ』と評価された、と」


へえ、俺は初耳だ。興のヤツいつの間に?

というか、劉備将軍って超ポジティブの痛いヤツだな。鈍感な俺でもお世辞と分かるぞ。

曹操閣下は苦笑いして、


「少しおだててやっただけで、それを真に受けるとは……度しがたい男だな。

だが、あの兎野郎の乗っ取り癖は利用価値があるのじゃぞ。

兎野郎をわしの敵対勢力に送り込めば、自動的に乗っ取り機能が発動して、敵は内部から攪乱される。獅子身中の虫というやつじゃ」


すると興は合点がいったように、


「なるほど。ある意味、劉備将軍は曹操閣下のスパイなのですね。内に潜む無能な味方(劉備)外敵(曹操閣下)よりも恐い、という」


「ん?ああそうか、そういう解釈も可能だな。こりゃ面白い。わっはっは!」


曹操閣下は愉快そうに大笑いし、張遼の方に顔を向けて、


「張遼。関羽を寝返らせる作戦は変更じゃ!

劉備はまだまだ生かしておいた方が得なようだからな。

劉表・孫権・劉璋……あの兎野郎の乗っ取り癖を利用して、わしが喰らい尽くしてやろうではないか!」


えええっ!?曹操閣下、そんなご無体な……


「関羽よ、おまえは劉備のそばに付いておれ。あの兎野郎に搭載された自動乗っ取り機能が発動するのを、ただ黙って見守っておればよい。

内部攪乱を恐れた敵勢力に、兎野郎が殺されるのを防ぐのがおまえの役目じゃ!

荊州乗っ取りが失敗すれば、次にあいつは必ず孫権の元に逃れようとする。おまえも付いて行け!」


「しかし……」


劉備将軍に愛想が尽きた俺は、もう一緒に行動するのがイヤなのだ。


「わしを捨てて劉備に乗換えた罰じゃ。おまえが犯した愚かな過ちは償ってもらうぞ。だが案ずるでない。わしが天下統一を果たした暁には、おまえの功績はきちんと彰してやる。そうじゃの、征南将軍の号と荊州の刺史をくれてやろう」


征南将軍!?荊州刺史!?

俺の望み以上の褒美キターーーーーーッ!!


「……分かりました。ありがたき幸せ」


そういうことなら俺様、契約書に印鑑押しちゃうよッ☆

ねぇ曹操閣下、早くぅ。早く劉備将軍を殺して天下統一しちゃって下さいよォ♪


と切に願うブラックな俺だった。


以上、“ブラック関羽”の番外編でした。

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